57.虚偽申請
「あら、カイン君~!!」
試練を終え、何とかランダルト王城へ戻って来たカイン達。
その報告をする為にクロムウェルとゲルヴァが待つ貴賓室へと向かう。そこには偶然先に報告に訪れていたローゼン・ファインズの一行がおり、カインを見つけた団長のローゼンティアが嬉しそうにその名前を呼んだ。
「ロロ、ローゼンティア様あぁ……、こ、こんにちは……」
ランダルト王城内と言う場所もあり緊張するカイン。
「こんにちは、カイン君、きゃは!」
嬉しそうに話すローゼンティアに聞こえるように『女神の剣』であるレンゼントが大きな声で言う。
「姫、Aランク魔獣討伐三体、無事確認して頂きました。試練通過です」
「!?」
その言葉を聞いたシルファールが驚いた顔をする。
(えっ、三体?)
「ダ~メですね、これでは!」
ちょうどその時、試練の紙を提出していたクララにチェックをしていたゲルヴァが大きな声で言った。クララが驚いた顔をして言う。
「どうしてですか? ちゃんと青色に染まった紙ですが……」
ゲルヴァがその紙をつまんでひらひらさせながら言う。
「一枚じゃん。足らないわよ~、あと二枚!!」
「えっ!! 一体じゃないの?」
ゲルヴァがやれやれと言った顔をして言う。
「ど~うして一体になるのかなあ? ちゃんと説明会で言ったわよねえ、三体って」
ゲルヴァはクララ達を見下した顔で言う。それを聞いたクララは直ぐに理解した。
――謀られた
どういうつもりか知らないが、最初からガーデン王国に試練を通過させるつもりではなかったという事だ。クララは歯をぐっと食いしばってゲルヴァを睨む。それを見たカインが前に出て言った。
「あ、あのお、その説明会の夜に、お、お城の人が来て、三体から一体になったって……」
バン!!
「えっ?」
前に来て話を始めたカインの頬をゲルヴァが殴った。
「カ、カイン!!」
ゲルヴァがカインに言う。
「ツバが飛んだわ。汚い。何て汚らわしい!」
殴られた頬を押さえながら混乱するカイン。シルファールとローゼンティアが声を上げた。
「唾が飛んだって、それで暴力をふるう理由になりますか!!」
「いきなり殴るなんて、そんな野蛮な……」
それを聞いたゲルヴァが言う。
「そもそもガーデン王国の皆さん、あなた達不正行為なんですよ。これ」
そう言って一枚だけの青い紙を皆に見せる。
「虚偽申請。本来ならこのような不正行為は重罪。このまま皆さん、牢獄へ行きますか?」
「ろ、牢獄!?」
その言葉を聞いて焦るシルファール。いくら一王国の姫君であろうが、他国で罪をなすりつけられれば罰を免れる術はない。シルファールは直感でその危険さを感じた。それを見ていたクロムウェルがやって来て言う。
「まあまあ、いいじゃないか。ゲルヴァ。姫達も聞き間違えたのだろう。ここは私に免じて許してやってくれないか」
「クロムウェル様……」
ゲルヴァはクロムウェルに一礼するとクララ達に言った。
「寛大なクロムウェル様の温情により今回の不正行為は不問とします。しっかりと感謝するように」
そう言われたクロムウェルの顔がドヤ顔になる。カインが言った。
「ひとつ、いいですか?」
「なんだね?」
クロムウェルが答える。
「魔獣の森で竜の子供が木に打ち付けられていました。ヒト族がやったと言っています。この国にそんなことをする人がいるんでしょうか?」
いつもの内気なカインからは想像ができない程堂々と言った。それを聞いたクロムウェル達が焦りの色を見せる。
「そ、そんな恐ろしいことをするはずがないじゃないか? まあ、そもそも邪竜など死に絶えても問題ないはずだろ……?」
「な、なんだと!!!」
その瞬間、カインから強烈な竜の覇気が放たれた。目には見えないが、熱く強い覇気。そこにいる誰もがその強力な力を感じ驚いた。
「な、何を言っているんだ、お前は、無礼者!! た、立ち去れ!!!」
クロムウェルはカイン達に退去命令を出す。それを聞いた周りの兵士達がララ・ファインズの一行を外へと連行する。クロムウェルが言う。
「お前達は失格だ。良心があるならばすぐに国に帰るが良い!!!」
クロムウェルは引きつった顔で外へ連行されるカイン達に言った。
「ああ、むしゃくしゃする!!! 何だ、あのガキは!!!」
クロムウェルは冒険者達が立ち去った後、傍にいるゲルヴァに言った。ゲルヴァが答える。
「無礼者ですねえ~。平民のくせに」
「本当にそうだ。何であんな奴が魔獣の森から帰って来れたんだ?」
訝るクロムウェルにゲルヴァが言う。
「ローゼンティア様のローゼン・ファインズと途中から合流したようです。またその前にはシリカ・ファインズに助けられたとの報告も……」
「ふんっ、運良く一流ファインズに助けられたのか……、しかし邪竜のことを知っていたとはな」
ゲルヴァが頷いて言う。
「ええ、あれはビ~クリしましたわ。あいつら邪竜に会ったようで……」
「まあ、それでもあの結界は破れないだろうがな。くくくっ」
「邪竜はローゼン・ファインズの面々に討たれたんでしょうね、恐らく」
「レンゼントか? まあ、そんなところだろう」
クロムウェルは少し不満そうに言った。続けてゲルヴァに尋ねる。
「で、どのくらい減ったんだ? 冒険者は」
ゲルヴァが気味の悪い笑みを浮かべて答える。
「半分弱、ほどです」
「たったそれだけか? 意外と少ないな」
「そうですねえ、魔獣強化や邪竜の罠などを仕掛けた割には……」
クロムウェルが笑って言う。
「ただ心配要らない」
「と、仰りますと?」
クロムウェルがゲルヴァの顔を見て言った。
「出現したんだよ、新たな竜が」
「新たな竜?」
「ああ、そうだ。これから試練に残った連中とお前でその竜の討伐に向かって貰う。よいな?」
「私めに? クロムウェル様はご出陣ならなりませぬか?」
ゲルヴァの答えにクロムウェルが笑って言う。
「見つかったんだよ、それとは別に本物の暗黒竜が」
「な、なるほど、それはそれは。承知しました……」
ゲルヴァもにやっと笑って答えた。




