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  作者: 黒死
第三章 陰から影へ(知識編:月世界)
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第二十九話 他種族のこと

「続いて、浸夜くんが見かけたと言う森人種です。固有能力は、『浮遊』。人体能力は、『周聴(しゅうちょう)』です」


「浮遊は、体に掛かる重力を操作して、空中に浮くことができる能力です。浸夜くんが見かけたのも、この能力によるものですね」


「なるほど」


 だから空中に浮くことができたってわけか。

 僕が使えないけど、いい能力には違いない。


「周聴は、周囲に響く微細な音や声を聴き取ることができる能力です」


「剛人種の固有能力は、『剛力』。人体能力は、『硬皮(こうひ)』です」


「剛力は、シンプルに力が強い能力のことです」


「硬皮は……。こちらも、シンプルに皮膚が硬くなる能力です」


「ほ、本当にシンプルな能力ですね」


 体術に特化した能力って感じ。

 けど、普通にいい能力ではある。


「そうですね。この種族は、常に戦うことを信条にしているので、そのことと関係してるのかもしれません」


「ということは、日常的に戦っているということですか?」


「はい。そういうことになります」


「あ〜。でも、最近はそれを撤廃ようなことを聞きましたね。確か、国頂の命令でそう決まったとかなんとか……」


 鼻寅さんは、何かを思いついたように。

 やや上に目線を向けてた。


「そうですか」


 その命令は正当だな。

 誰だかわからないけど。


 常に戦うことを信条にしてる国。

 そんな国に住みたい人は少ないはず。


 それに、そんなことを続けていたら。

 最悪の場合、死者が出かねない。


 というか……。


「そういえば、国頂ってなんですか? 名前からして、なんか凄そうですけど」


「国頂っていうのは、各国を治める頂点にいる人のことです。それぞれの国によって異なりますが、決まりごとや行事などは最終的に国頂が決定します」


「国頂のことは、各国の説明をする時も登場するので、その時に詳しく話しますね」


「はい。わかりました」


 後でのお楽しみってやつだな。


 とりあえず、この世界には複数の国が存在する。

 そして、それぞれの国を治めているのが国頂。


 国頂は、決まりごとや行事を決める。

 前世でいうところの、大統領みたいな立ち位置に居るってことですね。


「えっと。霊人種の固有能力は、『危機感知』。人体能力は、『精霊体宿(せいれいたいしゅく)』です」


「危機感知は、人や魔獣が発する危機を感知することができる能力です。」


「精霊体宿は、体内に精霊を宿すことができる能力です。これは、精霊と契約していることになります」


「契約については、後で説明しますが、簡単に言うと……」


「力を与えてくれる存在のことを指します」


 鼻寅さんが最後に言った言葉。

 その言葉に反応し、僕は反射的に質問していた。


「力を与えてくれる存在……ですか」


「はい。これに関しては、適性能力に深く関わってくることなので、能力の使い方について説明した後にしましょう」


「わ、わかりました」


 契約=力を与えてくれる存在。

 更に、どちらも適性能力に深く関わってくること。


 僕は霊人種じゃない。

 だから、精霊と契約することは不可能。


 けど、人体検査をした時に乾牧さんが言った言葉。


『もし幻十竜と契約してるとしても、五歳くらいからじゃないとわからないらしいから、まだはっきりわからないね』


 あの頃は、この言葉の意味がわからなかった。

 けど、少しだけわかった気がする。


 多分、幻十竜っていうのは。

 それぞれに備わってる適性能力を強化することができる竜のこと。


 精霊でも幻十竜であっても。

 契約した人に力を与えてくれる。

 そういうことだと思う。


 そして、精霊と契約するのは絶対に無理。

 でも、幻十竜とは契約できる可能性がある。


 どうやって契約できるのかはわからない。

 けど、幻十竜は五歳くらいから契約可能。


 僕は今三歳。

 まだ可能性はある。


 以上。

 わかったこと終了。


「では、説明を続けますね」


「天人種の固有能力は、『天眼(てんがん)』。人体能力は、『明視』です」


「天眼は、見た人や物の未来を先読みして、予知することができる能力です。別名、未来視とも呼ばれます」


「明視は、対象との距離をはっきり認識できる能力です。ですが、これは日中でのみ発揮することができます。なので、夜中は機能しません」


「龍人種の固有能力は、『龍鱗鎧纏(りゅうりんかいてい)』。人体能力は、『感嗅(かんきゅう)』です」


「龍鱗鎧纏は、手の甲から頬の位置まで龍の鱗を出現させ、鎧のように纏うことができる能力です。基本的に、腕全体に出現します」


「感嗅は、においを嗅ぐだけで相手の感情を感じ取ることができる能力です」


「鬼人種の固有能力は、『再角(さいかく)』。人体能力は、『遅老(ちろう)』です」


「再角は、角を発光させて負った怪我を治すことができる能力です。ですが、持続時間があるので、余り長時間は発動できません。また、角がない場合は機能しません」


「遅老は、老化する速度が遅い能力です。なので、他の種族よりも長生きする傾向があります」


「獣人種は……」


 先程までスラスラと説明していた鼻寅さん。

 だが、急に口をつぐんでしまった。


 目線を鼻寅さんの顔に向けると。

 なぜか上の空だった。


 僕はその状態に疑問に思った。

 なので……。


「ん? 鼻寅さん、どうかしたんですか?」


 そのまま疑問を口にする。


 すると、ハッと体が反応。

 意識が戻ったみたい。


「いえ。大丈夫です。すいません、ご心配をお掛けしました」


「獣人種の固有能力と人体能力については、不明なんです」


 鼻寅さんに疑問を伝えた後。

 直ぐに本に目線を向けた。


 だが、鼻寅さんのその言葉に反応。

 無意識に目線を戻した。 


「不明……、ですか?」


「はい。というよりも、獣人種の姿を見た人自体存在しないんです」


 見た人自体存在しない?


「え? 一人もいないんですか?」


「はい。そして、恐らく獣人種の姿を見ることはないと思われます」


「ど、どういうことですか?」


 一気に疑問の嵐が僕の頭に出現。

 この疑問を吐き出さないままで居られなかった。


「獣人種は、ある事件がきっかけで絶滅しているとされているんです。この話は、まず各国の説明をした後にしますね」


「わかりました……」


 いや、そんな話されるとめっちゃ気になるんですけど。

 まさかの後回しですか。


 なぜか言いにくそうにしてると思ったら。

 まさかの絶滅って……。


 一体何があったんだろ。

 早く聞きたい。


 時間よ、早く過ぎ去れ。

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