第三十八話 凄い提案
「それはそうと、居散先輩は大丈夫そうですか?」
「ううん。大丈夫じゃなさそうだったから……。ちゃんとトイレに連れて行ったよ」
「そ、そうですか……。そんなに人混み苦手だったんですね。なんで、今まで居散先輩が試験闘技場の受付を頑なにやりたがらないんだろう? ってずっと疑問だったんですけど、こういう状態になるからだったんですね……」
「うん。僕も話には聞いてたけど、まさかあそこまでとは思ってなかった。まあ、今回限りで居散はクビだね〜」
「え! そ、そんな……」
「い、言い過ぎだよ、菖蒲。そんなことでクビになんてならないでしょ。もうっ」
巳手さんの発言に反応し、驚いてる鼻寅さん。
と反論している乾牧さん。
確かに、いくらなんでもクビは言い過ぎ。
人混みが苦手なのに受付の仕事をしてるのは謎だけど。
それでも申取さんは頑張ってるのを僕は知ってる。
多分母親も怒るよ、これ。
けど、なぜか母親は至って冷静。
「いやいや。主語が足りないわよ、菖蒲。試験闘技場の受付をクビってことでしょ? つまり、今後は別の人に行かせようってことを言いたいのよ、多分」
巳手さんの言いたかったことを説明してあげていた。
「そうそう。そういうことー。流石、璃映。僕の言いたいことちゃんとわかってくれるの、璃映だけなんだよね」
いや、さっきの言い方でわかる人の方が凄いと思う。
普通あれじゃわかんないって。
「あ、そういうことですか。ビックリしました」
鼻寅さんは安心し、吐息をついていた。
「ていうか、璃映はよく毎回菖蒲の言いたいことがわかるよね? なんかコツでもあるの?」
「う〜ん……。感? かな? なんとなく、菖蒲はこういうこと言いたいんだろうなって感じがするのよ」
「むっずっ!」
「へ〜、凄いね、璃映。なんか……、お母さんみたいだね」
みたいじゃなくて。
正真正銘母親ですよ、巳手さん。
巳手さんの、ではないけど。
「……あの、忘れてるかもしれないけど、一応、私母親ですからね。……まあ、菖蒲のお母さんじゃないけど」
僕が心の中で思ってたことを、母親が代弁してくれた。
「そっかー、残念。いや〜、こんなにいいお母さんを持って、浸夜くんは幸せ者だね」
いや、ほんと幸せですね。
怒る顔がおっかないのを除けば……ね。
「あ、いいこと思いついた。ねえ、璃映」
「ん? どうかした?」
「僕が浸夜くんと結婚したらいいんじゃないかな? そしたら、璃映は私のお母さんになるよ」
その発言を聞いた全員。
時間が止まったかのように停止した。
……。
な、なんか。
いきなり突拍子もないことを言い出したぞ、巳手さん。




