第三十二話 唯一人の影の適性能力者
「あ。でも、ちゃんと検査はできてるみたい」
乾牧さんは我に返り。
先程からピコピコ光っているパソコンに目線を向けた。
キーボードとマウスを操作して、何かを確認し始めた。
「えーと。まず浸夜くんの種族は……、瑠映と同じ練人種だね」
ほうほう。
なるほど、僕の種族は『練人種』なのか。
うん。
で、何それ?
エルフとかドワーフとかじゃなくて?
練人種?
そんな種族名初めて聞いたんだけど。
名前からして、どんな種族なのか全く想像がつかん。
僕は眉間に皺を寄せ、微妙な表情をした。
そんな僕のことには目もくれず、乾牧さんは検査結果を読み上げ始めた。
「契約は、なしだね。まあ、もし幻十竜と契約してるとしても、五歳くらいからじゃないとわからないらしいから、まだはっきりわからないね」
幻十竜……?
またしてもわからない単語が登場した。
でも、今回は名前からして、なんかカッコいい感じだな。
幻の十体の竜。
よくわからないのは変わらないけど。
とりあえず、契約はまだないってことね。
「それと、適性能力は……」
すると、乾牧さんはなぜか適性能力の所で言い止まった。
なぜか険しい顔をしている。
え、なになに。
もしかして、そんな言いにくい能力なの?
けど、大丈夫。
どんなしょぼい能力でも、極めればいいだけの話。
なんでもいいよ。
バッチこーい。
「ん? どうしたの、掛保?」
母親も乾牧さんの姿を見て、少し動揺してる。
「え、えっと……。適性能力は、影」
乾牧さんがそう言った瞬間。
僕と母親は目を点にし、口を開けて驚いた。
「え、影? そんな能力聞いたことないけど」
え、影?
そんな能力あるのか。
口には出さなかったが、僕も母親と同じ反応をした。
しかも……、え。
聞いたことがない?
今、確かにそう言ったよな。
母親も、昔はここで働いていたはず。
その母親が聞いたことがないって……。
そう言った……よな?
それって、まさか……。
「うん。私も初めて見た。けど、間違いないよ」
「しかも……、え! ちょっと待って!」
乾牧さんは目を見開き、パソコンの画面を凝視していた。
何かとんでもないことに気づいたみたい。
「ど、どうしたの? そんなに慌てて」
「いない……」
乾牧さんは耳を澄ませないと聞こえないような。
小さな声量でぽつりと呟いた。
「え?」
母親が聞き返すのも当然だ。
さっきの乾牧さんの声。
母親よりも少しだけ近くにいた僕でも聞き取れたほどの声量だった。
逆に、聞き取れたのが奇跡じゃないか?
と思えるほど、とても小さかった。
「今まで登録した人の中に、影の適性能力の人が……、誰一人いない!」
乾牧さんは、先程の声量がなんだったのか。
と思えるほど、大きな声で言葉を発した。
「それって、どういうこと?」
母親は、そんな乾牧さんの様子と発した言葉に驚いていた。
まあ、僕もだけど。
「つまり、浸夜くんは、この世界で初めての影の適性能力者ってことだよ!」
乾牧さんのその言葉は、建物中に響き渡った。
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