第三話 憂鬱な日常
ピ・ピー・ピ・ピ、ピー・ピ・ピー・ピー・ピ・ピ……。
六時九分。
セットした時間通り。
目覚まし時計が枕元で鳴り響く。
僕はそれを断ち切るように。
一気に上体を起こした。
だが、僕は鳴り響いている機械音に違和感を感じた。
「……ん? こんなリズムだったっけ……?」
眉間に皺を寄せて疑問を漏らした。
いや、明らかに普段流れているリズムとは異なってる。
最初は、単純に目覚まし時計が壊れてるのか?
と思った……。
だが、驚くことはそれだけに留まらない。
目覚まし時計の真上にあるボタン。
それを押さなければ、機械音は鳴り止まない。
基本そうだ。
そのはずなのに。
なぜか二回ほどで自動的に鳴り止んだ。
まるで、新たな人生の始まりを告げるかのように……。
僕は驚きのあまり、完全に覚醒した。
覚醒した頭でこの不可思議すぎる現象を真剣に考えた。
考えて、考えて、考えて〜。
そして……。
――さっぱりわからない。
とりあえず頬を叩く必要がなかったな。
なら、いいや。
諦めよう。
仕方ない。
今の状態で考えても、この現象は全く訳がわからない。
それに、人間諦めが肝心だって言うからね。
僕は意識的に大きく息を吸った。
ふう、と息を吐いて気持ちを落ち着かせた。
ふと気になって、目覚まし時計に目線を向けた。
時間はあっという間に、六時十分。
色々あったが、とりあえず学校に行こう。
あの現象は……。
帰ってからよく考えることにする。
せっかく覚醒したのに学校に遅刻しては元も子もない。
僕はベットから両足を下ろして立ち上がった。
両腕を突き上げて背伸びをした。
気怠さが残った体を強制的に動かした。
僕はドアノブに手を掛けて扉を開けて部屋から出た。
と同時に、先程の現象を後にした。
その後、僕は学校に行く準備を整えた。
朝食を食べ、歯磨きをし、学校指定の制服を着用。
念の為、教科書を入れているリュックの中身を確認。
筆箱・教科書・シート・家の鍵。
うん、大丈夫。
因みに、リュックは黒色。
制服はブレザー。
カッターシャツは白色。
ジャッケットは黒色。
ズボンは灰色。
ネクタイは赤色。
以上。
現在のコーデ内容でした。
あ。関係ないけど、女性は青色のリボンらしい。
最後に。
身だしなみを整える為、洗面所にある鏡を見た。
そこに映る自分の姿を確認。
次に、ため息を一つ。
その理由。
信じられない……。
いや、信じたくないほど地味で根暗な姿がそこに映ったから。
どのくらいかというと。
誰これ? 幽霊?
とツッコミたい程だ。
しかも、それがいつも通りの姿っていうのが更に辛い……。
アホ毛みたいについた寝癖も、目の下にある青黒い隈。
うん、いつも通り。
特に異常ないな。
最終チェックを終え、僕はそのまま玄関に移動。
学校指定のローファーを履き、ドアノブに手を掛けて扉を開けた。
扉の隙間から刀のような温かい陽光が僕の体を射してくる。
例えるなら。
白いほどに冴え返った陽光が僕の体に浸透。
その後、真っ黒な心を浄化するかのような感覚。
いや、何言ってんだろ?
例え下手すぎて笑えてくるわ。
ふと、空を見上げると、雲一つない青空。
燦々と輝いている太陽。
神様が贈ってくれた。
としか思えないような快晴だ。
あまりに燦々と降り注ぐ陽光に足を竦めそうになった。
だが、それを断ち切るように。
僕は家の外に足を踏み出した。
そして……。
――今日もまた、憂鬱な日常が始まる。