第三十三話 周りの反応
周りに居る冒険者の人たち。
鼻寅さんが一斉にこちらを振り向き、またざわつき始めた。
出入り口に目を向けると。
さっき試験闘技場で出会った申取さん。
と、もう一人の知らない受付嬢の姿を発見。
その二人がちょうど出入り口の扉を開けて入って来た。
その知らない受付嬢は……。
青色の髪を旋毛くらいの位置で一つにまとめて、おだんごにしている。
緑色の瞳をした女性。
歳は二十代半ばくらい。
ネクタイは、青色。
名刺には……。
上段に小文字で『冒険者組合 受付嬢』。
下段に大文字で『巳手菖蒲』。
と書いてあった。
それと、申取さんは……。
なぜか魂が抜けたような表情と姿をしている。
そういえば、申取さんも僕と同じで人混みが苦手って言ってたな。
じゃあ、今は人混みに酔って限界を超えている状態なんだろう。
一緒に入って来た巳手が申取さんに肩を貸してる。
申取さんはゼエゼエっと荒く息を切らし、今にも倒れそう。
「はぁ〜、疲れたー。やっと終わったね、菖蒲……」
「だねー。けど、まだ本来の仕事が残ってるよ」
「うう。追い討ちかけるのやめて……」
「ごめんごめん。あとちょっとで定時だから頑張ろうよ」
「う、うん……。頑張ろうね……」
見た感じ、巳手さんは元気みたい。
その頃、周りに居る冒険者の人たちはというと、
「おいおい、影の適性能力者だってよ。しかも、他に誰一人居ないらしいぞ」
「けど、影ってどんな能力なの? 凄いのかよくわからないわね」
「バッカ野郎。よく考えてみろよ。影は光があるところにならどこにでもあるんだぜ。そんなの汎用性高すぎるだろ。めっちゃ戦闘向きの能力じゃねぇか」
「た、確かに。けど、それはあの子が冒険者になったらの話でしょ? 気が早過ぎるわよ」
「ま、まあな……。でも、冒険者になったら、きっとスゲー強くなりそうだよな」
「そうね。それには同意するわ」
などと話している。
しかも、その声はカウンターに居る僕たちに聞こえるくらい大きい。
会話の内容的に。
どうやら、褒めてる?
みたいに聞こえる……。
巳手さんが急に立ち止まった。
周りをキョロキョロと見渡している。
「ねえ、菖蒲。なんかいつもより騒がしくない?」
「え? そう? いつもと変わらない気がするけど……」
「えー。でも、なんか影がどうとか言ってるし、何かあったんじゃないかな? 聞いてみる?」
「ごめん……。今それどころじゃない……」
「あ、そうだったね。ごめん」
「あれ? あそこに居るのって、瑠映じゃない……?」
申取さんが母親に気づいた。
「ん? あ、本当だ。珍しいね。それに、カウンターに座ってるのって……。もしかして、浸夜くん? 目が覚めたんだね」
「うん。試験闘技場にも見に来てたよ。今日、目が覚めたんだって」
「え〜、なんで教えてくれなかったの? 私も瑠映と浸夜くんに会いたかったなー」
「いや、そんな余裕なかったからさ……。てか、今会えたからいいじゃん」
「まあ、そうだね。じゃあ、行ってみようよ」
「うん。ゆっくりね……」
「はいは〜い」
二人は僕たちが居るカウンターへ向かって歩き始めた。




