第12話 決着
ロキの膝下まで砂に埋まる。これで移動は出来ない。
さらに石弾が10発が襲いかかる。
(油断した。魔力切れのフリをしていた?一体どうなってる?ルーベンの魔力量は予想より多いのか?いや今はそんなことはどうでもいい。目の前のことに集中しろ。)
この時ロキは足が膝下まで砂に埋まっていても、10発の石弾をひとつもくらうことなく、斬り伏せることに成功する。
しかし足元が不安定な為、剣速は遅くなりギリギリであったのだが、つまりそれは。
(よし見える。今まで追えなかった父上の剣が見える。チャンスは一度……次にこっちを…そしたら……今だ!!)
「闇纏!!」
「ここだぁ〜」
(よし。剣は石弾を斬り伏せた後、足場も悪い。この攻撃は避けられません!!僕の勝ちです。)
「身体強化……。」
父ロキが言葉を発した。
カンッ!!
「えっ??」
拳が横っ腹に当たると思った瞬間、剣の腹で拳が塞がれていた。
「ルーベン見事だった。油断をしていた。それに身体強化を使わされた…誇っていいぞ。だがもう油断はしない勝負は私の勝ちだ。」
「…………父上。」
コンッ!!
ロキの頭に小さな石ころが当たる。
「僕の勝ちです。えっへん。」
え〜〜〜〜〜。
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「やったぁ〜父上に一撃入れられた。僕の勝ちですよね?ね?」
体全体で喜びを表すルーベン。
そして母アンネも声を上げる。
「凄いわぁ!ルーベンったらパパに勝つなんて。キャァー。」
「いや。待ってくれ。まだ……」
「一撃入れましたよ。隙を見て上に石を投げたんです。投石も立派な攻撃ですよね?」
「そうよ。そうよ。ルーベンったら凄いわぁ。」
「アンネ。分かってるのかルーベンの勝ちなら戦場に連れて行く事に……でもあれだけの魔法使用。魔力も残ってないだろうし…。」
「父上!!母上!!」
ルーベンが真剣な眼差しで2人を見つめる。
(この2人には話しても大丈夫さ。変わらないでいてくれる。)
「そう。なにか話したいことがあるのね。話して頂戴。」
母アンネも何かを察して表情が変わる。
「実は、今まで隠していたことがあって…僕の魔力量のことです。」
「それはおかしいと思った。確か勝負する前も魔法の訓練もしていたんだよな。ルーベンの魔力量は100のはずだろ。いくら上手く魔法を発動していたとしても、ありえない。」
「僕の魔力量は100じゃありません。」
「そうか。それなら納得だが、いくつなんだ?」
「5ま……ん」
「ん?」「へ?」
「5万。」
「は?」「ご?」
驚きの数字で声も出ない。
「だから僕の魔力量は、5万です。」
「5万?いや、ちょっとまて…でもなんで分かるんだ。」
それから2人には転生の事と神の能力の事は伏せて、魔力量の事だけ説明した。
なぜ魔力量が分かったのかは、ある日、神様の啓示があったと言い訳をしておいた。
「ルーベンったら神様とお話をしたのねぇ。やっぱり凄いわ。ねぇあなた。」
「おう。ウソをついているとも思わないし……ルーベン。この事を知っている者は?」
「いません。父上と母上だけです。」
「いいか。ルーベン。この事は誰にも言うな。どの道、その膨大な魔力量は測れないんだから、言わなきゃ知られることもない。」
「はい。そのつもりです。」
「では、ルーベンはその膨大な魔力量があるからエナ村に行くと言ったんだな。」
「はい。エナ村の防衛設備がどれほどか分かりませんが、父上が急ぎでしたので、そこまでの防衛力がないと判断し僕の土魔法があれば村の防衛力を上げられるかと。」
「土壁!!」
ゴゴゴゴッ!!
ルーベンが魔法を使用する。
地面から土の壁が出来上がる。
「あらまぁ〜」
「土壁まで……」
「はい。魔力量を込めれば高さや厚さも調整可能です。村の周りに土壁、それに砂地•罠も外側に設置すれば魔物の動きも遅らせられるかと。」
「はぁ〜そこまで考えがあるとはな。確かにここまでだと話しが変わるな。でも……」
「父上!母上!お願いします。連れて行って下さい。」
少しの沈黙。
それを破いたのは母アンネ。
「ルーベン。」
「はい。母上。」
「確かに…その力があれば村を救える可能性が上がるのは私にも分かるわ。でもルーベン。あなたはまだ子供よ。エナ村に行かなくても責めはしないわ。」
「それじゃダメなんです。自分が許せません。救えたかもしれない命があったのに行かなかったらきっとこれから後悔します。」
「どうしてそこまで?」
「神様に誓ったんです。困ってる人がいたら救える人になるって。父上みたいになりたいって。」
「そう……神様にね…。あなた!!」
「ん?」
「なにニヤニヤしてるの。これから魔物と戦うのよ。」
「あぁ。でもつい嬉しくてな。」
「もう分かったわ。ルーベンは勝負に勝った。そしてその力を示した。でもひとつだけ約束して。」
「はい。」
「自分の命を優先にすること。これが守れないなら許可出来ません。」
「はい。必ず守ります。」
「よろしい。」
「おい。勝手に決めるな……」
「あなた?」
「は……い。」
「あなたにもです。あなたの場合はルーベンちゃんが1番優先です。勝負に負けたのだから男らしくしなさい。」
「はい。分かりました。」
(やっぱり1番強いのは母上なんだよなぁ)
「決まりだな。ルーベン。時間がない。急ぎ準備を整えて西門に向かうぞ。」
「はい。」
(ルーベンは優しい子。心配させないように話せないことがまだあるかもしれない。でも……どうかフロムの神、アナ様……我が子に、ご加護がありますよう。)
その頃、神界では
「ハックチュン!ズービー!!誰かが私の噂をしているわ⭐︎」
「まったくアナ様ったら。お腹出しながら寝るからですよ。あと少しで仕事もひと段落しますから、頑張りましょうね。」
「そうか。やっとじゃ。やっと解放される。終わったら何しようか……⭐︎」
(そういえば、ルーベンはどうしてるだろうか……)
仕事を頑張るアナ様であった。