閑話:メス猫の過去と現在。形容しがたい女神との邂逅
フェリセットの過去とギンパッチに出会い、星ちゃんと邂逅してからのフェリセット視点回です。
sideフェリセット
最初の私は、どこにでもいる野良猫だった。怖い人間に捕まって、よくわからない人間に連れてかれて毎日ご飯に困らなくなった。代償があることを忘れて私はそのひとときの幸せを享受していた。いつまでも続くと思って。
ある時、私の飼い主となった人間が悲しそうな顔をしながら私を撫でた。どこか痛い?なにか悲しいことがあったの?人間は何も言わずに私を撫で続ける。
またある時、大勢の人間と数十匹の同族が集まった。人間達はどこか楽しそうだ。私も楽しい。でも、いつもの人間は楽しそうではない。なんで?
私達はそれぞれ、小さな箱に入れられた。落ち着く。いつもの人間は泣いていた。泣きながら私を撫でていた。泣かないで。あとで一緒に寝ましょう。そうすれば、悲しいことも忘れられるわ。
だが、それは出来なかった。
次の私は猫星座フェリスの一部になっていた。その時にあの人間が私に付けた名前を知った。フェリセット。それが私の名前。あの人間が私に与えた名前。あの人間は元気だろうか?また泣いてないかな?ちゃんとご飯食べているかな?…私のこと忘れてないかな。
それからの私は寝て過ごした。私がいるのは宇宙という冷たい空気、石だらけの世界。食べる必要がない身体になって何もすることがなくなったから猫らしく寝て過ごした。他の同族も同じように寝ていた。
どれくらいしたかわからないほど、月日が過ぎた頃に自らを神だと自称するギラギラする"男"が現れた。アイツ嫌い。アイツは私達、猫星座は不要だと、お前達を星座の座から落とすと言い同族を処分して行った。同族は果敢に立ち向かったが長い間寝て過ごしていたから大したことも出来ずに命を散らして行った。
私は死にたくなかった。だから1人逃げた。同族が立ち向かってる中1人逃げた。逃げて、逃げて、アイツが来ないことを願い、とある小惑星に穴を空けて隠れて過ごした。
ある日遠くからキラキラ光るなにかが近付いてきてる。最初はアイツに見つかったと思った。だけど、近くになるほどアイツではないと思うようになった。
輪郭が見えるようになった時に同族だと気付いた。私以外にも生き残った同族がいた!私は穴から飛び出て同族の元へ行った。最初、私に気付かずに通り過ぎたから追いかけた。その時にあれ?同族なのにこんなに大きな身体?と疑問に思ったがこういう同族もいたかもと思い直した。
そして、彼に声をかけた。彼は私達の言葉を忘れてしまったようだ。仕方ない。根気よく話してれば思い出すだろう。…彼は同族だけど私と同じではない気がする。猫星座の名残が皆無だ。星の力と別の力を感じる。暖かくお日様のような。それでいてどこかチクチクするような。でも、嫌な感じはしない。アイツとは関係ないだろう。
彼の眷属になった。良いことしかない。一応、神格持ちらしい。もしかしたら、アイツからも私を守ってくれるかな?彼には番がいるらしい。女神が番だと言ってるけどオスがいつもする比喩ってやつだと思い私は大して信じなかった。これが後に私の首を物理的に締めるとは知らずに。
移動の際、彼の大きな背中にピッタリくっついて離れるなよと言われて従った。何この私がとろけるような安心感。ついつい母国語が思念として彼に届いてしまったようだ。私は照れ隠しで思ってもないことを言ってしまう。ああぁ、恥ずかしい!その際に、ほぼ無意識に彼の大きな背中に噛み付いてしまっていた。これも後で後悔することになる。
彼から思念が送られてきた。だけど、私はそれに答えることは出来ない。自己嫌悪に陥ていたからだ。彼は心配してくれていたのに。
戦場に乱入してから彼の膨大な魔力に触れて私は私の愚かしさを痛感した。こんな魔力、アイツより遥かに越えている!そんな人にあんな態度を取った私は本当に度し難いほどに、ぐぁ!む、胸が苦しい。明滅する視界には彼が獰猛な顔をして戦艦に魔法を行使している姿、平たく圧し潰される船団。それはまさに圧倒的。あの日のアイツが同族を処理していた姿が児戯に思えるくらいに苛烈無比な光景。ああ、永らく忘れていたメスとしての本能が疼く。なにがなんでも彼の寵愛が欲しい。私は今まで残っていたプライドを捨て、彼をMaîtreと呼び信頼関係になれたら寵愛をいただこうと浅はかに考えていた。
彼の"番"に出会うまでは。
なんだあれなんだあれなんだあれなんだあれなんだあれなんだあれなんだあれなんだあれなんだあれなんだあれなんだあれなんだあれなんだあれなんだあれなんだあれなんだあれなんだあれなんだあれなんだあれなんだあれなんだあれなんだあれなんだあれなんだあれなんだあれなんだあれなんだあれなんだあれなんだあれ?????
なぜ、彼は平然としている?あれが彼の番?あれではまるで"■■"…
そこで私の意識は途切れた。
私が意識を取り戻した時に彼とその彼の隣に人型のナニカが居た。彼からとてつもないプレッシャーが込められた質問をされる。ま、間違った答えを言えば死ぬと思った私は恐怖でうまく発音出来なかったがなんとか正解を答えられたようだ。
彼から48回も私は死んだ?らしい。だが、それは本当のことだ思う。考えただけで身体が抑えられないほど激しく震える。私が覚えていなくても身体がそのことを覚えていた。これが100回も続いていたら私はどうなっていただろうか?か、考えたくない。
彼の隣に居たナニカは彼の番だと言う。つまり、正妻様だ。そして、しばらくその正妻様と留守番しながら教育を受けろと言われた。え!ちょっと待ってと反論しようとした私を正妻様は私の頭を足蹴にして黙らせる。待って!置いてかないで!だが、彼はどこかへ転移してしまった。
「『さて、それではメス猫ちゃんには色々と覚えて貰う前に私の旦那様にしたことを"再度反省"してもらうわね。』」
「あわわ」
「『大丈夫よ?死なないから。』」
私は形容しがたい姿に変貌しつつある正妻様の教育に耐えれるのだろうか?
sideフェリセット 終わり
形容しがたい女神こと星ちゃんですが多分、絵にすることは無理でしょう。人間が見た瞬間にSAN値直葬される絵ってAI絵師で何度も試行錯誤しなくてはいけないと思います。チェックする人間が全員SAN値直葬されるまで試行錯誤するのですから正直そんな酔狂な人達はいないと思いたいです。
フリではありませんからね?ダメですよ?
それでは、次回*˙︶˙*)ノ"




