第97話 バイロン町
「おっ!さっそく私の命令を破ったみたいだぞ。」
そう言ったのはブルーナさん。奴隷紋をかけた相手の行動で命令を破った場合は分かるみたいだ。
「凄いですよね。奴隷紋の能力。命令を出して結果的に相手を操れますし、それに紋を施せば効果範囲も無限では?」
「いや…私はそこまで強い能力だと思っていない。相手の情報が必要だし、操作系の能力では確かに効果範囲は広いが、逃げ道もあるしな。」
どうやらノアは分かっているみたいだな。
「そうですね。死のうと思えば自分で死ねます。例えば情報を吐けと命令しても、自身の命を代償に答えない事が出来る訳ですから。」
「まぁ。細かな詳細を知りたいのなら第5王国騎士に入隊すれば教えてやるぞ。ハハハッ。」
「知りたいですけど。それなら大丈夫です。ふふふ。」
(今回の作戦、僕の鑑定と合わせて、ほぼ確実に奴隷紋を発動出来る。それを使ってどこまで情報を集められるかが鍵となるな。)
それから街道整備に復帰したルーベン達。
半分の整備を終わらせて、ガンダリアン魔国領のバイロン町へと向かうのであった。
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〜バイロン町〜
100年前に戦争が終わり、交易を行う町として80年程前に作られた町。今では1000人程の魔族が住んでいる。
魔族の中でも人族に対して良好的な者が多いと聞く。
「情報はこれぐらいだな。後は入ってみないと分からん。とりあえずは宿を探そう。話はそれからだ。」
今はバイロン町が見える位置まで来ている。
見た感じは人族の暮らす町と変わりはない。街道整備の書類を警備の人に見せて僕達、合計10名が魔族の町『バイロン町』に足を踏み入れた。
思っていたより賑やかな町。
見渡せば魔族がいる。額にはツノが生え、それ以外は人族と大差がない。向こうも人に慣れているのか変な目で見られる事もなく、何事もなく宿屋に着いた。
『いらっしゃい。人族の方だね。』
「ああ。10名で、とりあえず10日程泊まりたい。お願い出来るか?」
『いいよ。バイロン町は初めてだろ?見れば分かるさ。落ち着きがないからね。そんな警戒して別に取って食いはしないよ。この町の皆んなは優しいから安心しな。ハハハッ。』
それから部屋を取り、ブルーナさんの部屋に集まる。
「まずは情報収集だな。今日は全員でバイロン町を回ろう。怪しい者がいたら報告してくれ。」
そう言って、まずはバイロン町を出歩く事に。
嫌悪感もなく、普通に挨拶してくる魔族の人達。
「私達が考えすぎなのかもしれないな。」
「うーん。なんか拍子抜けしちゃった。」
「この町だからかも。」
各々が感想を述べる中ノアだけが黙り込んでいる。
「ノア。魔族を恨んでいるのか?」
ルーベンはノアに聞いた。家族を殺されて、弟を攫われたのが魔族。だから魔族そのものを恨んでいるのかも知れないと思ったからだ。
「ここに来るまでは魔族に対して恨みも少しあったかもしれない。でも色々見て感じて、それは違うと分かった。魔族
も人族も変わらない…恨むのはアイツだけだ。」
「そうだな。ごめんな…ちょっと気になって。」
「いいんだよ。それよりも町を見よう。もっと見てみたい。」
そして大通りを抜け、バイロン町の端に孤児院が建っていた。子供達なら気軽に話しかけても問題なさそうだ。
しかし入り口に孤児院の関係者らしき女性の魔族が立っていた。
「人族?なぜ、この孤児院に?」
「驚かせるつもりはない。ただ子供達と町を見回っていただけでな。初めてなもので分からず。良ければこの子達と孤児院の子供と交流させて貰えないだろうか。」
しかし魔族の方は、首を振る。
「申し訳ありません。お帰り下さい。」
(人族が嫌いって訳ではなさそうだ。他に問題でもあるのだろうか?)
ルーベンはふと孤児院の中を見た。
子供達がいない。声も聞こえて来ない。
それにルーベンは気になった。
その日の夜。ルーベン達はバイロン町の食堂に来ていた。
情報を得るなら、もってこいの場所だ。ルーベンは酒を飲んでいる魔族に孤児院の事を聞いてみた。
「今日、バイロン町を回ってみたんです。とてもいい町でした。料理も美味しいし。」
「そうだろ。坊主がでかくなれば美味しい酒も飲めるぞ。早く大きくなるんだな。」
「はい。そういえば外れに孤児院があって、子供達と遊ぼうとして中を見たら誰もいなかったんです。同じぐらいの子供と遊べれば良かったのに。」
「………。そうか…まだ帰ってきてないか。」
「ん?子供達はどこかにお出かけ中ですか?」
「………。その話は終わりだ。ほら飯を食べろ。冷めちまうぞ。」
それから同じ話を違う魔族に聞いても、皆んな言葉を濁すばかりで、分からなかった。それでも何かを隠している事が分かっただけでも、調べる価値はある。
宿屋のブルーナさんの部屋。
「お前達の今日の任務は終わりだ。今から私だけで孤児院に侵入して調べてくる。1人の方が都合がいいからな。」
「分かりました。気をつけて下さいブルーナさん。」
「あぁ。すぐに戻るさ。休む事も任務のひとつだからな。ちゃんと寝ろよ。じゃぁ行ってくる。」
『スキル隠蔽。』
みるみるうちにブルーナさんの存在が薄れていく。
そのまま窓から出て行ってしまった。
「忘れそうだけど、ブルーナさんって王国騎士隊長で斧王の称号持ちなんだよね。」
アモがそう言ったが、確かに普通にしている分には優しいお姉さんって感じだからな。ギャップが大きいよな。
「ほら。ブルーナさんも言ってただろ。明日に備えて僕達は寝よう。ほらほらほら。」
「分かってるわよ。じゃおやすみなさい。」
「おやすみなさい。」
「おやすみ。」
こうして初めて魔族の町で眠りについた。




