第九話 月世界
並行世界……。
そう考えれば、今までに起きた共通点の多さにも納得がいく。
そもそも、この世界は異世界。
なら、並行世界だとしても、別に不思議じゃないし、可能だろう。
可能性……。
いや、十中八九間違いない。
そうじゃないと、いくらなんでもおかしすぎる。
それに、そう考えないと共通点の謎が全く解けない。
とりあえず、今までの共通点をあげていこう。
まとめるという意味も込めて。
まず一つは、両親のこと。
母親の髪や瞳の色が同じことは、転生時からわかっていた。
怒り方についても同様に。
最初は偶然だと思った。
けど、同じなのはそれだけじゃなかった。
仕草や癖も全く同じ。
例えば……。
話す時は、必ず相手の目線に合わせようとするところ。
笑う時は、必ずどちらかの手を口に当てるところ。
それに、前世の母親は、僕が小学二年生の頃まで、朝起きたら毎日ハグをしてきた。
今の母親も、朝は必ずハグをしてくる。
僕が長い間覚醒しなかったからっていう理由もあると思う。
でも、前世の母親は、単純に僕を溺愛していたからしていたらしい。
ということは、今の母親のハグにも、その理由が含まれてる可能性がある。
仕草は……。
まあ、百歩譲って偶然という可能性もある。
けど、癖は人それぞれ違う。
それが全く同じというのは、いくらなんでもおかしい。
更に、文字の書き方。
前世の母親は、A型でとても几帳面な性格。
故に、文字を書く時は、必ず下に定規を当てながら書いていた。
しかも、書く時にはいつも緊張してしまうらしく、なぜか角張った字になっていた。
そして、今の母親も同じようにして書いている。
父親に関しては、今まで謎のままだった。
けど、今日の話ではっきりした。
白色の髪に、赤色の瞳で兎みたいな容姿。
正義感の塊みたいな人で、いつも誰かを救うために行動していた。
職業は……、冒険者。
階級もかなり上の方で、凄く強い人。
父親の仕草や癖はわからない。
でも、ここまで容姿や性格が一緒なら、恐らくそれらも同じはず。
もう一つは、受付嬢のこと。
申取さんと初めて会った時、受付嬢の制服が、前世の母親が勤めている銀行の制服に似ていると気づいた。
けど、よく思い返したら、似ているのはそれだけじゃなかった。
鼻寅さん・巳手さん・申取さん・乾牧さん……。
この四人にも見覚えがある。
職場見学に行った時、母親と話していた四人の女性に類似している。
髪や瞳の色まではよく覚えてないけど、間違いなく髪型は同じだった。
そして、最後の一つは、お店の名前。
卯月……。
僕はこの名前を知っている。
母親に聞いて知ったんじゃない。
その前から……。
つまり前世の時に、既に知っていたんだ。
前世の母親は自分で衣服は作ってはいなかった。
けど、興味はあったみたいで、色々な衣服を持っていた。
特にお気に入りのブランドがあって、そこの衣服やアクセサリーを集めていた。
そのブランドは、世界的に有名で、所謂ハイブランド。
そのブランドの名前は……。
――RABBIT・MOON。
直訳すると、卯月になる。
それに、そのブランドのマークは、白色の円形の中に、黒色の兎が居る。
因みに、兎は右向きで、目の部分は白色の円形になっている。
この時点で、もう予想している人も居ると思うけど……。
実は、今の母親が作ってる衣服にも、同じ刺繍がされている。
以上が、現在わかってる前世とこの世界との共通点だ。
……。
まあ、流石にここまで共通点が重なると、少し怖い。
けど、これを並行世界として考えれば、別に怖くはない。
というよりも、寧ろ必然的だとさえ思える。
つまり、前世の人と似てるんじゃない。
一緒なんだ。
この世界に居る人物が、前世の世界にも存在するっていうだけの話。
同一人物……、というのは少し違うか。
趣味などは少し異なるみたいだし。
なら、二重身と言うべきかな?
基本的な情報は一緒。
だけど、育った環境が違うから、多少異なっている、みたいな。
多分、鏡みたいに映った、反対の世界っていう感じなんだと思う。
うん、我ながら完璧な仮説なんじゃないかな?
これなら、全ての共通点に納得がいく。
でも、だとしたら今後なんて呼ぼう?
前世の世界と今の世界って言うの長いし、わかりづらい。
正式には、この世界ってなんて言うんだ……ろう?
いや、待って。
そもそも、普通ここは○○世界、なんて言い方しないよな……。
世界は一つしかないって思うのが普通だし。
てことは、恐らく正式な名前はないな。
なら、別に僕が勝手に名前を付けていいってわけか。
なんてこった。
これは困ったぞ。
自分で言うのもなんだけど、僕ってネーミングセンスないんだよね〜。
シャドウの名前も、今思えば安直すぎたし。
……まあ、自分でわかればいっか。
う〜ん。
じゃあ……、そうだな。
えっと……。
前世では、日白だった。
で、この世界では、月影になった。
日と月か。
この二つって、ちょうど反対みたいなもんだよな。
ほうほう、なるほど。
よし、決めた。
前世の世界を、日世界。
そして、この世界は……。
――月世界だ。
うん。覚えやすそうだし、なんかカッコいい。
これで一件落着!
疑問がなくなったことで安心したのか、急に睡魔が襲って来た。
僕は大きなあくびをし、 瞼にのしかかる重力に負けて、そのまま寝てしまった……。




