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  作者: 黒死
第三章 陰から影へ(知識編:月世界)
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第二十二話 パラダイス

 広い、そして長い……。


 何がというと、この廊下だ。

 家の廊下も結構長いと思ってたけど、ここはそれ以上の広さと長さ。


 廊下の床は、ビニル床タイルでできている。

 というより、ここの床は全てそうみたい。


 壁紙は白色。

 これも受付の部屋と同じ。


 廊下を歩いてると……。

 最初に見つけたのは、扉に『女子更衣室』と書かれた部屋。


 その扉は木製。

 ドアノブはレバーハンドル。


 とりあえず、巳手さんから言われた部屋じゃない。

 それはわかっている。


 なのに、なぜか強制的に足を止めてしまった。

 自分でもよくわからないけど、恐らく男性の本能というやつが反応した。


 この扉を開けたら、きっとそこにはパラダイスが広がっている。

 つまり、男性なら一度は憧れる光景がある。


 けど、その光景を見た男性はほぼ居ないはず。

 勇気とかの問題じゃない。


 その光景を見た男性の末路は、色んな意味で死を意味している。

 それがわかっていて、この扉を開けるわけがない。


 だが、それはある程度成長した男性ならの話。

 九歳以降は多分駄目ってこと。


 恐らく。

 いや、間違いなく前世の姿でこの扉を開けたら、半殺しは免れない。


 ……ん?


 ということは……。

 今の僕なら、この扉を開いても大丈夫なんじゃないか?


 僕は、今三歳。

 見た目は、小さくて可愛らしい男の子だ。

 更に言えば、目がクリクリで愛らしい容姿。


 今なら、例え誰かが着替え中だとしても、部屋を間違えましたって言ったら許されるんじゃない?


 ならば、開けないのは損ってもんだ。

 男性が一度は憧れる光景を目の当たりにできるチャンスが今ここにある。


 僕は決めた。

 この世界で英雄になるって……。


 英雄っていうのは、他の人ができないことを成し遂げてこそ、そう言われるようになる。

 つまり、この扉を開けることができれば、僕は英雄に一歩近づくことができるはず。


 自分でも理解してる。

 これは男性にとっては英雄でも、女性からしたらただの悪人だ。


 それがわかっていても、男にはやらねばならない時がある。

 そして、それは今なのだ。


 僕はドアノブに右手を掛けた。

 ゴックンと唾を飲み、吐息を一つ。


 いざ!

 パラダイスへ!


 そう思いながら、扉をバッと勢いよく開いた。

 と同時に、目を見開いて、その光景を目に焼き付けた。


 そこに広がっていたのは……。


 ――なんの変哲もない、ごく普通の更衣室!


 残念ながら、誰も居なかったです。


 てか、よくよく考えたら、ここはつまり受付嬢が使っている更衣室。

 その受付嬢は、全員とも今受付にいるはず。


 なら、ここに居るわけないか。

 そのことがわかり、なぜか心の中でほっとしてる自分が居た。


 良かったのやら、悪かったのやら……。

 結果的に、何もなくて良かったということにしよう。


 うん。

 それがいいや。


 僕はそーっとゆっくり扉を閉めた。


 さてさて。

 では、目的地である休憩室に向かうとしますか。


 僕はまた歩き始めた……のだが。


 なぜか疲労感が伸し掛かってるかのように体が重い。

 一歩踏み出す毎に、ズシンと鈍い音が響くようだった。


 そんな中、一心不乱に歩いていると、やっと廊下の突き当たりまで到着。

 そのままクルッと回るように右へ方向転換した。


 真っ先に目に飛び込んできたのは、さっきと同じ扉の部屋。

 その扉には、『休憩室』と書かれている。


 どうやら、この部屋で間違いなさそう。

 なんか途轍もなく長い道のりに感じたけど……。


 何はともあれ、無事に辿り着けて良かった。

 ではでは、さっそく中に入りましょう。


 僕はその扉を開け、中に足を踏み入れた。

 まず、その部屋のことを説明しよう。


 左壁一面に広がってる本棚。

 その中に無数に存在する様々な本。


 右壁に存在する二つのソファー。

 恐らく、四人程度が座れるほどの大きさ。


 ソファーと本棚の間にある木製のローテーブル。

 そのテーブルの上には、珈琲が入ってるマグカップが一つ。


 ソファーの右側にはキッチンがある。

 そのキッチンには、コンロの上にコーヒーポットがある。


 そして、最後に……。


 ――ソファーに座って、寛いでる鼻寅さん。

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