第四話 日白陽開
「はあ……」
外に出たはいいものの。
自然とため息が漏れる。
とりあえず歩こう。
暑いし。
左足を前に踏み出し、中学校に向かって歩き出した。
背中を丸くし、目線を下に向けながら。
その姿は。
側から見たら老人と間違えられそうなほど猫背。
歩き方も足取りが重く。
全く若者とは思えない。
学校までは、およそ五十分程度。
自転車を使えば、二十分程度。
当然だけど、自転車を使った方が速い。
けど、僕は極力自転車は使いなくない。
その理由は……。
――疲れるから。
以上。
せっかくだし。
学校に着くまで僕という人間について説明しよう。
まずは自己紹介から。
初めまして。
僕の名前は日白陽開。
白色の髪に、赤色の瞳をした好青年。
自分で言うのもなんだが、そこそこの顔立ち。
寝癖や目の下にある青黒い隈を除けばの話だけどね……。
てか髪に隠れて、眼も耳もあんま見えないわ。
てへっ。
……。
うん。
なんだか、自分で言ってて悲しくなってきたから話を戻そう。
まず、聞いて驚かないでほしいんだけど……。
なんと僕は、今まで生きてきた人生の十五年間。
唯一度も友達という存在ができたことがない。
大切なことなのでもう一度言おう。
『今まで生きてきた人生の十五年間、唯一度も』だ。
因みに、ごく普通の中学三年生。
誕生日は、四月六日。
ん、なんで友達がいないのかって?
その理由は簡単。
それは、僕が陰キャだから。
人間は、必ず『陰キャ』と『陽キャ』の二つに分離している。
それは、元々備わっている素質から強制的にどちらか決定する。
で、僕は陰キャに決定したって訳。
けど、それは途中から変更することも可能。
もちろん簡単ではないけどね。
もしも陰キャが、
『陽キャになりたい!』
って言っても、
『はい、わかりました』
なんて訳にはいかない。
ていうのも、そもそも居る場所が異なる。
例えば……。
陰キャが居るのは『陰のエリア』。
陽キャが居るのは『陽のエリア』。
その差は、千歩程度の距離。
それぞれのエリアに入るには。
その前に立ち塞がる扉を開く必要がある。
陰のエリアに行きたければ『陰の扉』を開く。
陽のエリアに行きたければ『陽の扉』を開く。
こんな感じ。
結構簡単そうに感じるかもしれない。
でも、これがめっちゃ難関。
押しても引いてもビクともしない。
本当に理不尽なほど強大な扉。
しかも、多分その扉を開けるには何かしらの証が必要。
それがなんなのかはわからない。
それに、僕も生まれた時からずっと陰キャだった訳じゃない。
まあ、ほぼほぼ陰キャだったけど……。
けど、僕も陽キャを目指したことはあった。
そう。
あったんだ……。
その前に少し思い出話をしよう。
突然だが。
僕は人生で一度だけ死にかけたことがある。
本当に突然でごめんね。
けど、これが僕の人生を大きく変えた出来事……。
――全ての始まりだった。