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59.暗躍者

「聖域を荒らす愚か共め!!!! 吹き飛べ、ウィンドハリケーン!!!!」


風神竜が怒りを込めた声で言い、そしてその大きな体から轟音を伴った巨大な疾風を討伐隊に放った。


「ぐあああああ!!!」


各国から選ばれ厳選された冒険者達が次々と吹き飛ばされて行く。そして負傷した者へ更に飛竜などの風の加護を受けた竜が追撃を行う。

全面的に押される討伐隊を前にゲルヴァがライン王子に言う。



「お、王子! ここは退却を、退却命令を!!」


「くっ……」


それを聞いた大将のライン王子が苦悩の表情を浮かべる。


「こ、ここまでの強さとは、風神竜……、無念……」


ライン王子は敗色濃厚な隊に大声で言った。



「総員、退却!!!!」


それを聞いたゲルヴァの顔が一瞬不気味に笑った。




竜討伐軍の風神竜への敗退は大きな驚きを持ってランダルト王国で広がった。

各国から集められた冒険者、そしてさらに厳選された強者達が暗黒竜討伐の()に敗北したことは、ランダルト国民のみならず様々な国で悲観的に報じられた。

そしてその敗北の要因、そして敵前逃亡をしたとして大将のライン王子が非難の的となった。




「それでライン王子からは討伐隊に関する一切の権限をはく奪。これからはクロムウェルとゲルヴァによって全て決めていくんですって」


ララ・ファインズの拠点ホームにやって来たローゼンティアが不満そうに言った。シルファールが言う。


「これで決まったわね。ほぼその二人が何か企んでいるって」


クララが言う。


「ええ、まだ証拠はないけれど、状況から察するにそれで間違いなさそうですね」



「しかし、竜って強いですね~」


ローゼンティアが溜息をつきながら言った。


「うちのレンゼントも強いはずなんだけど、ほとんど防戦一方だったわ。負けないとしても勝てるとも思えない。暗黒竜ってもっと強いのかしら、もぐもぐ……」


ローゼンティアは机に置かれた異世界お菓子をもぐもぐ食べながら言った。マリエルが言う。


「そうですね。でもうちには最強の竜様がいるから安心ですよ、ね? カイン君」



カインはずっとひとりで考え事をしている。光神竜から聞いた情報、『竜を操る者』が頭から離れない。


(そんなことができるんだろうか? だとしたら竜族にとって大変なことに……)



「ねえ、カイン君!! 聞いてるの!?」


「ひゃっ!?」


急に名前を呼ばれたカインが驚いてマリエルの顔を見る。慌てて言う。


「ご、ごめんなさい! ちょ、ちょっと考え事をしていて……」


その言葉にすぐに反応したローゼンティが言う。



「考え事? 私との式の日取りかな? きゃは!!」


「ティ、ティア! またあなたは、な、何を言って!!!」


シルファールが怒って言う。ローゼンティアはカインを見てにこにこしている。クララが尋ねる。




「で、ローゼンティア様。今後、討伐隊はどうするのでしょうか?」


それまで笑っていたローゼンティアが真面目な顔をして答える。


「ええ、再度風神竜討伐を行うみたい。今度は装備を固めるって言ってたわ」


「装備?」


「ええ、何かは分からないけど」


クララが言う。



「どうしてそこまで躍起になるのかな。山で大人しくしている竜に手を出してまで」


「分からないわ。ただみんなクロムウェルの言葉に陶酔したように従っているわ。何か気味が悪いと言うか。大変なことが起きなければいいけど……」


「そうですね、私達もできることをしていきます」


クララもその言葉に応えた。






「ここか」


その山奥にある大きな洞窟に来たクロムウェルが言う。隣には真っ黒な大きな竜。その竜の胴を撫でながら言う。


「さあ、行こうか、()()。暗黒竜退治に」


「グルルルルルッ……」


黒竜は下を向いて小さく唸った。




「お、お前達は何者!?」


クロムウェルと黒竜にその洞窟の最深部にいた焦げ茶の竜が言った。クロムウェルが言う。


「世界を制す者、だ」


「世界を制す? この私が暗黒竜と知ってのことか?」


クロムウェルが笑って言う。



「当然だ。私の障害になるものは全て消し去る。竜族はその最たるもの。私の可愛い黒竜によってその命、頂く」


暗黒竜は男の隣にいる黒い竜を見た。



(黒竜に間違いない。でもなぜ彼がヒト族などに従っている? キョウさんの力を継ぐ者でもなさそうだが……)


クロムウェルが言う。


「その顔、不思議がっているよね? どうして竜が私に従っているかって。教えてあげるよ。私のレアスキル『竜支配』。一頭なら竜を完全支配できるスキルさ」


「りゅ、竜支配!?」


暗黒竜そんなスキルがある事を初めて知り、そして驚いた。それなら黒竜が大人しく従っている理由も理解できる。ただ、


(『竜耐性』を持つ私には黒竜と言えども攻撃は通じない)


対竜戦において最高のスキルである『竜耐性』。全ての竜による攻撃を無効化する暗黒竜固有のスキル。これが彼の存在、そして竜族の中でも強き立場を築いていた。



「で、私の命を頂くとは、ごほっごほっ、また物騒な話で……」


暗黒竜はクロムウェルの顔を見て言った。クロムウェルが答える。


「言ったはずですよ。私の邪魔になりそうな奴はすべて排除するって。行け!! 黒竜!!!」


「ゴオオオオオ!!!!」


その声に合わせて黒竜が暗黒竜に飛び掛かる。その鋭い爪が暗黒竜の翼をとらえる。


ザン!!



「な、なに!?」


暗黒竜の翼には爪で割かれた深い傷がついた。



(な、なぜ? 私には竜の攻撃は効かないはず……?)


滴る血と割かれた翼を見ながら暗黒竜が信じられない表情をする。クロムウェルが言う。


「あはははっ、びっくりしている様ね。どうして攻撃が通るかって」


「なっ、き、貴様、一体何をした?」


「何? 何って何もしていないよ。ただ、持っているのさ、もうひとつのレアスキル」


「もうひとつのレアスキル、だと?」


黒竜がクロムウェルを見つめる。クロムウェルが言った。



「レアスキル『竜殺し』を」






「!!」


拠点ホームにいたカインが急に驚いた顔をする。それを見たクララが言う。


「ど、どうしたの、カイン。急に驚いたような顔をして?」


カインが答える。



「近くに、近くに何か懐かしい竜の気を感じます。ただ、相当弱っている……」


「竜の気? 弱っている?」


クララが首をひねって言う。その時、お菓子屋さんの方から大きな声を出してハクとマリが走ってやって来た。



「カ、カイン! これって、この気って、アンニイのだよ!!」


「あ、暗黒竜の!?」


カインもその言葉に驚く。すぐに立ち上がるとクララに言った。



「ちょっと、僕見てきます!!」


そう言って飛び出そうとするカインにハクが言う。


「これ、持って行って!! 竜族の回復の秘薬!!」


カインはその薬を受け取ると、飛ぶように外へ出て行った。マリエルが慌てて店の方からやってくる。


「ちょ、ちょっとお、どうしたのよ、急に?」


突然走っていなくなった二人を追いかけて来たマリエルが言う。ハクが答える。


「すまない、マリエル。でも、アンニイ、暗黒竜が近くに来ているんだ」


「えっ!!」



マリエルは説明を受けカインが既に向かったことを知る。そして二人に言った。


「店は大丈夫。支店開店とちょっと忙しいけど、行ってあげて。暗黒竜のとこ」


「あ、ありがとう。マリエルのお姉ちゃん!!」


ハクとマリもすぐにカインの後を追う。マリエルがクララに言う。



「心配ね」


「うん」


クララが返事をする。そして続けて言った。


「やっぱり何か悪い事が起ころうとしている気がする。だけど……」


クララはマリエルとソファーでうとうとしているスミレに向かって言った。



「私はみんなと一緒ならどんなことでも乗り越えられるよ」


「うん」


マリエルも笑顔で頷いた。





「う、うそ……」


ランダルト王国を出てひたすら気を感じる方へと走り続けたカイン。強神竜の強靭な筋肉から蹴り出される跳躍でまるで空を飛ぶかのように高速で移動する。

そして街郊外にある深い森の中。その横たわって絶命しそうな竜を見て全身の力が抜けた。



「これが暗黒竜……」


カインはハクに渡された竜族の秘薬をすぐに飲ませる。それを意識が朦朧としていた暗黒竜が少しずつ飲み込む。すると流れていた血は止まり、震えていた体も落ち着きを取り戻し始めた。

しかしカインは暗黒竜の介抱をしつつ思った。



――暗黒竜って、く、黒色じゃないのか?


その横たわる焦げ茶の巨竜を見てカインの頭は大混乱に陥った。

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