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  作者: 黒死
第三章 陰から影へ(知識編:月世界)
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第十八話 質問の意味

視点:〈乾牧掛保〉

 璃映の姿を目の当たりにし、私は目を見開いて放心状態だった。


 なんで璃映が?

 何をしに来たの?


 疑問が頭の中を駆け回る。

 けど、何か言わなきゃ。


「璃……」


 とりあえず、璃映の名前を呼ぼうとした。

 多分、ここに来た理由を聞こうとしたんだと思う。


 けど、同時に璃映に思いっきり抱きついて来た。

 私はその衝撃で左足を一歩引いて重心を固定。


「掛保! 良かった、無事だったのね! 良かった……。もしものことがあったらどうしようかと……」


 璃映は言葉を発する毎に、徐々に抱きしめる力が強くなっている。


 私の右肩に璃映の顔があるため、どんな表情なのかわからない。

 でも、その声は涙声だった。


 体に目を向けると、震えているのがわかった。

 間違いなく璃映は今泣いている。


「え……。なん……で……」


 最近誰とも会話してなかったからか、全然声が出なかった。


「さっき冒険者組合に行ったら、居散から掛保がずっと休んでるって聞いたの。今まで掛保が休むことって一度もなかったから、何かあったのかと思って心配で……。でも、無事で良かったわ。本当に、良かった……」


「そっか……。ありがとう、璃映……」


 私は言葉とは裏腹に、嬉しさはなかった。

 ただ罪悪感だけが積もっていくばかり。

 

 璃映が発した言葉が、私の心臓を抉るように突き刺さる。

 いっそのこと、殴って貰えた方が良かったと思うほどに……。


▪️▫️▪️▫️▪️▫️▪️▫️▪️▫️▪️▫️▪️▫️▪️▫️▪️▫️▪️▫️▪️▫️▪️▫️▪️▫️▪️▫️▪️▫️▪️▫️▪️▫️▪️▫️


 それから数分後――。


 流石にそのままというわけにはいかないので、私たちは部屋の中に入った。


 璃映は落ち着いた後、キッチンに向かってコーヒーポットでお湯を沸かしている。

 調理台にマグカップを二個用意し、その中にはレギュラーコーヒーが入ってる。


 私は両膝を抱えるようにソファーへ座り、顔を埋めていた。


 お湯が沸き、蒸気の勢いでピーーと鳴り響く。

 徐々に音が大きくなり、コーヒーポットがカタカタと動き出した。


 それを確認したら、璃映がコンロの火を止めて、コーヒーポットを右手で掴んでマグカップにお湯を注ぎ始めた。

 二つのマグカップが同じくらいまで注いだら、スプーンで軽くかき混ぜている。


 その後、マグカップを片手ずつ持ってこちらに向かって来た。


「大丈夫? 落ち着いた?」


 璃映はそのマグカップをソファーの向かいにあるテーブルの上に置いた。

 マグカップからはモクモクと湯気が上がり、熱さの具合が伝わってくる。


「うん。ありがとう。もう大丈夫」


「そう。良かったわ」


 璃映は私の右隣に座った。

 目線はマグカップに向いている。


「じゃあ、聞いてもいい?」


「うん……」


「なんで、休んでたの?」


 ド直球に聞かれたくない言葉が飛んできた。


「……そ、それは」


 両膝に顔を埋めて、璃映からは私の顔が見えない。

 けど、咄嗟に目線を左に逸らした。


 多分聞いてくるんじゃないかと覚悟していた。

 それでもなんて言ったらいいのかまとまらなかった。

 なんていうべきなのか、わからない。


「もしかして……、私のせい?」


 その言葉を聞き、私はピクッと体が反応した。

 まさか、そんなことを聞かれるなんて思ってなかった。


 咄嗟に顔を上げ、璃映に目線を向ける。

 璃映の目元は赤く染まり、どこか寂しそうだった。

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