第十八話 衣服の共通点
正確には、試験闘技場の外。
試験闘技場の外壁は、茶色の煉瓦が煉瓦張りになっている。
外観を見た感じ円形状の建物。
目の前には洞窟のように大きな通りがある。
その上には看板があり、『試験闘技場入り口:南』と書いてある。
ここが南ということは……。
恐らく、他に北・東・西の入り口もあるはず。
つまり、四方から人が続々と入ってくるということ。
けど、なら出口はどこにあるんだろう?
他に別の通路があるとか?
いや、今見える範囲には他に通路はない。
なら、東西南北のどれか一つ。
または、二つが入り口。
その残りが出入り口だ。
更に言えば、南が入り口。
じゃあ、多分北も一緒で入り口。
ということは、東・西が出口だな。
多分。
とりあえず、今断言できるのは二つだけ。
一つは、この中には相当の人数が居る。
もう一つは、その人数が入りきるほどの圧倒的な広さを誇っている。
以上。
それだけは確実。
その証拠に、そこに着いた途端、最初に僕が感じたのは大勢の人たちの歓声。
中に居る人たちがどれだけ歓喜しているのか。
その声を聞いただけで鮮明に伝わってくる。
それほどの歓声だ。
前世でもこんな大勢の声を聞いたことないほど。
ここに辿り着くまでに聞いた闘技場。
そして、冒険者。
そのワードだけでも胸が高鳴っていた。
けど、今は尋常じゃないほど心が躍っている。
まるで、心まで少年になったような感覚だ。
これは、恐らく僕が男性だからそう感じるのだろう。
というのも、男性は基本的に戦いや武器に興味を示す特徴がある。
なぜ男性だけかというと……。
それは、遠い昔からの習慣が影響している。
今生きてる人がまだ生まれてもいない遥か昔。
男性はいつも狩りをして戦っていた。
例えば、マンモスを仕留めたり、猪を罠にかけて捕まえたりしていた。
その為に、自分たちで武器や罠を作り、試行錯誤を繰り返す日々。
それが男性のやるべきこと。
今でいう、仕事だ。
それが何千年もの月日を経た今も尚……。
男性の遺伝子の中に残っている、ということだろう。
でも、それは決して動物を傷つける傾向にある訳ではない。
昔も別にマンモスや猪を殺したくて狩りをしていたのではないからだ。
一重に生きていく為。
子孫を残す為に行なっていたこと。
なら、なんで今でも男性は戦うのか?
という疑問が生まれる。
これは解答は僕が導き出しただけだが……。
多分、戦うことで自分の強さを周囲の人たちに認めてもらえることが嬉しいから。
自分が誰よりも強いと思うことで、更に強くなれるから。
恐らくそんな理由だ。
なんてことを言っているが、僕は前世では運動神経も悪くて人一倍非力。
だから、基本争いごと自体起こらなかった。
でも、誰かに自分の強さを認めてもらえるのは嬉しい。
それは僕自身が証明している。
あ、待てよ。
その前に、そもそも争うほど仲のいい人がいなかったわ……。
はははっ。はぁ……。
僕は気づいたら苦笑いをし、自然と吐息を一つ。
それはそうと、気を取り直そう。
気付いたら、母親は試験闘技場の南出入り口の通路を通って歩いている。
その通路は洞窟のように暗い。
そんな中、真上に等間隔に設置してある照明の明かりが照らしている。
照明で照らしているとはいえ、それでも通路は薄暗い。
慎重に歩かないと危ないくらい、暗くて先がほとんど見えない。
奥を見つめていると、通路の先に何やら影が見えた。
僕は目を凝らしてその影の正体を知ろうとした。
すると、そこには……。
一人の女性が立っていた。
黄色の髪を下の位置で二つ結びにしている。
赤色の瞳をした女性。
恐らく、歳は二十代半ばくらい。
耳がエルフみたいに長い。
女性は白色の襟シャツの上に、深緑色のベストを着ている。
首元には、黄色のネクタイをしている。
下は、膝くらいまでの長さをした涅色のスカートを履いている。
どこかに勤めてる人っぽい服装……。
――ん?
なんだろ。
なぜか、その女性が着ている衣服には見覚えがある気がする。
もちろん、この世界では初めて見る。
見覚えがあるのは、前世に居た時。
その時に、どこかで見たことがあるような……。
どこだっけな。
えっと……。
そうだ、思い出した!
あれは、僕が小学五年生の時……。
職場見学で母親の勤めていた銀行に行った時だった。
その時、母親が着ていた衣服によく似ている。
母親も白色の襟シャツの上に、深緑色のベストを着ていた。
ネクタイの色は黒色だったけど、履いてたスカートは膝くらいの長さ。
そして、同じ涅色だった。
まあ、偶然だとは思うけど……。
それにしてもすごい偶然だな。




