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  作者: 黒死
第二章 陰から影へ(転生編:月の兎と影)
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第三十六話 全員集合

 母親の瞼がピクピクと動いている。

 また目元から涙が溢れそうだった。


 その姿を見て、僕も同じように目元に涙が溜まっていく。

 少しの振動で流れ落ちそうなほど。


 そんな母親と僕の姿を見ていた乾牧さんも。

 気づいたらもらい泣きしていた。


 いや、どうやら乾牧さんだけじゃないみたい。


 よく見たら、周りに居る冒険者の人たちも泣いてる。

 更に、僕たちに向かって拍手をし始めた。


「はい。ハンカチいる?」


 すると、何者かが母親の背後から右手を出現。

 右手に乗せたハンカチを差し出してきた。


「あ。どうも、ありがとうございま……、す?」


 母親はそのハンカチを右手で受け取った。

 その相手にお礼を言おうとした……が。


 ふと、我に返って疑問に思った。


 なんで後ろからハンカチが? って……。

 恐る恐る首を右側に曲げて、後ろを振り向いた。


「やっほー、璃映。久しぶりだねー。大丈夫?」


 そう。

 ハンカチを差し出したのは……。

 巳手さんだ。


 母親が振り向くのと同時に。

 右側からひょこっと飛び出し、右手を振っている。


「あ、菖蒲? ええ、大丈夫よ。久しぶり。というか……、いつからそこに?」


「ん? えっとねー。掛保が、『瑠映、これは凄いことだよ!』って言った辺りから、ずっとここに居たよー。最初は驚かせようと思ってたんだけど、そういう雰囲気じゃなさそうだったから、後ろで見守ってた」


「そ、そうなのね。全然気づかなかったわ。というか、私よりも居散の方が大丈夫じゃなさそうだけど……」


 母親は巳手さんに目線を向けていた。

 けど、その右肩にチラつく申取さんの姿が目に入ったらしい。

 直ぐに目線をそっちに向けた。


 心配するのは当たり前だ。

 今の申取さんは、魂が抜けたように白くなっている……。


 その理由は……。

 言うまでもなく、人混みによるもの。


「う〜ん。多分、駄目だと思う」


「だ、大丈夫……。少し休んだら、回復すると思うから……」


 申取さんは掠れるような声で答えた。

 だが、大丈夫っという言葉とは裏腹に。

 今にも倒れそうな姿をしている。


「そ、そう? 無理はしないようにね」


「うん。ありがとう……」


「いやー。でも、何はともあれ、瑠映と浸夜くんの気持ちが私にも伝わったよ〜! なんというか、二人の心が繋がってると言うかさ! やっぱ親子なんだね!」


 乾牧さんは両手をブンブンと上下している。

 どうやら、感情が高ぶってるみたい。


「だね。僕も聞いててウルウルきちゃった。瑠映が浸夜くんのこと大事に思ってることは前から知ってたけど、多分それは浸夜くんも同じなんだなって感じたよ」


 巳手さんは、なんというか。

 なんか、抜けてる? 感じが漂ってるな……。


 てか、巳手さん。

 まさかの僕っ子だ。


 女性で一人称を『僕』という人は珍しい。

 けど、僕はいいと思う。


 なんというか。

 キャラが立ってる気がする。


「わ、私も、こんな状態じゃなかったら……。泣いてたんだけどね……。ごめんね、今は別の意味で泣きそう……」


 そして……。

 申取さんは、もう限界みたいです。


「そ、そうかな? えへへ」


 母親はさっきの涙の影響で目元を赤くしている。

 けど、乾牧さんたちに褒められて嬉しそう。


 また、表情に嬉しそうな笑みが蘇った。


「菖蒲先輩。居散先輩。お勤めお疲れ様です」


 すると、もう一人の受付嬢。

 鼻寅さんがこっちに駆け寄って来た。


 『先輩』って呼んでるということは……。


 申取さんや巳手さん。

 あと、多分乾牧さんの後輩ってことだ。


 つまり、ここに働き始めたのは。

 この中では一番遅い。


「おー、野緖(のお)。ありがと〜」


「あ、ありがとうね。野緖……」


「あ、忘れてた。そういえば、二人ともお疲れ様。疲れただろうし、奥で休んで来なよ」


「はい。こっちは大丈夫ですので、奥でゆっくり休んで下さい」


「あ、ありがとう……。じゃあ、ちょっと休んでるわね……」


「僕はあまり疲れてないから、居散を奥に連れてったら、直ぐに受付に戻るよ」


「ん、そう? わかった。じゃあ、お願い」


「うん。じゃあ、ちょっと行ってくるよ。直ぐ戻って来るから〜」


 巳手さんはそう言った後。

 申取さんと一緒にカウンターに設置してあるスイングドアを通った。

 その後ろにある扉を開けて奥に入って行った。

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