52.Aランク魔獣
ランダルト王国で開催中の世界選抜会議。
その更なる選抜の為に行われる試練・生存試練。魔獣の森でAランクの魔獣を討伐し城へ戻るのがクリア条件。
試練とはいえ命を懸けたその熱き戦いが始まった。
「な、何これ!?」
王城の魔法陣から転移したカイン達は目を開けてその景色に驚いた。
それは見上げてもその先が見えない程の巨木。幹は大人数名で囲まないと届かないほど太く、同じ様な木々が辺り一面びっしりと森に茂っている。
地表に生える植物も大きなものばかりで、葉一枚で子供ほどの大きさもある。聞こえてくるのは奇怪な怪鳥の鳴き声と、遠くから響く魔獣か何かの遠吠え。カインが震えながら言った。
「ななななな、何ここ? な、なんかみんな大きいんだけど、こ、怖いぃ!!」
クララが答える。
「た、確かに普通の場所じゃないわね……」
さすがのクララもその雰囲気に飲まれそうになっている。スミレはいつの間にかに見つけ出したふわふわの植物を枕に眠っている。
その時少し離れた場所から音がした。
カサカサッ
「きゃ!!」
シルファールが声を出して驚く。
「ぎょぎゃぐわああああ!!!!!」
それ以上に大きな声を出して驚き逃げるカイン。
皆が構えて見ると、頭が三つある小さな蛇の魔物が威嚇しながら現れた。小さいながらも鋭い牙を向いて今にもこちらに飛び掛かろうとしている。落ち着きを取り戻したカインが剣を抜いて蛇の魔物を斬り捨てる。
「よよよ、良かったですぅ。この程度の魔物で……」
そう言うカインの顔を皆が青い顔をして見つめる。カインが言う。
「ん? どうしたのですか? もう魔物は倒しましたよ」
それでも皆がカインの上に目線を合わせて震え始める。ようやくその異常に気付いたカインがゆっくり振り返る。
「へっ?」
そこには頭が三つある見上げるような巨大な蛇がこちらを睨んでいた。
「ぎょぎゃぐわあああぎょぐげげげっ!!!!!」
カインはその凶悪な顔つきの蛇を見て泣きそうな叫び声を上げる。先程の小さなヘビの親のようであった。
「下がって!!」
クララの指示で一斉に魔物と距離を取る一行。
「カイン、早く!!」
ひとり取り残されたカインが四つん這いになってやって来る。すぐにマリエルが持っていた魔物資料で確認する。
「あったわ! わっ、これAランクの『ナーガ』だよ!!」
それを聞いたシルファールが魔法を唱える。
「Aランクなら上等よ!! フレイムファイヤー!!!!」
シルファールが差し出した手から灼熱の業火が放たれる。その動きに合わせる様にナーガの頭のひとつが大きな口を開けてそれを吸い込む。
「う、うそお? 吸い込んだ?」
驚くシルファール。そして次の瞬間、その口からシルファールに向けて同じ業火が吐き出された。
「きゃ!!」
「氷壁!!!」
すぐにカインがシルファールの前に氷の壁を作りその業火を防ぐ。氷壁は業火と共に蒸発してなくなる。
「ひ、姫様! 大丈夫ですか?」
カインがシルファールに声を掛ける。
「あ、ありがとうございます。カイン様ぁ」
シルファールがお礼を言う。
「良かった、無事で」
それを聞いたシルファールはもはや戦闘どころではなくなってしまった。
「カイン様に助けて頂いて、カイン様と一緒に戦って、ああぁぁ……」
シルファールは両手で顔を押さえながらへなへなとその場に座り込む。
「ひ、姫! どうしました!?」
クララが声を掛けるも完全に自分の世界に入ってしまったシルファールには届かない。
ナーガはもうひとつの顔から今度は氷結のブレスを吐き出す。それを見たカインが右手を前に叫ぶ。
「爆炎!!!」
ドオオン!!
氷結のブレスを先程のお返しにと蒸発させるカイン。そして直ぐにスミレに叫ぶ。
「スミレちゃん、あのヘビの頭、ひとつお願い!!!」
いつの間にか寝袋で寝ていたスミレが出てきて、何やらもぞもぞしながらカインに言う。
「カ、カイン様あぁ……」
「はひ?」
突然名前を呼ばれて驚くカイン。スミレが照れながら言う。
「お、お願いです……、こ、今度、その……、私をおんぶしてくださいっ!!!」
「へっ? お、おんぶ? い、いいけど、そんなことくらい……」
その瞬間、スミレから強烈な覇気が放たれる。
「カ、カイン様の、おんぶううううううう!!!!」
そう言って剣を構えナーガの首へと跳躍。そして叫ぶ。
「風神一刀流・風ガ閃光!!!」
一瞬でナーガの首の後ろへと移動し、そして遅れてその首がボトリと落ちる。
「す、凄い!!」
クララが叫ぶ。
「Aランクの魔物の首を一瞬で落としちゃうとは!!」
マリエルも同調する。
しかし残ったナーガの真ん中の頭が大きな牙を向いてクララに襲い掛かる。
「だ、団長おおおおおお!!!!」
それを見たカインが剣を抜き、ナーガの首へと飛び掛かる。
「はあああ!!!」
ザン!!!
真ん中のナーガの首がカインの一太刀で落とされる。間入れず返す刀で叫ぶ。
「団長に手を出すなあああ!!!!!」
そう言ってナーガの巨体に強烈な一撃を撃ちこむ。
ドン!!!
剣撃と剣圧で大きく体を斬られたナーガその場に倒れ込んだ。マリエルが言う。
「す、凄い剣撃。カイン君、竜の力、だいぶ使いこなせて来てるんじゃない?」
クララが答える。
「そ、そうだね。でもあんまり人の名前を叫びながらってのは……、ちょっと恥ずかしいよ」
クララはナーガを倒してゼイゼイと肩で息をするカインを見ながら言った。マリエルが急ぎ持っていた紙をナーガに張り付ける。真っ白だった紙が青く染まって行く。
「これでいいのかな?」
完全に青くなった紙を大事にしまう。
「こ、これ僕がやったんだよね……」
ナーガの隣で震えるカイン。
「そうだよ、ありがと。カイン。これで一応目的達成なのかな?」
クララがカインの背中を軽く叩きながら言った。
「あ、は、はい!」
カインはまだ震える手で剣を収めながら答える。
その時、遠方より大きな男の叫び声が響いた。
「ぐわああああああ!!!!」
「ロ、ローゼンティア様、わ、私の後ろに早く!!」
腹部に大きな怪我を負ったレンゼントがローゼンティアに言う。
「レンゼント、無理は、無理はしてはいけません!!」
カイン達から少し離れた場所にいるローゼン・ファインズは、山のように大きなイノシシの魔獣ワイルドボアと凶悪な邪気を放つ邪竜と対峙していた。




