表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  作者: 黒死
第三章 陰から影へ(知識編:月世界)
79/88

第二十話 希望になり得る存在

視点:〈乾牧掛保〉

 そういうことがあって、私は璃映たちをずっと応援するって決めた。

 もちろん、それは浸夜くんに対しても同様に。


 ちょうど一年前……。

 浸夜くんが影の適性能力者だってわかった時は本当に驚いた。

 しかも、唯一人しか存在しないなんて凄すぎる。


 基本、元々存在する適性能力を身に付ける可能性が高い。

 けど、必ずしもそういうわけじゃない。


 それでも、新たな適性能力が発見されたのは数十年ぶり。

 それほどに珍しい。


 更にいえば、能力的に汎用性が高い。

 影は光があればどこにでも存在する。


 冒険者に適性した能力だ。

 つまり、冒険者向きの能力だと思った。


 だから、冒険者にならせるべきだと璃映に伝えた。

 その時の私は感情が昂って、少々興奮状態。

 判断が枯渇していた。


 けど、璃映はそうじゃなかった。

 浸夜くんの適性能力が判明して、動揺しつつも冷静に考えていた。


 あの時の璃映は、今まで見たことないほど悲しそうな表情をしてた。

 その表情を見ただけで、璃映の気持ちが鮮明に伝わってきた。


 璃映は浸夜くんが冒険者になってほしくないんだって……。

 それがわかって、私も冷静になって考えた。


 璃映が反対する理由は直ぐに理解できた。

 その理由は、間違いなくあの人が原因。


 あの人は立派な冒険者だった。

 いつも自分のことよりも誰かのために行動するような人。


 よく言えば、最も冒険者らしい人。

 悪く言えば、自分自身のことを考えなさすぎる人。


 間違いなくあの人は、みんなにとっての希望だった。

 それは、璃映にとっても同じだったはず。


 けど、あの人は若くしてこの世を去った。


 死因は私も知らない。

 璃映に聞くことはできたけど、それはやっちゃ駄目だと思った。


 だから、私たちは極力あの人の話をすることを避けるようにした。

 璃映が悲しむとわかっていたから、みんなで話し合ってそう決めた。


 その時の璃映は、あの人が亡くなった時と同じ表情をしていた。


 きっと、璃映はこう考えてたんだと思う。

 浸夜くんが冒険者になったら、あの人と同じような人生を送ってしまうんじゃないか。


 当然、それは嫌だったはず。

 母親だからこそ、そんな人生を送ってほしくなかった。


 珍しい能力だとか、そんなことはどうでもいい。

 あの人のような人生を送る可能性があることに変わりはない。


 そのことがわかって、私は無意識に口を噤んだ。

 わかったからこそ、強要しちゃ駄目だって思ったから。


 璃映が言う通り、冒険者を目指すかどうか。

 それを決めるのは、浸夜くん自身だ。


 そして、浸夜くんは冒険者になりたいって璃映に伝えた。

 あの時の光景は、今でも頭の奥底に残ってる。


 自然と目頭が熱くなり、気づいたら涙を流していた。

 多分、あれを親子の絆って言うんだと思う。


 と同時に、あることを予感した。

 浸夜くんなら、璃映にとっての希望になるんじゃないかって……。


 だから、私は浸夜くんを全力で応援する。


 浸夜くんが璃映の……。

 いや、沢山の人にとっての希望になれるように。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ