表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/71

64.愚者の愚行

暴れる風神竜を圧倒的力で抑え込んだカイン。戦いの最中で自我を取り戻した風神竜がカインの前に来て頭を下げる。そしてカインの顔を見て言った。



「強神竜様、で、よろしいですね?」


カインは少しだけ困った顔をして答える。


「うん、そうかな、そうだよね(僕の名前は違うんだけど……)」


「大変失礼しました。あなたに爪を上げたことをお許しください……」


「だ、大丈夫だよ、それより何があったのか、教えてくれるかな?」



風神竜はこれまでに起きたことを説明した。

カインは集まって来たクララやシルファールと共にその話を聞く。


「弟さんが……、酷い……、どうしてそんなことを……」


皆に重い空気が流れる。

そこへひとりの男を鷲掴みにしたまま一頭の竜が飛来した。




「強神竜様っ、お久しぶりです」


それは全身傷だらけになったゲルヴァを掴んでやって来た邪竜であった。


「邪竜! 来てたんだ!!」


カインは邪竜の姿を見て喜んで言った。邪竜が掴んだゲルヴァを持ち上げて言う。



「カイン様、こいつが、こいつがやったんだ!! このヒト族が森にやって来て、息子を木に縛り付けたんだ!!」


カイン達は邪竜の子供が木に打ち付けられて死にそうになっていたことを思い出した。


「やっぱり……、彼らの仕業だとは思っていたが……」


シルファールは掴まれるゲルヴァの姿を見て言った。風神竜も同じく無念そうに言う。



「こいつに、こ奴らに私の弟は……、くっ……」


風神竜はガタガタと体を震わせて言う。クララが言う。



「彼ひとりだけじゃないわね、こんなできるのは。クロムウェル。彼が背後にいるに違いない」


「そうね……」


マリエルもその意見に同意し頷く。



「カインくーーーん!!」


「ロ、ローゼンティア様!!」


介抱されて目を覚ましたローゼンティアがカインの方へとやって来た。


「また助けられちゃったね、未来の旦那様に。きゃは!」


「ちょ、ちょちょちょ、ちょとおお、ティナ!! その呼び方はダメ!!!!」


シルファールが大きな声で言う。ローゼンティアが答える。


「いいじゃない、もうすぐそうなるし、ね~え、カイン君?」



「いいい、いえ、その、あのぉ、そんなことは……」


口籠るカインにシルファールが怒って言う。


「カ、カイン様!! ちゃ、ちゃんと断ってください!! でないと、シルは、シルはぁ!!」




「それよりも邪竜さん達はどうして森を出られたの?」


マリエルがそんな無駄な会話を無視するように邪竜に尋ねた。思い出したかのように邪竜が言う。


「そうだ、急に森の結界が解けて、自由に出られるようになったんです!」


「えっ、それって、まさか……」


ローゼンティアが青い顔をして言う。邪竜が答える。


「そうなんだ。つまり森にいる魔獣共が一斉に外に出たんで、多分もう暴れ始めているんじゃないか。近くにあるランダルト王城も危ないはず」


「そ、それじゃあ、城下町も!?」


「ああ、危ない。急いで戻った方がいいぞ!!」


邪竜の言葉に驚く一同。すぐに戻るようクララが提案。頷くマリエルがクララに言った。



「で、その前にその男はどうするの?」


マリエルが掴まれたままのゲルヴァを指差して言った。邪竜が答える。


「こいつは俺が食い殺す。いいっすよね、カイン様?」


尋ねられたカインが驚いて何か言おうとすると、風神竜が先に言った。


「待て。その前に私の風で八つ裂きにする」


それを聞いたゲルヴァが泣きながら言った。



「やめてくれ……、やめてくれよおぉ、お願いだから、そんな酷いこと……」


それを聞いた邪竜が掴んだ手を更に強めて言う。



「何を言うか!! お前は俺の息子が同じく許しを乞うた時に、何と言ったんだあああ!!!」


「ギャアアアア!!! あ、頭が割れるううう!!!!!」


頭を更に強く掴まれたゲルヴァが、頭を押さえて悲鳴を上げる。掴んでいる邪竜の目からは涙が流れ落ちる。



「邪竜よ、その手を離せ。まずは私の風で八つ裂きにする」


邪竜は掴んでいたゲルヴァの頭を離す。ドンと音を立てて地面に落ちるゲルヴァ。痛みと恐怖で体をブルブル震わせる。風神竜が言う。



「では、死なぬ程度に切り刻んでやろう」


ゲルヴァが言う。


「やめてくれ、やめてよお、ねえ、ねえええ、やめろって言ってるだおおおおお!!!」


「!?」


そう言うと懐に隠し持った短刀で風神竜に斬りかかる。


「危ない!!!」



グサっ!!


ゲルヴァが持った短刀が風神竜を襲う瞬間、隣にいた一体の飛竜が身を挺してその攻撃から風神竜を守った。

風竜の胸に突き刺さる短剣。ゲルヴァは気が違ったように笑いながら叫ぶ。


「ぎゃはははっ、『竜殺し』の恩恵を受けた呪いの短剣だよ~、もう死ぬよ、もう死ぬよ~、そいつ死ぬよおおおお~!!」



「き、貴様ああああ!!!!」


風神竜はそう叫ぶと風の邪気を全開に放ち、前足でゲルヴァを掴む。そして咆哮しながら大きな翼を広げて山頂の方へと飛び立つ。



「ふ、風神竜ーーーーっ!!!」


カインが叫ぶも風神竜は翼を羽ばたかせそのまま山頂へと消え去る。カインが言う。


「僕、追ってきます!! 皆さんは先に街へ行ってください!!」



クララが答える。


「分かったわ。邪竜、みんなを運べる?」


「大丈夫だ。俺はカイン様を乗せる。戦える奴は仲間の背中に乗りな!!」


ローゼン・ファインズ、シリカ・ファインズ、その他回復して動ける冒険者が邪竜の仲間の背に乗る。



「カイン、早く来てよ!」


「はい!」


カインはクララの言葉に頷いて答えると、邪竜の背に乗り空に舞い上がった。



「行くよ! 風神竜の暴走を止めに!!!」


カインと邪竜は一直線に風神山の山頂へ向かって飛んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ