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  作者: 黒死
第三章 陰から影へ(知識編:月世界)
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第十二話 初めての挑戦

 陰歴二〇九九年九月九日。


 あれから三日が経ち、ちょうどこの世界……。

 月世界(ムーンワールド)に転生して一年。


 今日、僕はある挑戦をするつもりでいた。

 それは……。


 ――外出だ。


 しかも、一人で。


 転生してからというもの、僕は外に出ることを避けていた。

 ある事情があって……。


 でも、ずっとこのままでは居られない。

 家に引きこもって居られるのは今だけ。


 いつかは踏み出さないといけない時が来る。

 それを、今日行うってわけ。


 僕はリビングに移動。


「母さん、ちょっと冒険者組合に行って来てもいい?」


 いつも通り、ソファーで寛いでいる母親に話しかけた。

 母親は両手でマグカップを支えながら、珈琲を飲んでいる。


 だが、僕の発言を聞いた途端、ピクッと反応。

 マグカップの箸を口元に当て、そのまま固まっている。


「え、ええ。いいけど……、珍しいわね。確か浸夜って、外嫌いじゃなかった?」


 徐々にマグカップを口元から離しつつ返答。

 その後、不思議そうに聞いてきた。


「う、うん……」


 そう。

 僕は外が嫌いだ。


 嫌いというか、苦手? の方が近い。


 理由は、人が多いから。

 以上。


 まあ、普通に僕が陰キャだからっていうのが原因。

 あと、人見知りとコミュ障を追加。


 けど、それだけじゃない。

 なぜかはわからないが、陽光に照らされると体から力が抜けていく感じがするようになった。


 前世でも外にはほぼ出なかった。

 でも、別に力が抜ける感覚は一度もない。


 つまり、この世界に転生してから。

 となれば、原因はこの世界にある。


 念の為、母親に聞いてみた。

 だが、


『う〜ん、なんでかしらね? とりあえず、母さんはそう感じたことないわ。それに、陽光に当たったら力が抜ける、なんて今まで聞いたことないわね……』


 と言っていた。


 どうやら、そう感じるのは僕だけ。

 なら、この世界自体が原因ではない。


 ということは……。

 これは僕だけが持ってる、影の能力による影響の可能性が高い。


 かといって、これをなんとかできる手段が現時点で思いつかない。

 なので、今まで極力外には出ないようにしていた。


 けど……。


「確かにそうなんだけど、ずっとこのままの状態でいる訳にもいかないからさ。それに、冒険者組合に行ったら、この感覚について何かわかるかと思ってね」


「そう。でも、一人で大丈夫? 母さん付いて行こっか?」


「大丈夫。今日は曇だし、平気だよ」


 そう。

 更に今日は曇。


 もし今日が快晴だったら流石に断念する。

 でも、今日は曇で陽光が一切ない。


 外出するには絶好の日だ。


「そ、そう。わかったわ。じゃあ、ちょっと待って」


 母親はそう言って、キッチンへと移動した。


「ん? う、うん」


 母親は冷蔵庫を開け、何やらゴソゴソとしている。

 その後、何かを取り出し、冷蔵庫を閉め、右手でトングを持って袋に詰めている。


 それを六袋に分け、一つの紙袋に入れた。

 紙袋を右手で持って、こちらに移動中。


 けど、左手にも何か持っているみたい。

 後ろで隠しててよく見えないけど……。


「はい。これを掛保たちに渡してあげて」


 母親は僕の前に座り、その紙袋を手渡した。


「わかった」


 僕は両手でその紙袋を受け取った。

 少し気になり、紙袋の中をチラ見。


 すると、そこには……。


「これは……、クッキー?」


 様々な種類のクッキーが入っていた。

 市松模様クッキー・いちごのジャムサンドクッキー・スノーボールクッキー・ラングドシャ・フロランタンなどなど。


 前にも言ったけど、母親は料理が嫌いだ。

 けど、お菓子作りは好きみたいで、息抜きによく作っている。


 味は絶品。

 お店で売ったら行列ができそうなほどだ。


「うん。これみんな好きなのよ。あっちに行ったら、浸夜も一緒に食べていいからね」


「そっか。わかった」


「それと、このリュックもね。今日は雨が降るかもしれないらしいから、折り畳み傘とタオル。あと、怪我した時のために、絆創膏を入れてるからね」


 母親が左手で持っていたリュックを僕に手渡してくれた。

 黒色のリュックで、多分大人用。


 僕は紙袋を床に置き、両手でリュックを受け取った。


 そっか。

 母親が左手で持ってたのは、リュックだったのか。


 うーん?

 でも、なんでだろう。


 なんかどこかで見たことがあるような……。

 というか、前にも同じようなことを言われた気がする。


 まあ、今は前世と同じだからっていう理由で全て解決する。

 だから、同じように心配性なのも、別に不思議じゃない。


 それに、心配してくれて凄く嬉しい。

 嬉しいんだけど……、ん?


「わかった……。けど、なんで二本あるの? 一本だけで良くない?」


 なぜかリュックの中には、黒色と青色のストライプ柄の折り畳み傘。

 更に、白色と赤色のストライプ柄の折り畳み傘が入っていた。


「念の為よ。万が一、折り畳み傘が壊れてしまったら、そのまま雨に打たれてしまうでしょ。でも、二本あればその心配はなくなるわ」


「あ〜、なるほどね。ありがとう」


 先を見据えての備えだったということか。

 確かに、備えるに越したことはない。


 流石母親。

 準備周到。


「うん。じゃ、気をつけて行ってくるのよ」


「わかった。行ってきます」


 僕はリュックを背負い、右手で紙袋を持って、リビングを出た。

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