第11話 親子対決
〜騎士団訓練場〜
ロキとルーベンは向かい合っていた。
アンネは心配そうに2人を見守る。
「いいかルーベン。訓練用の木剣じゃなく真剣を使う。それにルーベンは剣を使わなくていいのか?辞めるなら今だぞ?」
「はい。まだ重いし扱えませんから。今の僕には邪魔になるだけです。」
「本気なんだな?」
「はい。」
「分かった。それなら約束通り一撃でも当てたら連れて行こう。では、かかってこい。」
「では。お願いします。父上。」
こうしてゆっくりと決闘が始まった。
もちろん、最初に動いたのはルーベン、まずロキから距離を置く為、走り出す。
(パワーもスピードも父上のが遥かに上、接近戦になったら負けは確実。勝機は魔法の攻撃のみ、今の自分の手札は、神の目•土魔法と闇魔法。闇魔法の闇纏は、まだ戦闘に使うには不十分。それなら土魔法一択。)
(神の目発動!!さらに)
「石弾×5」
手を相手に向けて5発の石弾を放つ。
(な?石弾を1度に5発も!威力も…うん。申し分ないな!流石ルーベン。ここまでの力を……少し本気を出すか。)
「ハッ!!」
スバ、ズバッと簡単に石弾を切り裂いていく。
「どうした?ルーベン。そんな攻撃じゃかすりもしないぞ。あれだけ大口を叩いたんだ。まさかこれで終わりじゃないだろうな。」
「当たり前です。」
(やはりまだ神の目を使用しても父上の剣速は、すべては見えない。でも初動や体の使い方を良く見て相手の嫌なところへ石弾を撃ち込むことは出来る)
「石弾×10」
「なに?だが。まだ甘い。」
(10発とは、魔法の連続発動は難しい技術なのだが。これからの成長が楽しみだよ。しかもただ撃ち込むだけじゃなく嫌な所をついてくる。末恐ろしい子だ。だが、父として負けてられん。)
ズバッズババ。
(石弾なら10発だろうが100発だろうが父上は斬り伏せるだろう。そんな事は初めから分かっていた。)
(まず父の狙いは予想出来る。『魔力切れ』だ。自ら攻撃してこないのがその証拠。父上は僕の魔力量は100だと認識しているはず。あれだけ一撃攻撃を当てろ!と煽っていたのには理由がある。父は僕の剣の腕を知っているから、何回やろうが当たることはない。これは共通の認識…それなら魔法の攻撃しかなくなる。相手を煽り攻撃をしかけさせ魔力切れを起こさせる。これなら魔力切れも起こせるし、例え攻撃が当たったとしても、魔力が僅かで魔法しかない僕は、どの道…戦力外。まぁ父上はどんな攻撃だろうと、ひとつも当たるとも思っていないし、それに元々戦場なんかに連れて行く気なんてないだろうけど。だからそこに付け入る隙がある。)
ズバッ!キンッ!!
『ルーベンなかなかの威力だ。正直ここまで出来るとは思ってなかった。』
(これで石弾は合計で15発。このような初級の魔法は小回りも効くし使い勝手がいい。魔法の威力や使用者の技量にも左右されるが、1発で魔力を5〜10ほど使用したとみていい。これで残りは撃てても数発程度。)
『くっ!石弾×5』
ズバッズババ!!
(これで終わりか……)
「はぁはぁはぁ。」
父が近づいてくる。
(演技を怠るな……来い。こっちへ。あと3歩……)
「ルーベン。」
(あと2歩…あと1歩…)
「今だ!砂地•罠!!」
(よし。ここが勝機。ここで畳み掛ける)
突然ロキの立つ地面およそ2メートル範囲が砂地へと変化する。砂地•罠はその名の通り効果範囲を砂地に変えることが出来る魔法。砂はある程度なら自在に動かすことも出来る。石弾を使用している時に設置した魔法だった。
「な?これは…」
油断。砂地へ変化して一瞬で膝下まで砂に埋まる。
「石弾×10!!」
(父上のことだ。いくら砂を操作しても。すぐに脱出するだろう。だから攻撃を続けろ。そして今まで魔法攻撃しかしなかったのはこの時の為。)
「闇纏!!」
拳に闇を纏う。ここしかない。
「ここだぁー!!」
ルーベンの小さな拳がロキへと向かう。