第十八話 質問の意味
視点:〈乾牧掛保〉
璃映の姿を目の当たりにし、私は目を見開いて放心状態だった。
なんで璃映が?
何をしに来たの?
疑問が頭の中を駆け回る。
けど、何か言わなきゃ。
「璃……」
とりあえず、璃映の名前を呼ぼうとした。
多分、ここに来た理由を聞こうとしたんだと思う。
けど、同時に璃映に思いっきり抱きついて来た。
私はその衝撃で左足を一歩引いて重心を固定。
「掛保! 良かった、無事だったのね! 良かった……。もしものことがあったらどうしようかと……」
璃映は言葉を発する毎に、徐々に抱きしめる力が強くなっている。
私の右肩に璃映の顔があるため、どんな表情なのかわからない。
でも、その声は涙声だった。
体に目を向けると、震えているのがわかった。
間違いなく璃映は今泣いている。
「え……。なん……で……」
最近誰とも会話してなかったからか、全然声が出なかった。
「さっき冒険者組合に行ったら、居散から掛保がずっと休んでるって聞いたの。今まで掛保が休むことって一度もなかったから、何かあったのかと思って心配で……。でも、無事で良かったわ。本当に、良かった……」
「そっか……。ありがとう、璃映……」
私は言葉とは裏腹に、嬉しさはなかった。
ただ罪悪感だけが積もっていくばかり。
璃映が発した言葉が、私の心臓を抉るように突き刺さる。
いっそのこと、殴って貰えた方が良かったと思うほどに……。
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それから数分後――。
流石にそのままというわけにはいかないので、私たちは部屋の中に入った。
璃映は落ち着いた後、キッチンに向かってコーヒーポットでお湯を沸かしている。
調理台にマグカップを二個用意し、その中にはレギュラーコーヒーが入ってる。
私は両膝を抱えるようにソファーへ座り、顔を埋めていた。
お湯が沸き、蒸気の勢いでピーーと鳴り響く。
徐々に音が大きくなり、コーヒーポットがカタカタと動き出した。
それを確認したら、璃映がコンロの火を止めて、コーヒーポットを右手で掴んでマグカップにお湯を注ぎ始めた。
二つのマグカップが同じくらいまで注いだら、スプーンで軽くかき混ぜている。
その後、マグカップを片手ずつ持ってこちらに向かって来た。
「大丈夫? 落ち着いた?」
璃映はそのマグカップをソファーの向かいにあるテーブルの上に置いた。
マグカップからはモクモクと湯気が上がり、熱さの具合が伝わってくる。
「うん。ありがとう。もう大丈夫」
「そう。良かったわ」
璃映は私の右隣に座った。
目線はマグカップに向いている。
「じゃあ、聞いてもいい?」
「うん……」
「なんで、休んでたの?」
ド直球に聞かれたくない言葉が飛んできた。
「……そ、それは」
両膝に顔を埋めて、璃映からは私の顔が見えない。
けど、咄嗟に目線を左に逸らした。
多分聞いてくるんじゃないかと覚悟していた。
それでもなんて言ったらいいのかまとまらなかった。
なんていうべきなのか、わからない。
「もしかして……、私のせい?」
その言葉を聞き、私はピクッと体が反応した。
まさか、そんなことを聞かれるなんて思ってなかった。
咄嗟に顔を上げ、璃映に目線を向ける。
璃映の目元は赤く染まり、どこか寂しそうだった。




