表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  作者: 黒死
第二章 陰から影へ(転生編:月の兎と影)
42/88

第二十五話 冒険者

 そんな状態の鎧男を右眼で確認した土霊兵。

 恐らく、その土霊兵にも伝わったはず。


 鎧男の思いが……。


 その後、土霊兵が次に起こした行動は至ってシンプル。


 鎧男に向かって左腕を振り下ろし、殴り掛かった。

 先に振り上げていたこともあり、攻撃準備は万全だった。


 鎧男は反応できるのか。

 観客は不安に駆られていた。


 咄嗟に全員が鎧男に目線を向ける。

 その目線は応援と心配からくるものだ。


 だが、問題ない。


 鎧男は両手で持ってる剣を突き刺すように構えている。

 こちらも攻撃準備はできている。


 鎧男はフゥーと息を吐いた後、


炎纏(えんてん)(えい)!」


 と言葉を発言。


 両手で持っている剣を中心に炎を纏った。

 今回は炎が槍のように鋭く尖っている。


 土霊兵が繰り出した左拳に向かって剣を突き刺した。

 互いの攻撃が激突。


 威力であれば土霊兵の方が有利。

 速度や刺突による攻撃は鎧男の方が有利。


 結果……。

 勝ったのは鎧男。


 土霊兵の左拳に、炎の槍が突き刺さる。

 突き刺した剣を中心に炎が燃え上がる。


 土霊兵の左腕を徐々に侵食し、網目状に広がっていた。

 炎が土霊兵の左腕全体に行き渡り、左肩から炎の槍が突き出した。


 肩部分に存在する関節が破壊され、左腕が崩れ落ちた。


 岩片が地面に落下。

 多少の砂埃が発生。


 左腕を破壊された衝撃で、土霊兵は思わず一歩左足を引いた。

 流石に動揺している様子。


 けど、土霊兵もまだ諦めてはいない。


 今度は右手を握り締め、鎧男の頭部に向かって殴り掛かった。

 今度は振り上げる動作がない分、動きに無駄がない。


 だが、諦めていないのは鎧男も同じだ。


 剣の刃先が右側の壁に向くように構えながら、


炎纏(えんてん)(えん)!」


 と言葉を発言。


 再度、両手で持っている剣を中心に炎を纏った。

 炎の形状は先程に比べたら、余り威力がないように見える。


 そのまま剣を円を描くように振り上げた。

 と同時に、徐々に炎が鋭く燃え上がり、紙のように薄く鋭い刃に変化。


 薄い形状にしたことで風の抵抗が少なく、速度は素早い。

 目にも止まらぬ速度で、土霊兵の右腕を一刀両断。


 切断された右腕は崩れ落ち、巨大な岩の塊が地面に落下。

 周囲には砂煙が舞っていた。


 本当に凄い反応速度。

 けど、明らかに対応が早すぎる。


 何も外傷がない状態なら、恐らく可能だったと思う。

 でも、今は重症と呼べるほどの大ダメージを負っている状態。


 そんな状態で反応できるものなのか。

 少々疑問に感じた。


 結果、それでも鎧男は反応。

 更に、適切な対応をした。


 だとしたら、考えられるのは一つ。


 多分、土霊兵の動きを先読みした。

 だから適切な対応をすることができた。


 土霊兵なら、きっとこうしてくるって。

 頭の中で考え、予想していたんだ。


 さっきは、土霊兵が状況を一変した。

 だが、今回は鎧男が即座に状況を逆転した。


 土霊兵の両腕は完全に喪失。

 攻撃の術がない。


 対して、鎧男の手には剣がある。

 ダメージは負ってるものの、攻撃手段はある状態。


 決して油断はできない。


 けど……。


 ――一つの希望が生まれ始めた。


 両腕を失った土霊兵が次に取った行動。

 その行動は、成す術を失ったからこその思い付きによるものだった。


 土霊兵は、鎧男に向かって頭突きを繰り出した。

 間違いなく最後の攻撃だ。


 それは、鎧男も同じ。


 鎧男は剣を背中につく程度の位置まで振り上げ、


炎纏(えんてん)(げき)!」


 と言葉を発言。


 口から血を吐き、限界が近いことがわかる。

 恐らく、こちらも最後の攻撃だ。


 剣には徐々に炎が纏う。

 振り下ろす最中に、より大きく……。

 より激しく燃え上がった。


 鎧男の頭部まで達した時。

 土霊兵よりも遥かに大きな炎の剣になっていた。


 そのままの状態で、土霊兵の繰り出した頭突きに合わせるように待機中。

 攻撃範囲内に入った途端、頭部に向かって振り下ろす。


 互いの攻撃がぶつかり合う。

 衝撃が観客席まで届くほどの威力のぶつかり合い。


 ――上から下に繰り出す頭突き。

 更にその上から繰り出す炎の剣――。


 どちらが有利なのか……。


 それは言うまでもない。


 土霊兵は地面に叩きつけられ、頭部は炎の剣によって焼き尽くす。

 体に生じた亀裂によって、完全に崩壊していった。


 観客の全員が、その状態を見て息を呑んだ……。


 本当に凄まじい勢い。

 窮地からの大逆転。


 凄まじいほどの猛攻撃。

 冷静な反応と対応力。


 鎧男は決して倒れず。

 その場に立っていた。


 今にも崩れ落ちそうな足に力を入れた。

 両手で剣を持ち、天高く掲げている。


 そして、最後の力を振り絞り、


「うおおおおおおおおおおおお!」


 観客に向かって叫んだ。


 その姿を見た観客の全員が、今日一番の歓声を上げた。


 先程まで静まり切っていた試験闘技場内。

 そこに、また歓喜の声が蘇った。


 そうなるのは当然だ。


 今の戦闘を目の当たりにして、興奮しない人はいない。

 感動しない人はいない。


 この感情は、恐らく言葉では表現出来ない。


 たまに、見た人にしかわからないって言う人が居る。

 けど、まさにそれだった。


 僕も今の戦闘を……。

 鎧男の姿を見て、興奮が抑えられない。


 そして、こう思った。


 ――カッコいいって。


 圧倒的な力を前にしても、立ち向かって行ったその姿に。

 死ぬかもしれないのに。

 それなのに、諦めないで前を向いているその姿に。


 ――憧れる。


 その時、僕は父親の姿と重なるのを感じた。


 同じだ……。

 父親と。


 誰かの為に、何かの為に、頑張って立ち向かって行く。


 ――これが、冒険者か。


 ん? 待てよ……。


 つまり、冒険者の仕事。

 こういう土霊兵と同じような化物を倒すことだよな?


 ということは、この世界にはまだまだ化物が大勢いる。


 なら、それは沢山の人を守る。

 沢山の人を救える職業ってことになる。


 それって、まるで。


 ――英雄じゃないか……。


 ……。


 よし!

 決めた!


 この世界で目指す目標。

 いや、目指す職業。


 それは……。


 ――冒険者だ。


 冒険者になって、この世界で沢山の人を救う英雄になる。


 僕は頭の中で決意し、右手を握って天に向かって突き上げた。

【面白い】・【続きが読みたい】と思って頂けたら、是非ブックマーク登録と評価をよろしくお願いします。

評価は、下に☆☆☆☆☆の星マークを五つまで選択できるので、率直な評価をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ