第10話 決意
〜アートルド宅〜
ルーベンはいつものように庭で魔法の訓練をしていた。
すると父ロキが帰ってきた。
「あ!父上!今日は早いお帰りなん………何かありましたか?」
「ルーベン!まずは部屋に!」
そう…いつもの雰囲気とは違う。
何事かと思いルーベンも急ぎ部屋に入る。
母アンネとルーベンは説明を受けた。
大量の魔物がエナ村を襲っていること。
父ロキが騎士団と救援に向かうこと。
あと1時間後に西の門から出陣するそうだ。
「あなた…大丈夫なの?心配よ。」
「心配するな。俺は強い。アンネも知っているだろ?それにアンネと子供達を残して死ぬもんか。」
「必ず、必ず。生きて帰ること。いい?」
「あぁ。もちろんだ。」
ルーベンは2人きりにしてあげるべく、外に出た。
色んな感情が胸を支配していた。
(父上は強い。きっと大丈夫だ。でももしもの事があったら…)
(確かエナ村は、あの女の子がいる村だよな。エナ村の人達も無事だろうか。)
(僕はここで待ってるだけでいいのだろうか。神様の魔法を使えば多くの人を助けられるのに。)
よし!!答えなんて決まっている。ルーベンは立ち上がる!!
ドンッ!!
「「父上!僕もエナ村防衛に連れて行って下さい。」」
「なっ?」「えっ?」
驚く父ロキと母アンネ。
「無理に決まっているだろ。何を言っているんだ。」
当たり前のように父ロキが反対する。
「いいえ。僕は行きます。みんなの力になれます。」
「ルーベン!思いあがるな!いいか遊びじゃないんだぞ。」
鬼気迫る表情を浮かべている。
「そうよ。ルーベンは確かに他の子よりも出来る子だと思うわ。でもあなたが行って何が出来るっていうの。その気持ちだけで十分よ。」
母アンネも続くが。
「僕は冗談なんか言いません。父上!母上!僕は助けられる命を見捨てることは出来ません。神様に誓ったんです。」
ルーベンは迷いのないまっすぐな目で2人を見据える。
沈黙が流れた。
それを破ったのは父ロキ。
「なかなか、いい目をするようになったな。ルーベン。」
「では、ついて行っても?」
「外に出ろ。ルーベン!!」
「?」
「その思い上がった心を正してやる。確かに他の子よりも出来るのは認めるが……。剣を持て。いいか私に一撃でも入れられたら戦力として連れて行こう。無理ならおとなしく待っていろ。」
(そりゃそうなるよな。少し魔法が出来る5歳の子供にしか見えないしな。でもこれはチャンスだ。)
「チャンスを頂きありがとうございます。父上。でも僕からもひとつだけ。僕は魔法のが得意です。家の庭だとせまいので騎士団の訓練場でお願いします。」
「……いいだろう。時間もない。いますぐ準備しろ。」
「はい。」
こうして父との試合が決まったのであった。