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61.風神竜討伐・再び

「大盛況ね!!」


異世界お菓子の店のランダルト支店を無事開店させたマリエルと店長のチョコが笑って話す。お店の改装工事も終わり、無事にオープンの日を迎えた。


事前に拠点ホームでお菓子を売っていたこともあって、今日の支店オープンには開店前から多くの人が並んでくれた。

そして開店と同時に飛ぶように売れるお菓子。オープン価格と言うこともあり見る見るうちに在庫が減って行く。そして午前中にはすべてのお菓子が売り切れてしまった。


「これからまたお菓子を焼いてくるわ。夕方にはまた開きましょう」


マリエルはお店の片づけをするチョコにそう言うと拠点ホームへと向かった。何とか支店をやっていけると言う手応えを感じて。





「ゲルヴァ殿、今度は大丈夫なのですな?」


再び風神竜の討伐隊が編成されその出陣式の際、シリカ・ファインズ団長シリカがゲルヴァに尋ねた。ゲルヴァがにやにやして答える。


「大丈夫よ、前回は無能な指揮官のせいで敗退しましたが、今回はクロムウェル様のご指示を受けこの私が指揮を執りますからご安心を。万全の準備をしていますよ~」


そう言ってゲルヴァは新たに討伐隊に加わった弓隊を見つめる。シリカが言う。


「本来ならばクロムウェル様にご出陣頂きたいとは思うが、まあそこは対策があると言うことだな」


「そういうことで~す。皆さんには私の指示に従って動いて貰えれば結構ですよ」


シリカはこのような男ではなく、真の強者であるクロムウェルが来ないことを少し残念に思った。



「どうかされましたか、ローゼンティア姫」


出陣に当たり不安そうな顔をするローゼンティアに気付き、団員のレンゼントが声を掛けた。ローゼンティアが答える。


「ううん、何でもないわ。今回も期待しているわよ、レンゼント~」


「あ、はい! 全力を尽くします!!」


レンゼントは少し緊張した顔で答えた。ローゼンティアが思う。


(カイン様達は拠点ホームにご不在で直接今回の出陣についてお伝え出来なかったけど、お読みになって貰えたかな……)


ローゼンティアは行軍を開始した討伐隊に加わり、空を見ながら思った。





「全力で当たれ!! 再びやって来た愚か共に我ら風竜の恐ろしさを見せてやれ!!!」


「グオオオオオオン!!!!」


再来したヒト族の集団を迎撃しようと風神竜は仲間の竜達に号令をかけた。

風神竜と飛竜を中心に組まれた飛行隊。一気に山中から飛び立つと、麓に陣を築くゲルヴァ達に攻撃を開始した。襲来を察知した討伐隊の動きが慌ただしくなる。


「ゲルヴァ様!! 来ました、風神竜です!!!」


「来たのお~ん? じゃあ、あんた達、やってちょうだい」


「はっ!!」



「吹き飛ばせ、ウィンドハリケーン!!!!!」


風神竜は遠方から強力な竜巻を討伐隊の陣に向けて放った。


「隊を! そのまま隊を維持せよ!!!」


新たに加わった弓隊が陣形を組み風竜の攻撃に備える。各国の冒険者達はその後ろで待機する。



ゴオオオオオ!!!


竜達が次々と竜巻を放つ。討伐隊に迫る竜巻。しかしその竜巻は弓隊に当たると、大したダメージを与えることなく消え去った。


「あ、あれは? 風が消えた!?」


後方で見ていた冒険者達が驚きを持って言う。ゲルヴァが答える。


「風よけの鎧。対風攻撃に絶大の威力を発揮するんですよ~」


「なるほど」


「でも、これからが本番よ」


ゲルヴァは腕を組んで弓隊を見つめた。




「な、なんだと? 我のウィンドハリケーンが効かないだと?」


焦る風神竜に飛竜達が言う。


「焦ることはありません。我らの機動力、防御力をもってすれば負けるはずはありません!!」


「その通りだ!! 総員、速攻を仕掛ける。突撃っ!!!!」


「ガオオオオン!!!!」



風神竜の指示に従い、飛竜の群れが一気に討伐隊に向かって突撃を開始した。それを見たゲルヴァが笑いながら言う。


「くくくっ、来たわね。は~い、弓隊の皆さん、やってちょうだい」


ゲルヴァの指示を受け、一斉に弓を構える弓隊。そして高速で飛来する飛竜の群れにその矢が放たれた。



「矢に気をつけろ! 大したダメージにはならないが、当たり所が悪いと致命傷になりかね……、!?」


「グワッ!? グワオオオン!!!!」


風神竜が注意をするも、敵の弓矢の攻撃を受け次々と落ちていく飛竜達。


「な、何事だ? 矢は苦手とはいえ、竜族の硬い皮膚がこうも簡単に!?」


次々と落ちる飛竜を前にゲルヴァが言う。



「ふふっ、クロムウェル様の『竜殺し』の恩恵を受けた矢。あなた達の防御力はその辺の下級魔物よりも低いわよ~。さ~て、じゃあそろそろ冒険者達にお願いしようかしら」


ゲルヴァはそう言うと後ろに控える各国の猛者達に言った。



「さあ、猛者のみなさ~ん、落ちて死にそうな竜ちゃん達にとどめを、お・ね・が・い!」


冒険者達は一瞬静かになったが、その後各団が気合を入れて地表に落ちた飛竜達に攻撃を始めた。



「はっ、は、はああ!!!」


『竜殺し』の矢を受け瀕死になった飛竜達を、次々と容易に冒険者達が斬り殺して行く。苦手な地上戦、特殊な矢によって大ダメージを負った飛竜達に抵抗する術はなかった。



「ふ、風神竜様、こ、これは一体……」


多くの仲間が撃ち落され、数体となった風神竜達。彼自身も矢を受けて体の至る所から出血が激しい。


「これは、竜族に効く矢のようだ。しかしここで退いたところでいずれ我らは……、お前達は戻れ!! ここは私が!!!!」


風神竜は仲間の飛竜にそう言うと、単騎弓隊の群れに突撃した。


「ふ、風神竜様ああ!!!」




「来たわよ、デカいの。やっておしまい」


弓隊は単騎突入してくるその大きな的に向けて弓を構えた。


ヒュンヒュン、ヒュン!!!


風神竜に向けて放たれる数多の矢。その矢の一本が体に刺さる。風神竜が叫ぶ。



「負けぬぞおおお!!!」


それでも突撃をやめない風神竜。ゲルヴァが言う。


「はい、一斉に。それ!!」


その掛け声と同時に放たれる数多の矢。風神竜は目を見開き全力で突撃した。



グサグサグサ、グサッ!!!


「!?」


風神竜は突然目の前に現れた()()にぶつかり止まった。目の前には一体の竜がいる。そしてその背中を見て驚いて声を上げた。


「ま、まさか、お前は……」


風神竜の前に飛び、代わりに矢を受けたその大きな竜が言う。



「風神竜がこんなところで死んじゃダメだろ……、兄上よ……」


「お、弟よ。弟なのか……!?」


風神竜は矢を受けて落ちそうになった弟を抱き後退する。


「な、なぜ、何で!?」


目に涙を溜めて兄である風神竜が言う。弟が答える。


風神竜あんたは一族の大切な要、簡単に死んじゃいけないだろ。それに……」


弟は弱々しい声で兄に言った。



「謝りたくて、前に酷いことを言ったことを……、ぐふっ、ご、ごめん……」


そこまで言うと弟は全身の力が抜けて言った。

自分などよりもずっと強くて勇敢だった弟。全身にある古い傷が、群れを出てからひとりで苦労して生きて来たその証。



――自分がもっとしっかりしてれば、もっと強ければ、皆は、弟は……


風神竜は全身の震えを感じる。隣に来た飛竜に息絶えた弟を託すと、討伐隊の前に飛び鬼の形相で睨んだ。それを見たゲルヴァが再び言う。



「また来たのね、はい、弓の皆さ~ん。やっておしまい!!」


弓隊が再び弓を構える。風神竜は空中で睨みつける。



――貴様らが、貴様らが来なければこのような事に、許さぬ、許さぬぞおおおお!!!!!


ドーーーーン!!!


「!?」



風神竜の体から四方に衝撃波が放たれる。

そしてその竜の大きな体が鎧の様な風に覆われていく。目は真っ赤に血走り、大きな口からはゴオゴオと激しい風が吹き出す。


「あ、あれは、一体!?」


飛竜を狩っていたレンゼントが小さな声でつぶやく。


「あ、あれは、まずい……」


ゲルヴァと弓隊以外の冒険者達はその宙に舞う竜を見て皆そう感じた。



「グゴオオオオオオオ!!!!!」


激怒した風神竜が弓隊に向かって突撃した。






「あれ、これってローゼンティア様の手紙じゃ!?」


買い物に出かけ拠点ホームに帰って来たクララ達が、ポストに入った手紙を見て言った。すぐに封を開けて中身を確認するクララ。カインに言う。



「今朝、風神竜討伐隊が城を出発したんだって!!」


「ええっ!!」


驚くカイン。クララが言う。


「今度はあのゲルヴァが指揮を執るそうよ。それって……」


シルファールが言う。


「何か策を講じての出陣ね。二度目の敗北は許されないはず」


「ええ」


クララも頷く。カインが言った。



「ぼ、僕行きます!!!」


クララも頷いて言う。



「もちろんよ、ララ・ファインズ、出陣よ!!!」


クララ達はすぐに戦闘順を整え戦いが行われている風神山へと向かった。

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