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  作者: 黒死
第二章 陰から影へ(転生編:月の兎と影)
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第三十九話 重い空気

「いや、いきなり何言ってるのよ……。それに、そんなの駄目に決まってるでしょ。あと、だとしても菖蒲のお母さんにはならないわよ」


 当然、呆れている母親。

 いや、呆れるを通り越して、少し怒ってるように見える。


「え〜。でも、そしたら璃映は、僕の義母になるよね?」


「あ、あのねぇ……。例えそうなるとしても、菖蒲と浸夜がどれだけ歳が離れてると思ってるのよ」


「璃映……」


「ん?」


「愛に、年齢の差なんて関係ないよ……」


 巳手さんはキメ顔をしている。


「キメ顔で言っても駄目よ」


 母親はその顔を見て即答。


「大丈夫。僕、浸夜くんのこと好きだから」


「それは、子供としてでしょ。恋愛はまた別よ」


「そっかー、違うんだ。じゃあ、浸夜くん抱っこしてもいい?」


「『じゃあ』の意味がわからないけど……。まあ、それならいいわよ。但し、急に動かしたりしたら駄目だからね」


「わかってるよ。まだ病み上がりだもんね。流石にそれは僕でもわかるよ」


 巳手さんのその言葉を発した途端。

 乾牧さんがビクッと反応。


「ん? どうしたんですか、乾牧先輩。なんか汗すごいですよ?」


 鼻寅さんが言うように。

 乾牧さんは物凄い汗が噴き出ていた。


「い、いや。なんでもないよ。あは、はははは……」


「そ、そうですか……?」


「いや〜、璃映に似て可愛い顔だね。目もクリクリでおっきい」


 母親のOKをもらった後。

 巳手さんは両手を僕の両脇に入れて優しく掴み、そのまま抱き上げた。


 僕を包み込むように、自分の胸にピッタリとくっつけている。

 落ちないように両腕でしっかりと支えている。


 僕の顔を凝視し、褒めてくれてるみたい。

 ちょっと恥ずかしい。


 僕はどうしたらいいのかわからず。

 巳手さんの顔をじっと見つめた。


 その時、僕はあることに気づいた。

 凄い重要なこと。


 巳手さんは、恐らく……。


 ――母親よりも胸が大きい。


 そんな、今はどうでもいいような。

 重要なことのような考えが頭を過った。


「それに……」


「ちょ、菖蒲!」


 巳手さんが言おうとして言葉。

 それを乾牧さんが強制的に阻止した。


「あ、ごめん。そうだった……」


 巳手さんは何かに気づいて誤っている。


「ん? どうかした?」


 母親が気になって問いかけた。


「ううん。ごめん……。僕今、言っちゃいけないことを……」


「言っちゃいけないこと?」


「ん、なんですか? それ?」


 母親と鼻寅さんが不思議そうに首を右に傾けている。


「うん……。私も少し思ったんだけど……。その、雰囲気が……、ね」


 その問いに答えたのは乾牧さん。

 何か言いにくそうに、言葉を選んでいるように見える。


「……あ、そういうことね」


 どうやら、母親には伝わったらしい。

 けど、僕と鼻寅さんはさっぱりわからず放心状態。


「ごめん、璃映……」


「もう、そんなに落ち込まなくても大丈夫よ。全然気にしてないから。それに……、それはいいことだもの」


「うん……」


 な、なんだろ?

 なんか、一気に空気が重くなった気がする。


 恐らく、今ここに居る母親と乾牧さんと巳手さん。

 この三人だけが、そのことがなんなのか知ってる。


 そして、それは言いたくない……。

 いや、言ってはいけないようなことだ。


 とりあえず、それだけはわかった。

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