デブ猫なりの後始末
自分の信じる正義を貫き通すって難しいですよね。
地上に戻ってきた俺達が目にしたのは芸術の国のNPCと猫星座達が戦っている場面だった。しかも、相手はあのナメクジ野郎のネバついたヘドロ色のオーラを纏っていた。信者か?あんなのを野放しにしてはダメだな。
「第1、第2師団。奴らを滅せよ。奴らはナメクジ野郎の信者だ。絶対に逃すな。」
「第1師団、了解。行くぞ!」
「第2師団、了解。突撃!」
あっちは大丈夫だろう。あとは…
「メイジャン!」
「我が神、メイジャン此処に。」
マギ3匹目のメイジャンに確認をしたいことと俺のこれからの行動を言っておかないとな。
「捕らえている貴族は黒か白か?」
「黒です。」
「では、その関係者で黒は何人いる?」
「34人全員黒です。」
「確かだな?」
「はい。」
「なら、ソイツら全員滅せよ。」
「理由をお聞きしても?」
「良いだろう。地下に居たのは下級邪神だった。ちょうど幽世宮の真下で命を弄ばれ、魂を縛り付けられた者達を"作品"と評しやがった。今、師団達が相手にしてる奴らは下級邪神と同じ色をしている。ネバついたヘドロ色だ。あの色だけは駄目だ。残らず滅せよ。」
「承知致しました。我が神。」
「それと今から議事堂に殴り込みに行ってくる。知っているよな?幽世宮に入れられるのはただ疑われて裁判もせずに老若男女問わず閉じ込める箱だと。その者達が下級邪神のおもちゃになっていた。この国の政治家どもはあんなナメクジ野郎に生贄を捧げていた。俺がやろうとしているのは身勝手な正義だ。だが、今正せる時だ。今を逃したらナメクジ野郎の残滓がまた同じことを繰り返す。それは断じて許さん。…悪いが俺が散らかした後を頼めるか?」
「我が神よ、我等に命じてくだされ。我等はその命を迅速に遂行しましょう。」
「なら、俺の身勝手な正義の後始末を任せる。」
「承知致しました。」
「では、行ってくる。」
「主!」
そこには第1師団長が居た。
「どうした?」
「敵の殲滅完了しました。」
「そうか、御苦労。着いてくるか?」
「こちらの警備はよろしいので?」
「警備する必要が無くなれば全員で行けるだろう。」
俺は地上から地下坑道へ開けた穴に「流星魔法」で最も硬い石を多く含んだ隕石を呼び寄せて穴にぶち込む。少し穴より大きかったが上手く蓋になったな。
「これで、よし。あとは「神気解放」。これから大掃除を開始する!皆の者、我に続け!」
『応!』
猫星座達と共に議事堂へ向かう。
なぜ、今「神気解放」をしているか?この国の教会関係者に俺が神格持ちの神であると知らしめるためだ。まさか、教会関係者なのに神がすることを悪いことだなんて口が裂けても言えんよ。だって、奴らはナメクジ野郎がこの国の人間に生贄を差し出させてるのを認知していたはずだ。じゃなきゃ、真っ先に生贄にされるのは教会関係者だからな。うるさい奴を始末するのはどこでも同じのはず。
教会関係者に正しい行いを、なんてものは期待していない。ただの生き物が神に喧嘩売るなんて馬鹿か勇者だけだ。ま、奴らの中にナメクジ野郎の信者がいるなら滅するがな。
俺達が中央区に差し掛かる時に行く手を阻む1団が現れた。俺は歩みを止めずに進む。
「そ、そこの!」
「我等の行く手を阻む奴等を滅せよ。」
なんか面倒くさそうだから、話し聞かずに殲滅指示を出す。
「ちょ、ちょっと!」
「止まれ止まれ!」
「た、隊長!?」
「うああああ!?」
「ぎゃ!」
「に、逃げ」
「誰1人逃がすな。1人残らず殲滅せよ。」
「ぎゃああああ!?」
「た、助けて!」
「嫌だ、嫌だ!こんなとこで死にたくない!」
「ふん、最初から無駄なことをしなければ良いのに。爆撃隊、屋根にいる輩も殲滅せよ。殲滅後、周囲索敵し敵発見のちに直ちに殲滅せよ。」
「了解。」
「了解しやした。」
「我が神、殲滅完了致しました。」
「うむ、御苦労。これからは各師団で露払いをせよ。"行く手を阻む者は全て敵だ"」
「承知致しました。」
中央区と貴族街は猫星座達の露払いのおかげでスムーズに進むことが出来た。道中、俺に祈りを捧げていたNPC達が居た。綺麗な色をしていた。腐らずにいた正しき者達だろうか。
議事堂へ向かう道に差し掛かった時に無駄なことをする奴等が一気に増えてきた。抵抗が激しくしぶとい。めんどくさいから吹っ飛ばしたいが仕方ない。俺はある召喚門を展開させる。
猫星座フェリスには、山猫や獅子以外の全てのネコ科の魂が集っている。既に絶滅した種であろうが生前はか弱い存在であった子猫だろうが俺が呼べば生前よりも強化、上級神になったことで更に大幅に強化された。そして、今まで召喚していたのは普通の猫を常識を少し越えた猫星座達だった。だが、俺は今"常識の外を軽く飛び越える"猫星座達を呼び寄せる。
「さぁ、お前達の出番だ。"粘液体猫""影猫"」
俺が呼び寄せた異形の猫達。粘液体猫は身体がスライムで出来ている。種族スキル「軟体」が「粘液体」に特殊進化した猫だ。影猫は影魔法を常用していたら身体そのものが影になった猫だ。どちらも俺の「魔」に影響を受けた結果、常識という枠から外れて新たな魔猫として進化をしたものだ。
影猫が粘液体猫と一緒に影に潜り、邪魔者どもの防具の影となる箇所に粘液体猫を影から出して行く。影から出た粘液体猫が邪魔者達の顔に超強力消化液を吹きかける。邪魔者達の顔は瞬時に焼け爛れる。酷い状態の者は鼻と口が塞がり窒息死した。影猫が粘液体猫を他の邪魔者達を始末する為に影で回収しまた同じことを繰り返す。抵抗出来なくなった奴らを各師団が確実に仕留める。これで処理速度が早くなった。
粘液体猫は水を取り込むことによって超大型になれるが電撃等の耐性がまだ育ってないから弱点になるような攻撃の仕方を禁止にしている。影猫は影と影の間を転移出来るが俺みたいに影魔法を扱うことが出来ないから今は粘液体猫とコンビを組ませている。研鑽を積み重ねればまだまだ強くなれるから頑張ってもらいたい。
とうとう、議事堂に辿り着いた。が、何やら偉そうな輩が待ち構えている。色はヘドロと灰色か。灰色は魂が死にかけている奴に多い。とりあえず、ヘドロだけ始末するか。俺は影魔法でヘドロ色の奴等だけ全身影で包み込み重力魔法で圧殺させた。残った輩はその光景を目の当たりにして動揺すらしない。やはり、そうか。俺は彼等に話しかける。
「解放されたい者はいるか?」
すると、ほとんどの者の色が変わる。
「幽世宮の地下に居た下級邪神は既に滅した。もう無駄な生贄等捧げなくていい。」
1人を残してほとんどの者の色が暖色系に変わる。残った1人の女になにを考えているか質問した。その女の返答は
「…幽世宮に居た者達はどうなりました?」
「既に死んだ者は冥界神の元へ送ったが、地上の幽世宮内は今から確認しに行く。着いてくるか?」
「お願いいたします…」
俺は議事堂内に居たヘドロ野郎を滅してから幽世宮に向かった。ちなみに議事堂内に居た3分の2程がヘドロ野郎だった。中には王的な奴が居たがろくに話も聞かずに滅した。事情を聞けるまとな奴が残っていれば必要ないからな。
今俺の目の前にはヘドロ魔力で構成された結界に覆われた全体的に黒くなんの装飾もない無機質な建物がある。これが幽世宮だと言う。結界の動力源や核となる者は全てどこにあるか不明。なら壊すしかないよな。
普通に壊しても面白くないから壊すイメージを思い浮かべる。…いつもなにかしら壊してるな俺。んー、とりあえずやってみるか。
今回はオリジンスキル「銀河必殺術」をメインに「空間掌握」「戦場掌握」を行使する。「磁気嵐」「影魔法」「重力魔法」を身に纏う。「猫まっしぐら」が発動されるように集中する。…銀河必殺術、猫流星拳!なんてカッコつけたがただの猫パンチのラッシュである。だが、効果は抜群だった。
幽世宮を覆っていたヘドロ結界がけたたましくパリィィィン!!と音をたてて粉々に消し飛んだ。
ぽーん!これまでの功績によりオリジンスキル「猫流星拳・破壊」を取得しました。
お、おう。まさか、オリジンスキルに昇格したか。なんだか複雑な気持ちだな。
気を取り直して、幽世宮に入ろう。…入口が小さいから壊す。オラァ!ドゴン!これで入りやすくなった。中に入り予想通りな光景を目の当たりにした俺は先程の女の方を見る。…はぁ、やっぱこうなったか。嫌になるな。
幽世宮内部は光の射さない程に、真っ暗だ。だが、1歩踏み入れれば目に入る光景。それは、この世の地獄。力のなき者は力のある者に蹂躙されるのは世の常だが、こんな光景をプレイヤーに見せるとは運営もクソなことをしやがるな。俺達が見たのはあらゆる責苦を受け所々が■が無くなった者。尊厳を奪われ■■しにされた者。■■を無くした者同士を無理矢理縫い合わせられた者達。ここはナメクジ野郎の生贄になった者を信者がナメクジ野郎と同じことをするためだけのクッソたれな場所。
女は完全に魂が壊れ腕には薬指に黒いリングに青のラインが入った指輪をした"左手"を抱いていた。その手の持ち主は彼女の目の前に山積みにされた■■■■■■だろう。
「この建物から俺達以外の者は出すな。建物内の者達でナメクジ野郎の信者は滅せよ。魂がヘドロ野郎も滅せよ。罪なき者は保護しろ。取り掛かれ!」
俺は怒りを抑えるために猫星座達に指示をした。
それでも抑えられない怒りをどうにか無理矢理抑える。絶対運営許さん。
それから、信者とヘドロ野郎を掃除して無事だった者が少なかったが保護出来たから怪我等はヒーラー猫に任せてメンタルは猫星座の中で可愛い猫を看病に付けた。心の傷を癒してね?
あとは、救えなかった人達を弔うだけか。何かしてやれんかね?…ん?
「権能「死には安寧を、"愛する者に最期の別れの時を"」貴方達が愛した者に最期の別れを告げる時間を用意した。行ってきな。」
光が生前の姿を形作り、犠牲者に最期の時を与えることが出来た。
なんか、出来る気がした。ま、今回だけだろう。
だが、運営だけは絶対許さん。
ギリギリセーフ更新。
誤字修正と最後の1文追加と一緒に後書きも追記します。
立ちはだかった敵性NPC達の色はほとんどがヘドロ色です。中にはヘドロ色じゃない者も居ましたが敵意を向けてきた時点で敵対行為ですので関係ありません。
ギンパッチに祈りを捧げていた綺麗な色をした者達は教会関係者ではありません。
魂が死にかけていた者達は大切な人を守るために罪悪感で魂がギリギリ耐えていた状態です。それがもうあのような事を二度としなくて良くなったとして魂が回復し始めました。
魂が壊れてしまった彼女は人質として最愛である妻を幽世宮に入れられてしまったのです。貴重な百合夫婦でした。ですが、人質など嘘でした。
最期の別れをさせられるようになったのは冥界神と愛と嫉妬の女神による慈悲です。
ま、冥界神は心からの純粋な慈悲です。が、愛と嫉妬の女神は少しでもギンパッチのために何かしてあげたいと思ってました。下心ありで。
それがちょうどあのタイミングです。
冥界神の方から仕事が少し楽になったお礼があるかもしれませんね。
それでは、次回*˙︶˙*)ノ"




