表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  作者: 黒死
第三章 陰から影へ(知識編:月世界)
64/88

第五話 父親の仏壇

「父……さん」


 そんな気がしていた。

 というよりも、それ以外の人が思い当たらなかった。


 僕は転生してから、一度も父親の姿を見てない。

 それに、この家に居る形跡も一切見当たらない。


 だから、鍵が掛けられている部屋に、そのヒントがあるんじゃないかと思ってた。

 で、いざ入ってみたら、僕の部屋とほぼ同じ配置の家具が並んでいる。


 更に、僕の部屋にある家具の配置を決めたのが、その父親。

 だとしたら、恐らくこの部屋を使っていたのも……。


「うん。ここは、父さんが使ってた部屋。父さんが亡くなってからは、なんとなくそのままの状態にしておきたくて、いつも鍵を掛けてたの」


 やはりそうか。

 それに、通りで机や床に凄い埃が溜まっていると思った。


 母親は綺麗好きで、暇があればいつも掃除をしている。

 その母親が、この部屋に入ったのを一度も見たことがない。


 それは、父親が生前まで使っていた状態を維持するため、敢えて何も手を付けなかった。

 この部屋に鍵を掛けていたのも、その理由。


 まあ、鍵を掛けていたのは、僕が入るのを防止するためでもあったのだろう。

 子供の僕なら、気になって引っ掻き回すかもしれないから。


 母親はクローゼットを開き、中から座布団を二つ取り出した。

 仏壇の前まで移動し、その座布団を左右に並べた。


 母親は左側の座布団に座った。

 僕に目線を向けてニッコリ笑い、右隣にある座布団を右手でポンポンと叩いた。


 多分、座ったほうがいいっぽい。

 僕はその座布団に座った。


 もちろん、正座です。

 因みに、母親も。


 仏壇の前には、経机がある。

 その上の中央に、左から花立・香炉・火立・おりんがある。


 花立には、白色の小菊が備えてある。

 火立には、蝋燭が刺してある。


 右側には、マッチのカス入れ・線香差がある。

 左側には、ライター・火消しがある。


 母親は仏壇に向かって一礼。

 右手でマッチを掴み、蝋燭に火を灯した。


 そのマッチを元の位置に戻し、次に線香差から線香を一本取り出し、さっきの火に翳した。

 線香に火が付いたら、左手で軽く扇ぎ、火を消す香炉に立てた。


 最後に両目を瞑って合掌し、深く一礼。

 十秒程度したら、両目を徐々に開いて、仏壇を見つめた。


 僕がその母親の姿を見つめていた。

 すると、母親がその目線に気づき、両手を膝に置いて、僕に目線を向けた。

 母親はニコッと笑みを浮かべ、大きく頷いた。


 これは……。

 同じようにやってみて、ということだな。


 そう解釈した僕は、先程母親がやった行動をそのまま行った。

 最後に僕も両目を瞑って合掌し、深く一礼。


 その姿を確認した母親が、右手で火消しを掴んで、蝋燭の火を静かに消した。

 そして、火消しを元の位置に戻した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ