第98話 魔物種子
ブルーナは1人孤児院を目指す。隠蔽を使い、存在を消して闇に溶け込んだ。
あっという間に、孤児院に到着し気配を探る。
(昼にあった女性と…………もう1人。中にいるのは2人だけか。)
他に誰もいない事を確認したブルーナは手に持っていた短剣に魔力を流し形状を針の様なものに変えて、孤児院の裏口の鍵を開ける。
ガチャガチャ。カチャッ。
ものの数秒で鍵を開けて簡単に侵入する。
(あそこの部屋に、2人寝ているな。)
そこで見たものは、女性と1人の子供。
(なぜ、あの子供だけが残っているのかは分からないが、まずは孤児院の管理する部屋で情報を集めねば。)
別の部屋に入り調べていると孤児院には子供達が20人程いた事が分かった。それ以外の情報は見当たらない。
しかしある日記に目を通す。
最近の内容は全部同じ内容。
子供達が帰って来ない事。心配している事。
そんな内容が書かれていた。2週間前までは…。
昼過ぎ
魔都ディーンライトから軍の方達が孤児院に来た。
子供達一人一人に水晶を使って鑑定をしたと思ったら、1人だけを残して皆んな魔都へ連れて行ってしまう。私は何の為に連れて行くのか軍の方達に聞いたが答えてくれなかった。でも…すぐ戻ってくると言われたので、残った子と一緒に信じて待つ事にする。
あと軍の方に聞かれた事がある。2年程前に国民に渡した種を孤児院の子供は食べたのか…と。
そういえは、そんな事もあったなと思ったが、2年前にこの孤児院にいた子なら食べさせたと伝えた。
確か…あの種は、流行り病を防止する種だと魔王様が全国民に配ったのだ。あれには感動した記憶がある。
でも何故そんな事を聞いたのか…分からない。
無事に帰ってくる事を願う。
(種…。まさか魔物種子か!?しかも国民全員に……これはまずいな。これ以上の情報は無さそうだし、ひとまず戻って考えるとするか。)
こうしてブルーナは孤児院を後にした。
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朝。
「「「なっ!!!!」」」
「国民全員ですか!?それは…流石に考えていませんでした。多くても軍の者全員だと思ってましたから。」
そう。ブルーナが皆んなに昨夜の事を説明したのだ。
「実際に魔物化したのを見たのはルーベンだけだからな。それに水王ウィリアム様に言われていただろ?種の実物を持ってくれば対応出来るかもしれないと。私達が求めていた証拠にもなるしな……優先して魔物種子の確保に切り替えたいのだが……。」
「十中八九、魔族の体内に残っているでしょうね。どこにあるのかは分かりませんが。」
「そうなんだ。無闇矢鱈に襲って種を回収するのは簡単だが…そんな事は出来ないからな。体内を調べさせてくれとも言えないし。」
「正直に「魔物化する種です。」と言っても信じて貰えませんからね。日記に書いてある通りなら、病の予防として配られたみたいですし、何より時間が経ちすぎている。食べなかった人も一定数はいるでしょうが、残ってはいないでしょうね。」
それから皆んなで考えたが、良い案など思い浮かばない。この町の人達は皆良い人だし、悪い魔族がいれば問題ないのだけれど。
「とりあえず、もう少し情報を集めるしかなさそうだな。すこし危険だが、今日はバイロン町の領主邸に潜入するか…魔物種子について何か分かるかもしれない。」
「それなら今日の夜は僕もついていきます。準備していた…ツノが生えてる様に見えるフードを被れば、領主に奴隷紋を施しても人族だとバレませんよ。」
「そうだな。今日の夜はそれでいこう。昼間は昨日と同じで町に出て情報を集めるとするか。」
「はい。」
2日目。
ルーベン達は半年前まで魔都ディーンライトで働いていたと言う人物に出会った。軍の関係者ではないので魔物種子については知らないだろうから、魔王ディノンについて聞いてみた。
「魔王様は優しいお方だよ。第1に私達魔族の事を思っておいでだ。でも仕事が忙しいのか国民の前に姿を現すのが、めっきり減ってしまって、私はそれが心配だよ。最後に見たのは1年ほど前かな。その時は隣に子供を連れていたから、魔王様の子がいたのかと魔都中で騒ぎになってね。」
「色々教えてくれて、ありがとうございます。」
急いでその場を後にする。
「ノア!!」
「あぁ。時期も一致する…弟が攫われた時期と。」
「やはり生きていたな。そして予想通り魔王と行動を共にしている。いま弟ニアは魔都ディーンライトに。」
「ルーベン。僕は…すぐに助けに行きたい。でも…無理なのは分かってる。だから今はやれる事をやろう。」
「そうだな。まずは魔物種子の件だ。僕達に任せてくれ、ブルーナさんもいる。領主に弟ニアの事も聞いてくるさ。」
そして夜を迎える。
「気をつけてね。」
「ルーベン頼んだ。」
「ああ。必ず情報を掴んでみせるさ。」
「ルーベン。隠蔽をかけるぞ。自身のスキルや魔法を使うと強制的に隠蔽の効果が切れるからな。そこだけは注意しろよ。」
「はい。」
そこから2人は闇に溶け込む。
領主邸まで誰にも気付かれる事なく。




