第十五話 十五歳の再起
それは、白色のフードを深く被った女性。
それだけなら特に問題はない。
ただ白色のフードを深く被った一人の女性が朝早くから歩道を歩いている。
ごく普通の光景だ。
けど、僕が注目したのはそこじゃない。
僕が注目したのは、その女性が着ている制服。
なぜかというと……。
その女性も、僕が通っている中学校と同じ制服を着てたんだ。
一応言っておくが、決して僕が陰キャすぎて驚愕している訳ではない。
流石にそこまで重症じゃないよ?
多分。
なにせ、この道を通る同じ中学校の生徒を初めて見かけた。
なら驚愕して当然だろ?
ん、幻聴かな。
今どこからか、
『うん』
という声が聞こえた気がした。
多分幻聴。
僕は咄嗟に歩幅を狭めて、歩く速度を落とした。
このままでは、前方を歩いているその女性に追いついてしまうと直感したからだ。
もし、前にいる女性に追いついてしまったら気まずい。
それに最悪の場合、気持ち悪がられるかもしれない。
そう思っただけで胃を刀で刺されたみたいに痛くなった。
僕は自然とまた下に目線を向けた。
……。
けど、これはあれか?
もしかして、友達になれるチャンスなのでは?
そんな淡い期待が脳裏を過った。
というのも、僕はずっと考えていた。
自分から何もしなくても、自然に友達ができて。
そして、自然に彼女ができて。
きっと、色彩やかな青春を送るのだと。
ずっとそう思っていた。
……けど違った。
やっと僕は気づいた。
このままでは駄目だってことに。
今まで思っていたことは、僕の身勝手な幻想にすぎないということに。
だから、もう幻想は辞める。
そして、これからは変えていく。
変わりたいんだ。僕も。
色々考えて……。
経験して、やっと答えを導き出せた。
それは、『自分から何かを行動しないと、何も変わらない』ということ。
これが、今までの人生経験から導き出した答え。
そして、僕の決意だ。
もちろん、またあの時(十二歳の時)と同じように、誰かを……。
何かを失ってしまうかもしれない。
その考えは消えないし、それは今でも怖い。
けど、今のままじゃ駄目なんだ。
このまま、自分から何もしないでただ平凡な日々を過ごすのは嫌だ。
それに、今まで通り白色の……。
単色の日常を送り続けるはもっと怖い。
しかも、他には誰もいない。
僕とその女性だけ。
絶好のチャンス。
今しかない。
「よしっ……!」
決意は固まった。
早速、僕は歩幅を広げて、歩く速度を少し速くした。
前の女性に追いついて、声をかけるためだ。
あわよくば、友達になりたい。
ちょうどその頃、女性は横断歩道の前に立っていた。
どうやら、今は歩行者用信号機が赤色。
青色になるのを待っている状態。
まあ、僕の場所からは車両用信号機しか見えない。
だから、多分正確ではない。
けど、こっちが今は青色から黄色に……。
あ。ちょうど赤色に変わった。
ということは、歩行者用信号機は時期に青色に変わるはず。
すると、タイミング良く女性は横断歩道を渡り始めた。
よし、予測通りだ。
今の歩く速度だと……。
多分女性が横断歩道を渡り終えたぐらいに追いつけると思う。
「……ん?」
だが、僕はあることを疑問に思い、不意に声を漏らした。
それは、前方右側から走行している一台のトラック。
車道だからトラックの一台や二台見かけても不思議ではない。
けど、そのトラックはなぜか猛スピードで走行していた。
さっき言ったように、今は歩行者用信号機が青色。
ということは、車両用信号機はもちろん赤色。
つまり、停止だ。
となれば、車の速度を落とすのが普通だろう。
これは車の免許を取得していない中学三年生の僕でもわかる。
ごく常識的なこと。
更に、トラックは徐々に左側に寄り始めた。
僕が今いる場所からでは、トラックの運転手の姿がはっきり見えない。
だから、運転手の身に何が起こっているのかはわからない。
けど、これだけはわかる。
これは異常事態だ。
しかも、このままでは間違いなく前方にいる女性に突っ込む。
けど、女性はまだトラックに気づいてない。
おいおい、やばい。
このままだと、あの女性はトラックに轢かれてしまう。
もし轢かれてしまったら、恐らく助からない。
死んでしまう……。
そう思ったと同時に、僕の脳裏に浮かんだ。
それは……。
――助けたい。そして、救いたい。
その瞬間、体が勝手に動いていた……。




