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  作者: 黒死
第二章 陰から影へ(転生編:月の兎と影)
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第六話 万事急須

「あら、そうなんですか? じゃあ、どうやってお辞儀を知ったんでしょう?」


 花守さんも母親(仮)と同じように、不思議そうな表情を浮かべ始めた。

 右手を右頬に当てて首を傾げている。


 当然、その視線の先には僕です。

 ってそんなこと言ってる場合じゃないな、これは。


 正直やばい。

 それによく考えてみればわかることだった。


 この浸夜っていう子供がまだ何歳なのかわからない。

 けど声帯が発達してないってことは、恐らく一歳か二歳程度。


 そんな小さな子供が挨拶なんて知っているはずがない。

 いや、例え知っててもちゃんとやるはずない。


「もしかして……。あなた……」


 母親(仮)は目を見開き、両手を重ねて口元に当てた。

 信じられないものでも見ているかのような表情へと変わった。


 僕はというと、焦り過ぎて汗が止まらない。

 しかも、とんでもない量。


 恐らくこの時の僕の顔には、動揺という文字が浮かび上がっていたはずだ。

 それほどに動揺を隠せてなかったと思う。


 このままだと、見た目は子供でも、中身は十五歳の陰キャだってバレてしまう。

 いや、陰キャはバレないのか?


 ……。


 いやいや、今はそんなことはどうでもいいわ。


 と、とりあえず何かないか?

 この場を切り抜けられそうな、何か。


 僕は何かないかと思い、キョロキョロと周りを見渡した。

 多分この行為すら不思議に思われているはず。


 それを頭では分かっていても、気にする余裕はなかった。

 だって、それどころではない。


 そして、僕はついにあるものを見つけた。

 それは、右側に設置してある机の上の一冊の本。


 その本には、『挨拶をきちんとしよう』と書いてあった。

 

 こ、これだ!


 僕は咄嗟に、その本を指差した。

 因みに、右手人差し指。


 二人は一斉に、僕が指差した方向に目線を向けた。

 そして固まる二人。


 え、なんで固まってんの?

 もしかして、これでも駄目だったかな。


 でも、あれ以外にこの場を切り抜けれそうなものはない。

 転生したと思ったら、早くも万事急須か!?


 僕は両目を思いっきり瞑り、冷や汗がこめかみを流れていった。

 神に祈るように、両手同士を握って顔の前で構えた。


 ……だが!


 二人の顔には、徐々に笑みが訪れて疑問が晴れたような表情に変化。


「あらあら、まあまあ。なるほど。この本で知ったのね。本当に偉い子ね〜」


 医者は顔の前で両手を合わせ、少し右側に傾けていた。

 おっとりお姉さんがよくやるポーズだ。


「もう、浸夜ったら。ビックリしたじゃない」


 母親(仮)は安心したらしく、胸を撫で下ろして、ほっとしていた。

 あ、相変わらず立派なお胸ですね。


 どうやら僕が伝えたかったことはわかってもらえたらしい。


 僕は安心して、吐息をついた。

 右袖で額に湧き出た汗を拭いた。


 まあ、よく考えてみたら、そもそもその本をどうやって読めるんだ?

 って話なんだけど……。


 どうやら二人とも疑問に思ってないみたいだな。

 なら、良しとしよう。

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