第二十話 希望になり得る存在
視点:〈乾牧掛保〉
そういうことがあって、私は璃映たちをずっと応援するって決めた。
もちろん、それは浸夜くんに対しても同様に。
ちょうど一年前……。
浸夜くんが影の適性能力者だってわかった時は本当に驚いた。
しかも、唯一人しか存在しないなんて凄すぎる。
基本、元々存在する適性能力を身に付ける可能性が高い。
けど、必ずしもそういうわけじゃない。
それでも、新たな適性能力が発見されたのは数十年ぶり。
それほどに珍しい。
更にいえば、能力的に汎用性が高い。
影は光があればどこにでも存在する。
冒険者に適性した能力だ。
つまり、冒険者向きの能力だと思った。
だから、冒険者にならせるべきだと璃映に伝えた。
その時の私は感情が昂って、少々興奮状態。
判断が枯渇していた。
けど、璃映はそうじゃなかった。
浸夜くんの適性能力が判明して、動揺しつつも冷静に考えていた。
あの時の璃映は、今まで見たことないほど悲しそうな表情をしてた。
その表情を見ただけで、璃映の気持ちが鮮明に伝わってきた。
璃映は浸夜くんが冒険者になってほしくないんだって……。
それがわかって、私も冷静になって考えた。
璃映が反対する理由は直ぐに理解できた。
その理由は、間違いなくあの人が原因。
あの人は立派な冒険者だった。
いつも自分のことよりも誰かのために行動するような人。
よく言えば、最も冒険者らしい人。
悪く言えば、自分自身のことを考えなさすぎる人。
間違いなくあの人は、みんなにとっての希望だった。
それは、璃映にとっても同じだったはず。
けど、あの人は若くしてこの世を去った。
死因は私も知らない。
璃映に聞くことはできたけど、それはやっちゃ駄目だと思った。
だから、私たちは極力あの人の話をすることを避けるようにした。
璃映が悲しむとわかっていたから、みんなで話し合ってそう決めた。
その時の璃映は、あの人が亡くなった時と同じ表情をしていた。
きっと、璃映はこう考えてたんだと思う。
浸夜くんが冒険者になったら、あの人と同じような人生を送ってしまうんじゃないか。
当然、それは嫌だったはず。
母親だからこそ、そんな人生を送ってほしくなかった。
珍しい能力だとか、そんなことはどうでもいい。
あの人のような人生を送る可能性があることに変わりはない。
そのことがわかって、私は無意識に口を噤んだ。
わかったからこそ、強要しちゃ駄目だって思ったから。
璃映が言う通り、冒険者を目指すかどうか。
それを決めるのは、浸夜くん自身だ。
そして、浸夜くんは冒険者になりたいって璃映に伝えた。
あの時の光景は、今でも頭の奥底に残ってる。
自然と目頭が熱くなり、気づいたら涙を流していた。
多分、あれを親子の絆って言うんだと思う。
と同時に、あることを予感した。
浸夜くんなら、璃映にとっての希望になるんじゃないかって……。
だから、私は浸夜くんを全力で応援する。
浸夜くんが璃映の……。
いや、沢山の人にとっての希望になれるように。




