第十一話 身に覚えがある感覚
それはそうと、二人の会話を聞くとしよう。
「今日、試験闘技場で冒険者資格試験を実施するそうですよ。もしお時間があるようでしたら、お子さんの浸夜くんと一緒に見に行ってみてはいかがですか? 浸夜くんにとっても、きっといい刺激になると思いますよ」
「あー、もうそんな時期ですか……。そうですね、あとで一緒に見に行ってみます。教えて頂いてありがとうございます」
母親は言葉とは裏腹に、どこか浮かない表情を浮かべ、一気に元気がなくなっていくように感じた。
「いえ。では失礼します」
花守はそう言ったあと、最後に僕へ目線を向けて嬉しそうな笑みを浮かべながら右手を振ってきた。
僕も咄嗟にニッコリと笑みを浮かべながら右手で振り返した。
僕の中では笑顔のつもりだったけど、恐らく無表情だと思う。
……まあ、いっか。
多分行動から気持ちは伝わっているはず。
そう祈ろう。
その後、花守さんは部屋から出て行き、続いて母親も部屋から出て行った。
僕はまた一人になり、静かになった部屋で今わかってることを整理した。
とりあえず、今のところわかったのは……。
まず、この世界に住んでいる人は『日本人』で、使用言語は『日本語』。
けど、もしかしたら他の人たちは違うかもしれない。
そして、衣服も普通に日本人っぽい感じ。
衣服に関しても、他の人を確認しないことには断定できない。
あと診断内容も前世と同じ。
それと、予想通りあの女性は僕の母親だった。
うん、徐々にだけどこの世界のことがわかってきた。
この調子で僕が転生したこの浸夜っていう子供についても知っていこう。
とりあえず、この子についてわかっているのは……。
恐らく長い間眠っていて、僕が転生したと同時に覚醒した。
あの母親の反応からそれだけはわかった。
てか、さっき花守さんが言っていた、
『冒険者資格試験』
ってなんだろう?
反応からして、どうやら母親も知ってるみたいだった。
てことは、結構有名なんだろうな。
それにしても冒険者か……。
一体どんな人たちがいるんだろ?
早く見てみたいな。
どんな感じなのか気になるし。
よし。
まず、それが現時点での第一目的だ。
すると、タイミングよく母親が部屋に戻って来た。
「よし、浸夜。異常がないこともわかったし、早速試験闘技場に行ってみる?」
母親は僕の近くに来て、目線を合わせるように中腰になって聞いてきた。
僕は、その言葉を待ってました!
と言わんばかりに大きく頷く。
と同時に、グゥーーーッという音が僕の腹部から部屋一面に鳴り響いた。
更に、ちょうど胃の位置に感じる、何か足りないものを欲するような感覚が全身を襲う。
あ〜。
この感覚には身に覚えがあるぞ。
これは……。
――空腹だ。




