第十三話 十二歳の責任
「シャドウ。どこ行ったんだ……。まさか……」
僕はボウルを地面に置き、目を凝らして小屋の周辺を見渡した。
そして、小屋の変化に気づいた。
小屋の扉に取り付けていた金具が、錆びて外れていた……。
南京錠が小屋本体に取り付けている金具にぶら下がり、扉が少し開いている。
それを見て僕は唖然として、あることを確信した。
シャドウが家の外に出たのだと……。
直ぐに家に入って、両親に報告した。
「母さん! 父さん! シャドウが居ない!」
「え!? 本当、陽」
最初に反応したのは母親。
当然驚いていた。
直ぐに父親もこちらに駆け寄ってくれた。
「うん。小屋の中にシャドウの姿がないから周りを見渡したら……。金具が錆びて取れてて、扉が少し開いてた……」
僕は下に目線を向けて小屋の状況を説明した。
それと同時に自分自身に問いかけた。
いつから金具が錆びていた?
……わからない。
いつもシャドウに餌をやる時に、なぜ確認しなかった?
……金具が錆びるっていう考えがなかったから。
じゃあ、シャドウが外に出てのは、誰のせいだ?
……僕だ。
僕のせいだ。
そう思い、僕は焦燥感を高めながら両手を強く握った。
「よし。手分けして探そう」
そんな僕の姿を見て、父親が提案してくれた。
「うん……。ごめん、僕がきちんと確認してなかったから……」
本当に、何をやってるんだ僕は。
金具を取り付けたからって、いずれ劣化するのは当然だ。
なら、確認するべきだったろ。
その時……。
僕が自分自身を責めている時に、脳裏に最悪が浮かんだ。
……もし。
もしも、シャドウが怪我をしていたら、どうしよう……。
そう思った瞬間、その考えが頭を離れない。
僕は次第に呼吸が荒くなっていた。
「いや、陽のせいじゃない。父さんや母さんも気付くべきだった。ごめんな」
父親がしゃがみ、僕の両肩を両手で優しく掴んだ。
そして、なぜか謝っていた。
「そうよ。母さんたちだって、シャドウの小屋の確認を怠ってたわ。ごめんね」
「だから、陽だけが、その責任を背負うことないのよ」
母親も父親と同じようにしゃがみ、僕に目線を合わせた。
父親と同じように謝っていた。
恐らく僕の姿を見て、そうするべきだと思ったんだろう。
けど……。
なんで、二人が謝るんだ。
シャドウに餌をあげてたのは僕だ。
つまり、こうなる前に僕が気づかないといけなかった。
だから、これは僕の責任だ。
なのに、二人とも自分たちも悪かったって謝ってる。
その責任を、僕一人に背負わせないように……。
それに、こんな時でも父親は僕を怒らないのか。
思えば、父親は僕を怒ったことは一度もない。
いつも、僕を心配して憧れを抱かせてくれる。
母親だってそうだ。
怒ることは多々あるけど、それは僕を案じているからこそだ。
いつも二人は僕のことを思ってくれている。
本当に立派すぎる父親と母親だ。
「父さん……。母さん……」
徐々にではあるが、僕の呼吸が整い始めた。
「うん。それよりも、早くシャドウを見つけてあげよう。もしも怪我でもしていたら大変だ」
そうだ。
父親の言う通り、早く探してあげないと。
けど、その前に……。
「うん。ありがとう」
僕は最後に、二人にお礼を伝えた。




