第九話 六歳の出会い
陽暦二一〇二年十月十七日。
六歳の時に、新たな家族と出会った。
その日は、両親と一緒に近所にあるペットショップに行った。
店名は『エピテランサ・ミクロメリス』。
出入り口には、立派なサボテンがぞろぞろと並んでいる。
多分よっぽどサボテンが好きなんだな。
ペットショップに来た理由は……。
まあ、言うまでもないけど、ペットを飼う為です。
実は、僕は一人っ子で兄弟がいない。
僕自身はそのことを特に気にしてないし、特に両親に言ったこともない。
けど、なぜか両親は僕が兄弟を欲しがってると思ってるらしい。
そういう理由から、その兄弟を作る為にペットを飼うという訳。
ペットショップには、蛇・兎・鼠。
その他も、猫・梟・鷲・狐・鼬が居る。
しかも多種類。
特に鼠が多い。
ハムスター・ビーバー・デグー・グンディ・ヤマアラシ・・ハリネズミ・リス・ヤマネ・ジャービル・カピパラ。
でも、鼠は種類が多いだけで、なぜか一匹ずつしかいない。
恐らく人気だからだと思う。
その中で目を引いたのはハムスター。
灰色の毛並みに、赤色の瞳をしてる。
更に、左目には黒色の眼帯がしてある。
恐らく左目に怪我を負ってるっぽい。
つまり隻眼だ。
何があったのかはわからない。
でも、凄い可哀想。
てか、犬は一匹もいない。
もし飼うとしたら、犬と猫が定番だと思ってたけど、まあ仕方ないね。
それに、喧嘩防止かな?
動物毎にゲージに入れられていて、必ず別のエリアで分けられている。
うん。
とりあえず、沢山の動物たちが居る。
居るんだけど……。
正直、気になる動物がいない。
なので、気ままに色々な動物を見て回ることにした。
そして、気になったのは兎がいるエリア。
白色の毛並みに、赤色の瞳。
まるで、自分を見ているかのようだった。
いや、違うな。
どちらかといえば父親だ。
その兎たちを見ていると、なぜか伝わってくる。
きっと、どんな難関な壁も一人だけで乗り越えていくって……。
そんな感じがする。
まるで、父親みたいだ。
けど、僕は違う。
僕は例え難関な壁が立ち塞がっても、きっと一人では乗り越えられない。
一応言っておくけど、別に弱音を吐いている訳じゃない。
ただ、この歳になると徐々にわかってきた。
父親との差というやつを、身に染みて実感し始めた。
更にいえば、その差は絶望そのものだ。
それは……。
――死を恐れない心。
それが僕にはない。
僕は自分の命と誰かの命を天秤にかけることができない。
だから、絶対にその差は埋められない。
もちろん僕は父親のようになりたい。
その目標は今でも変わってない。
けど、それは父親そっくりになりたいっていう訳じゃない。
僕は父親のように、沢山の人を守れるような人間になりたいんだ。
というのも、父親の職業は消防士。
主な仕事は、消化・救急・救助。
つまり、いつも誰かの為に行動し、沢山の人を救う職業だ。
しかも、父親は死をも恐れずに、誰かを救うために行動している。
それは誰にでもできることじゃない。
だからこそ、それができる父親は立派なんだって。
だから、憧れるんだって。
そう思うようになった。
そして、わかった。
今の僕では、父親のように沢山の人を救うことはできない。
いや、恐らくこれからもそれは変えられないと思う。
けど、同時に気がついた。
なんで、僕は一人で乗り越えようとしているのか……。
ということにだ。
そう。
別に難関な壁が立ち塞がっても、一人で乗り越えようとする必要なんてない。
もし一人で無理だったのなら、誰かを頼ったらいい。
僕一人では、父親との差を埋められない。
なら、誰かと支え合いながら、徐々に埋めていけばいい。
もちろん、誰かに頼るばかりなのはよくない。
だから、時と場合を判断して見極めていく。
それに、別に誰かを頼ることは悪いことじゃない。
それよりも、全てを一人で抱え込み、詰め込みすぎて爆発する方がよくない。
因みに、爆発っていうのは悲観的になるってことね。
それは、僕にとっての絶望だ……。
だから、そうならないように僕はもう一人で乗り越えることを辞める。
そして、これからは同じ意志を持つ仲間たちと共に支え合い、難関な壁を乗り越えて先に進んでいく。
そうしていくうちに、沢山の人を守っていきたい。
いつかそうなれるように、これから頑張る。
とりあえず、このエリアはなしだな。
なんだか、見ていて辛くなってくる……。
僕は兎のエリアを通り去ろうとした。
だが、僕は咄嗟に足を止めた。
目を見開き、一点を見つめた。
その先に居たのは……。
――一匹の兎。
けど、ただの兎じゃない。
その兎は、黒色の毛並みに、紫色の瞳。
今まで見たことがない、とても珍しい兎だ。
しかも、唯一匹だけ。
僕はその珍しい兎と目が合い、しばらくの間そのまま固まっていた。
まるで、時間の流れが止まったかのように……。