第八話 仮説
「でも、よくわかったわね。今まで、父さんの容姿のこと言ったことなかったのに」
「あー。な、なんとなく……ね」
僕は目線をやや左下に逸らし、なんとか誤魔化そうと試みた。
前世の父親がそんな容姿だったから〜。
なんて言えるはずもないからな……。
「そう。じゃ、戻りましょ」
「うん」
僕は立ち上がり、母親と一緒にその部屋を出た。
母親は、また胸元から鍵を取り出し、その部屋に鍵を掛けた。
ん?
あれ……。
「ねえ、母さん」
「ん?」
「この部屋が父さんの部屋ってことはわかったけどさ。じゃあ、もう一つの鍵が掛かってる部屋は、なんの部屋なの?」
「あ〜、あの部屋は……。まだ秘密よ」
「えー。ついでだし、教えてくれてもいいじゃん。ケチ」
プクっと頬を膨らませ、ちょっと駄々を捏ねてみる。
思えば、初めてこんなこと言うかもしれないな。
「駄々を捏ねても駄目よ。だって、父さんと約束してるのよ」
「え、父さんと……」
「ええ。父さんが亡くなる数日前に、『いつになるかわからないけど……。きっと、浸夜に必要になる時が来ると思う。その時に、あの部屋を開けてほしい』って。そう言われてるの。だから、今はまだ開けられないのよ」
「そっか……」
父親との約束なら仕方ないな。
まあ、父親がが言った、
『必要になる時が来る』
という言葉は、ちょっと気になるけど……。
なんか、先を見据えてるみたいな言い方だよな。
まるで、そうなることを知ってるみたいな。
まあでも……。
「わかった。じゃあ、その時が来たら、また声をかけるよ」
「うん。お願いね。いつでも待ってるから」
「うん。ありがとう」
「ううん。じゃあ、母さんお店に居るから、何かあったらいつでも呼びに来てね」
母親は、僕に向かって右手を振った。
「うん。わかった」
僕は、母親に右手で振り返した。
その姿を確認して、母親はお店の方向に歩いて行った。
その後、僕は自室の方向に向かった。
自室の扉を開け、中に入ってベットまで移動。
両手をスプリングの効いたマットレスに手を置き、反動を使って前のめりになりながら上に上がった。
ゴロゴロと体の向きを仰向けにし、両目を瞑って、ため息を一つ。
そして、改めて考える。
数分間に色々ありすぎた。
まさか、父親が使ってた部屋だったなんてね……。
まず、父親のことは予想してた。
とはいえ、やっぱ衝撃が大きかったな。
それに、ある仮説が浮かび上がった。
それは……。
――この世界が、並行世界だということ。




