第二十九話 他種族のこと
「続いて、浸夜くんが見かけたと言う森人種です。固有能力は、『浮遊』。人体能力は、『周聴』です」
「浮遊は、体に掛かる重力を操作して、空中に浮くことができる能力です。浸夜くんが見かけたのも、この能力によるものですね」
「なるほど」
だから空中に浮くことができたってわけか。
僕が使えないけど、いい能力には違いない。
「周聴は、周囲に響く微細な音や声を聴き取ることができる能力です」
「剛人種の固有能力は、『剛力』。人体能力は、『硬皮』です」
「剛力は、シンプルに力が強い能力のことです」
「硬皮は……。こちらも、シンプルに皮膚が硬くなる能力です」
「ほ、本当にシンプルな能力ですね」
体術に特化した能力って感じ。
けど、普通にいい能力ではある。
「そうですね。この種族は、常に戦うことを信条にしているので、そのことと関係してるのかもしれません」
「ということは、日常的に戦っているということですか?」
「はい。そういうことになります」
「あ〜。でも、最近はそれを撤廃ようなことを聞きましたね。確か、国頂の命令でそう決まったとかなんとか……」
鼻寅さんは、何かを思いついたように。
やや上に目線を向けてた。
「そうですか」
その命令は正当だな。
誰だかわからないけど。
常に戦うことを信条にしてる国。
そんな国に住みたい人は少ないはず。
それに、そんなことを続けていたら。
最悪の場合、死者が出かねない。
というか……。
「そういえば、国頂ってなんですか? 名前からして、なんか凄そうですけど」
「国頂っていうのは、各国を治める頂点にいる人のことです。それぞれの国によって異なりますが、決まりごとや行事などは最終的に国頂が決定します」
「国頂のことは、各国の説明をする時も登場するので、その時に詳しく話しますね」
「はい。わかりました」
後でのお楽しみってやつだな。
とりあえず、この世界には複数の国が存在する。
そして、それぞれの国を治めているのが国頂。
国頂は、決まりごとや行事を決める。
前世でいうところの、大統領みたいな立ち位置に居るってことですね。
「えっと。霊人種の固有能力は、『危機感知』。人体能力は、『精霊体宿』です」
「危機感知は、人や魔獣が発する危機を感知することができる能力です。」
「精霊体宿は、体内に精霊を宿すことができる能力です。これは、精霊と契約していることになります」
「契約については、後で説明しますが、簡単に言うと……」
「力を与えてくれる存在のことを指します」
鼻寅さんが最後に言った言葉。
その言葉に反応し、僕は反射的に質問していた。
「力を与えてくれる存在……ですか」
「はい。これに関しては、適性能力に深く関わってくることなので、能力の使い方について説明した後にしましょう」
「わ、わかりました」
契約=力を与えてくれる存在。
更に、どちらも適性能力に深く関わってくること。
僕は霊人種じゃない。
だから、精霊と契約することは不可能。
けど、人体検査をした時に乾牧さんが言った言葉。
『もし幻十竜と契約してるとしても、五歳くらいからじゃないとわからないらしいから、まだはっきりわからないね』
あの頃は、この言葉の意味がわからなかった。
けど、少しだけわかった気がする。
多分、幻十竜っていうのは。
それぞれに備わってる適性能力を強化することができる竜のこと。
精霊でも幻十竜であっても。
契約した人に力を与えてくれる。
そういうことだと思う。
そして、精霊と契約するのは絶対に無理。
でも、幻十竜とは契約できる可能性がある。
どうやって契約できるのかはわからない。
けど、幻十竜は五歳くらいから契約可能。
僕は今三歳。
まだ可能性はある。
以上。
わかったこと終了。
「では、説明を続けますね」
「天人種の固有能力は、『天眼』。人体能力は、『明視』です」
「天眼は、見た人や物の未来を先読みして、予知することができる能力です。別名、未来視とも呼ばれます」
「明視は、対象との距離をはっきり認識できる能力です。ですが、これは日中でのみ発揮することができます。なので、夜中は機能しません」
「龍人種の固有能力は、『龍鱗鎧纏』。人体能力は、『感嗅』です」
「龍鱗鎧纏は、手の甲から頬の位置まで龍の鱗を出現させ、鎧のように纏うことができる能力です。基本的に、腕全体に出現します」
「感嗅は、においを嗅ぐだけで相手の感情を感じ取ることができる能力です」
「鬼人種の固有能力は、『再角』。人体能力は、『遅老』です」
「再角は、角を発光させて負った怪我を治すことができる能力です。ですが、持続時間があるので、余り長時間は発動できません。また、角がない場合は機能しません」
「遅老は、老化する速度が遅い能力です。なので、他の種族よりも長生きする傾向があります」
「獣人種は……」
先程までスラスラと説明していた鼻寅さん。
だが、急に口をつぐんでしまった。
目線を鼻寅さんの顔に向けると。
なぜか上の空だった。
僕はその状態に疑問に思った。
なので……。
「ん? 鼻寅さん、どうかしたんですか?」
そのまま疑問を口にする。
すると、ハッと体が反応。
意識が戻ったみたい。
「いえ。大丈夫です。すいません、ご心配をお掛けしました」
「獣人種の固有能力と人体能力については、不明なんです」
鼻寅さんに疑問を伝えた後。
直ぐに本に目線を向けた。
だが、鼻寅さんのその言葉に反応。
無意識に目線を戻した。
「不明……、ですか?」
「はい。というよりも、獣人種の姿を見た人自体存在しないんです」
見た人自体存在しない?
「え? 一人もいないんですか?」
「はい。そして、恐らく獣人種の姿を見ることはないと思われます」
「ど、どういうことですか?」
一気に疑問の嵐が僕の頭に出現。
この疑問を吐き出さないままで居られなかった。
「獣人種は、ある事件がきっかけで絶滅しているとされているんです。この話は、まず各国の説明をした後にしますね」
「わかりました……」
いや、そんな話されるとめっちゃ気になるんですけど。
まさかの後回しですか。
なぜか言いにくそうにしてると思ったら。
まさかの絶滅って……。
一体何があったんだろ。
早く聞きたい。
時間よ、早く過ぎ去れ。




