第七話 初めての診断
それに……。
この医者、恐らく天然キャラだな。
なんとなくだけど、ちょっと抜けてるような感じするし。
けど、いい人なのは間違いないはず。
まあ、それはいいとして……。
気になるのは母親(仮)だ。
さっきまで涙を流して目元が赤く腫れてたのに、なぜか腫れが引いて完全に治ってる。
確かに時間が経てば、徐々に治るのは当たり前だ。
けど、いくらなんでも早すぎないか?
あれから二時間程度しか経ってないのに。
そのことを考えたい。
だが、どうやらそれは不可能みたい。
なぜなら、さっきから医者が、
「まだこんなに幼いのに、文字が読めるなんて凄いわね」
「私にも四歳の娘がいるんだけど、読み書きが苦手みたいでね。教えてあげようとしても駄々を捏ねて嫌がるのよ。だから、浸夜くんは本当に凄いわ」
「あ、そうだ。浸夜くんが大きくなったら、あの子に教えてもらおうかしら? な〜んてね」
と僕のことを褒め称えている。
しかも両手を合わせて、拍手をしながら満面の笑みを浮かべている。
なので、褒められてちょっぴり嬉しい気持ちが邪魔をして、思考が全くまとまらない。
うん。
気になるけど、あとで考えよう。
医者は僕をひとしきり褒めた後、一度大きく深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。
「おほん、改めまして。まず最初に、自己紹介から始めるわね。初めまして、私は花守蕾咲。梅花病院っていうところで医者をやってます。よろしくね」
僕はその医者……。
いや、花守さんに向かって頷いた。
と同時に少し疑問に思い、顔を顰めた。
花守蕾咲、か……。
思えば、この世界に転生して初めてフルネームを聞いた。
名前からして明らかに日本人だ。
そういえば、母親(仮)も僕のことを浸夜って呼んでたな。
なら、恐らく僕も日本人。
それに、今更だけど言葉も理解できている。
大体、言語がわからずテンパるのが定番な気がするけど……。
つまり、言語名は異なるかも知れないけど、この世界も前世と同じ日本語だ。
ということは、恐らくこの世界は限りなく前世に近い世界なのだろう。
よしよし。
徐々にこの世界のことがわかってきたぞ。
僕は目を瞑り、二回頷いた。
もちろん、誇らしげな笑みを浮かべながらね。
「じゃあ、診断を始めましょうね」
すると、花守さんはそう言って、持って来た鞄に両手を突っ込み、何やらごそごそとしている。
ついに花守さんによる診断が始まるみたい。
でもこの世界の検診ってどんなことするんだろう?
前世だったら、体温を測ったり、聴診器で心音を聞いたり、舌圧子で舌を押さえてペンライトで口内を確認したりしてたけど……。
僕はドキドキと胸の鼓動が早くなっていくのを感じた。
けどこのドキドキは、決してワクワクではない。
これは、ビクビクの方だ。
つまり不安なんです。
そして花守さんは鞄の中から取り出した物。
それは……。
体温計・聴診器・ペンライト・舌圧子・ステンレス製のトレイ。
以上。
どうやら器具は前世と同じ物みたいだな。
けど、まだ安心はできない。
このあとこれをどう使うのかがわからない。
もしかしたら、僕の想像している斜め上の使い方をするかも……。
そして、次の瞬間……。
――なんと花守さんは!




