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  作者: 黒死
第二章 陰から影へ(転生編:月の兎と影)
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第二十六話 悲しい顔

「ふふふっ」


 ん?

 誰かの笑い声が聞こえる。


 気になって、そちらに目線を向ける。

 そこには、右手を口元に当てクスクスと笑ってる母親の姿。


 僕がしたガッツポーズの姿。

 その姿をじっと見つめていたらしい。


 しかも、なぜか周りに居る人たちも笑ってる。

 その目線の先に居る人物……。


 ――そう、僕です。


 おいおい。

 何がそんなにおかしいんだ?

 僕の行動にかい?


 っと、ツッコミたいところだ。

 そんな勇気はないけど。


 と同時に、恥ずかしくなってきた……。


 だが、決して馬鹿にしているわけではない。


 全員が見守るような。

 そんな笑みをしている。


 一人の男……。。

 いや、一人の子供が急にガッツポーズ。


 更に、何かを決意したような自信に満ちた表情。


 現状から見て、先程の戦闘による影響。

 全員がそう思い、笑みを浮かべている。


 つまり、冒険者に憧れた。

 そう思ったはず。


 だから、多分嬉しいんだ。

 次世代の冒険者候補になり得る存在の可能性に……。


 けど、母親に関しては多分少し違う。


 ここに来る前。

 同じようにガッツポーズをかました。


 それに続いて、また同じ姿を目の前で披露。

 更に、この母親は僕の行動が示す意味をわかってる。


 なら、僕が冒険者に憧れたことを一番に察したはず。

 ここまでは周囲の人たちと同じ反応。


 ここで追加の反応。

 それは、我が子の姿が可愛いという笑み。

 のはず。


 そう思うと、本当に子供の姿で良かった……。

 心からそう思う。


 今のは子供だから喜ばれる行動。

 きっと、それ以外の人が同じ行動をした場合。

 冷たい目線を集める。


 でも、ここに来れて本当に良かった。

 お陰で冒険者という職業のことを知ることができた。


 今日見たこの光景を、僕は一生忘れない。

 それほど脳裏に焼きついている。


 それに、この世界での目標が生まれた。

 だから、喜ぶのは当然といえば当然だ。


 となると……。


 このままいけば、僕はいずれ冒険者になる。

 だとしたら、今日みたいに大勢の人たちに見られながら戦闘することもある。

 いや、きっとそれが日常茶飯事。


 なら、いつでも大勢の全員に見られてる。

 そのくらいの気持ちでいなければならない。

 じゃないと、正式に冒険者になれない。


 つまり、今恥ずかしがっていたら。

 いつまで経っても冒険者にはなれない。


 僕は胸を張り、誇らしげな笑みを浮かべ始める。

 今まさに、冒険者になっているかのように。


 だが……。


 残念ながら、まだ早かった。


 うんうん。

 ちょっと待って。


 だとしても。

 やっぱり恥ずかしいです……。


 急激に恥ずかしくなってきた。

 顔を中心に耳の付け根まで真っ赤に染まっていく。


 結果……。

 僕は恥ずかしさに耐えられなかった。


 母親にしがみつき、胸に顔を埋めた。

 周囲の視線からの逃亡を選択。


「よしよしっ。いいのよ、よく頑張ったわね」


 母親は右手で僕の頭を撫でてくれた。

 この手の温まりが心地いいように感じる。


「ねえ、浸夜。もしかして、冒険者になりたいの?」 


 その言葉を聞いた瞬間。

 反射的にピクッと体が反応。


 その言葉を待ってました!

 と言わんばかりに、サッと顔を上げた。


 僕は心のどこかで、その言葉を期待していた。

 この母親なら、そう聞いてくれるはずだと。


 確かに先程の行動は恥ずかしかった。

 それはマジで本当。


 けど、その甲斐はあった。

 きちんと思いは伝わった。


 僕は瞼に笑みを浮かべ。

 母親に目線を向けて大きく頷いた。


「そう……」


 母親は微笑み、掠れた声で呟いた。


 母親は喜んでいる……はず。

 それは間違いない。


 けど、なんでだろう?


 なぜか。

 悲しんでいるように見える……。

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