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  作者: 黒死
第二章 陰から影へ(転生編:月の兎と影)
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第四十話 まともな提案

「そ、そういえば。浸夜くんの適性能力って影だったんですね」


 鼻寅さんが咄嗟に別の話を持ちかけた。

 この重い空気を変えようとしてるんだと思う。


「そ、そうなんだよ。しかも、なんと唯一人しかいないみたいでね。きっと凄い能力に違いないよ」


 乾牧さんがその話に便乗。


「確かに、それは凄そうですね。ね、菖蒲先輩もそう思いませんか?」


「う〜ん……」


 巳手さんは、なぜか浮かない表情をしていた。

 さっきのことを気にしてるように見える。


「あ、菖蒲先輩?」


「そんなことより……。どうやったら、浸夜くんと結婚できると思う?」


 何を言っとるんだ巳手さん。


 もしかして落ち込んでるのかな?

 って思ったのに。


 まだそのこと考えてたのね……。


「ちょっと! この後に及んで、まだそんなこと考えてたんですか! せっかく話変えようとしてたのに!」


 鼻寅さんも僕と同じ考えをしていた。


 というか、さっきまでは大人しくて。

 しっかりしてるイメージだったんだけど。

 結構感情的になって怒ってるみたい。


 その時、母親と乾牧さんは深いため息を吐いていた。

 巳手さんに呆れているらしい。


「ん? あー、大丈夫。ちゃんと話は聞いてたよ。でも、他に影の適性能力者が誰一人居ないってことはさ……。そもそも使い方がわからないんじゃない?」


「「あ……。た、確かに……」」


 乾牧さんと鼻寅さんが同時に反応。


 え、使い方って全部一緒じゃないの?


 いや、みんなの反応からして。

 それぞれの能力に決まった使い方があるってことだ。


 てことは……。


 そもそも、この影の能力を使えない可能性もあるってこと!?


「でしょー。だから、何か困ったことがあったら、またここに来たらいいよ。ここなら冒険者も集まって来るし、色々な能力の本も置いてあるから、浸夜くんの影の能力が使えるヒントが見つかるかもしれないよ。それに、僕たちが居るから、いつでも相談に乗ってあげれるしさ〜」


 み、巳手さん……。

 今日、初めて巳手さんの口からまともなことを聞けた気がする。


 さっきまでは。

 僕っ子巨乳おっとりお姉さんって思ってた。

 けど、そんなことはないみたい。


「ね、浸夜くん。わかった?」


 僕は巳手さんの問いに、大きく頷いた。


 よし、必ずまたここに来よう。


「そっかそっか〜。じゃあ、僕と結婚する?」


 巳手さんはニッコリ笑い。

 隙を見て僕に結婚を申し込んで来た。


 こ、この人。

 まだ諦めてなかったのか……。


 う〜ん。


 巳手さんは普通にいい人。

 それは、今日のみんなとの会話を聞いていてわかった。


 ちょっとお馬鹿っぽいけど。

 まあキャラとしてはいい感じ。


 けど、それと結婚とは話が別だ。


 僕は大きく首を左右に振った。


「だよね〜。まあ、そんな気はしてたけど」


 巳手さんは本気で言ってる訳ではなさそう。

 それは少し安心した。


 まあ、本気ならある意味凄いけど……。


 てか、さっきから母親たちが固まってピクリとも動かない。

 目を点にして、信じられないものでも見たみたいな表情。

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