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  作者: 黒死
第二章 陰から影へ(転生編:月の兎と影)
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第七話 初めての診断

 それに……。

 この医者、恐らく天然キャラだな。


 なんとなくだけど、ちょっと抜けてるような感じするし。

 けど、いい人なのは間違いないはず。


 まあ、それはいいとして……。

 気になるのは母親(仮)だ。


 さっきまで涙を流して目元が赤く腫れてたのに、なぜか腫れが引いて完全に治ってる。

 確かに時間が経てば、徐々に治るのは当たり前だ。


 けど、いくらなんでも早すぎないか?

 あれから二時間程度しか経ってないのに。


 そのことを考えたい。

 だが、どうやらそれは不可能みたい。


 なぜなら、さっきから医者が、


「まだこんなに幼いのに、文字が読めるなんて凄いわね」


「私にも四歳の娘がいるんだけど、読み書きが苦手みたいでね。教えてあげようとしても駄々を捏ねて嫌がるのよ。だから、浸夜くんは本当に凄いわ」


「あ、そうだ。浸夜くんが大きくなったら、あの子に教えてもらおうかしら? な〜んてね」


 と僕のことを褒め称えている。

 しかも両手を合わせて、拍手をしながら満面の笑みを浮かべている。


 なので、褒められてちょっぴり嬉しい気持ちが邪魔をして、思考が全くまとまらない。


 うん。

 気になるけど、あとで考えよう。


 医者は僕をひとしきり褒めた後、一度大きく深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。


「おほん、改めまして。まず最初に、自己紹介から始めるわね。初めまして、私は花守蕾咲(はなもりつぼみ)梅花(うめはな)病院っていうところで医者をやってます。よろしくね」


 僕はその医者……。

 いや、花守さんに向かって頷いた。


 と同時に少し疑問に思い、顔を顰めた。


 花守蕾咲、か……。

 思えば、この世界に転生して初めてフルネームを聞いた。

 名前からして明らかに日本人だ。


 そういえば、母親(仮)も僕のことを浸夜って呼んでたな。

 なら、恐らく僕も日本人。


 それに、今更だけど言葉も理解できている。

 大体、言語がわからずテンパるのが定番な気がするけど……。


 つまり、言語名は異なるかも知れないけど、この世界も前世と同じ日本語だ。

 ということは、恐らくこの世界は限りなく前世に近い世界なのだろう。


 よしよし。

 徐々にこの世界のことがわかってきたぞ。


 僕は目を瞑り、二回頷いた。

 もちろん、誇らしげな笑みを浮かべながらね。


「じゃあ、診断を始めましょうね」


 すると、花守さんはそう言って、持って来た鞄に両手を突っ込み、何やらごそごそとしている。

 ついに花守さんによる診断が始まるみたい。


 でもこの世界の検診ってどんなことするんだろう?

 前世だったら、体温を測ったり、聴診器で心音を聞いたり、舌圧子で舌を押さえてペンライトで口内を確認したりしてたけど……。


 僕はドキドキと胸の鼓動が早くなっていくのを感じた。

 けどこのドキドキは、決してワクワクではない。


 これは、ビクビクの方だ。

 つまり不安なんです。


 そして花守さんは鞄の中から取り出した物。


 それは……。

 体温計・聴診器・ペンライト・舌圧子・ステンレス製のトレイ。

 以上。


 どうやら器具は前世と同じ物みたいだな。

 けど、まだ安心はできない。


 このあとこれをどう使うのかがわからない。

 もしかしたら、僕の想像している斜め上の使い方をするかも……。


 そして、次の瞬間……。


 ――なんと花守さんは!

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