47.終わりの始まりへ
世界選抜会議の為に船でランダルト王国へ移動中であったカイン達。その船を真っ白な竜、光神竜が急襲した。そしてカインに戻ったその姿を見て叫ぶ。
「久しぶりだな、強よ!!!」
船の上空で羽ばたきながらカインに言う。カインが震えながら答える。
「い、いや、知らないですうぅ!! は、初めてですよぉぉ、真っ白い竜なんて……」
そんなカインの声も、波の音や光神竜の羽ばたく音によってかき消される。光神竜が言う。
「全力で行く!! お前が避ければ船が沈むぞ!!!」
「ええっ!!!」
光神竜がそう叫んで強力な白い光線を口から放つ。一直線にカインを襲う白い光線。
(な、なにあれ!? こ、怖いいぃ!! で、でもここで逃げたら……)
カインは後ろにいるクララ達の不安な心を感じる。
――僕は強くなりたい!!
そして右手を前に出す。
「爆炎っ!!!!」
ドオオオン!!!
激しい爆音と煙が飛んできた光線に当たって巻き起こる。
(来る!!)
カインは剣を抜き、その煙の中を真っすぐ自分に突っ込んでくる光神竜に向けて振り抜いた。
ガーン!!!!
カインの剣と光神竜の鋭い足の爪がぶつかり鈍い音が響く。その衝撃で大きく揺らぐ船。光神竜はすかさずもう一本の足でカインを攻撃するが、カインは左手から氷結を発し足を凍結させて防御する。
「はああああ!!!」
間入れずカインが剣を振り抜く。
ガン!!
それを必死に翼で守る光神竜。それでも続くカインの剣撃に光神竜はたまらず上空へと逃げ始める。
「逃がさない!!」
勝負どころだと感じたカインが素早く跳躍し光神竜の頭上に移動。
ガン!!!!
そこから竜の頭に向けて強烈な一撃を食らわす。
そのまま勢いよく甲板に叩きつけられる光神竜。カインがその倒れた光神竜の上に降り立ち剣を突き付ける。光神竜は倒れたまま笑って言った。
「がははははっ、さすがは強だ! 昔を思い出すぞ!!」
カインは剣を突き付けながら言う。
「ま、まだやるのなら!!」
光神竜が答える。
「もういい、十分だ。やっぱりお前は強い、強よ」
そう言うと光神竜から戦闘のオーラが消え去る。そしてカインがその体から降りると、ヒト族への姿へと変わった。その姿は筋肉質で中年の渋さが滲み出るちょいワル親父と言った感じである。
「光さん!!」
「光おじさん!!」
ハクとマリが走り寄って抱き着く。
「マリ、大きくなったな。ハクはまた変な男に騙されていないか?」
二人を抱きながら光神竜が言う。
(ついこの間まで騙されていたけどね……)
クララはその言葉を聞いて少し笑った。
光神竜はカインの元へやって来て挨拶をする。
「カインとか言ったな、私は光神竜。強達とは群れは違ったがよく交流をしていた。喧嘩もよくしたぞ。がはははっ!!」
「そ、そうですか……」
そう言って大声で笑う光神竜に戸惑うカイン。しかしヒト族になっても消えない威圧感にカインは少したじろぐ。
「で、これからどこへ行くんだい? 強はやはりもういなくなったのか?」
カインは強神竜に色々と説明をした。
「なるほど、暗のやつが闇に飲まれたか。ヒト族が厄災だと言う噂を聞いたことがあるが、暗が本当に暴れたと言うなら納得がいく。強もいなくなっては猶更手が打てんだろう」
黙り込むカイン達に光神竜が言う。
「本来ならば私が力を貸すべき事態なのだろうが、実はこちらにも色々問題があってな」
「問題?」
ハクが言う。強神竜が続ける。
「ああ、うちの群れにいた黒竜がもう何年も前から行方不明なんだ。私はそれをずっと探している。暗のように闇に飲み込まれることはないのでどこかにいるはずなんだが……」
「黒さんが?」
ハクが驚いて言う。
「ああ、いなくなっちまった。お前ら何か知らないか?」
ハクとマリは首を横に振って応える。
「そうか、久々に強の気を感じたんで飛んできたのだが、やはり知らぬか。まあ、お前達に会えたのは嬉しかったよ」
そう言って光神竜はマリの頭を撫でる。そしてカインに言う。
「カイン、今はまだ何もできぬが、いずれきっとお前の力になろう。それでは」
そう言って再び竜の姿に戻り大空へと飛び去って行った。
シルファールが嬉しそうに言う。
「さすが竜のお力を持つカイン様。次々と竜のお友達が集まって参りますわね」
カインが青い顔をして答える。
「りゅ、竜のお友達!? い、いや、あ、あんまり集まって貰っても、その、こ、困るんですが……」
シルファールが言う。
「皆さん、見えてきましたよ。あれがランダルト王国です!」
カイン達がその指差す方を見つめる。
「す、凄い……」
それは大きいと思っていたガーデン王国よりも遥かに立派で大きな国際都市であった。
ランダルト王国の港には各国から来た大きくて立派な船がたくさん停泊していた。乗る時はその大きさにびっくりしたガーデン王国の船だったが、こうして他国と並ぶと小さく見えるほど立派な船ばかりである。
船を降りるとすぐにランダルト王国の使いの者が現れ、丁重に挨拶をした後馬車に乗せられた。街中を走る馬車。そこから見える景色に驚くカイン。ガーデン王国よりずっと発展していて、人の往来も活気もある。
やがて大きくて立派な宿屋の前に泊まる馬車。その建物の豪華さにカイン達は再度驚きの声を上げる。宿泊手続きをする一向に御者が明日からの予定を伝える。
「明日、クロムウェル様主催の歓迎会が開かれますのでご参加頂きますようお願い申し上げます」
「クロムウェル様?」
少し首を傾げるカインにクララが小声で説明する。
「英雄ヴィンセントの子孫だよ!」
「ああ、そうだった!」
御者は表情を変えずに一度頭を下げると宿屋を出て行った。クララが皆に言う。
「じゃあ、明日までは自由行動ね。迷子にならないように気を付けて」
シルファールがカインに言う。
「カイン様、よろしければ私と一緒にお食事にでも……」
カインがそれを首を振って言う。
「あ、あ、ご、ごめんなさい! ちょ、ちょっと買いたい物があるんで……」
「そ、そうですか……」
シルファールが少し頬を膨らませ残念そうに答えた。クララはそれを黙って見つめた。
一方、ランダルト王国の特別室。
そこでは窓から見える港に集まる各国の船を見ながらクロムウェルがひとりつぶやく。
「集まって来たようだね、各国の皆さん」
そう言ってテーブルに置かれた大きなグラスに入ったワインをひとくち口に含む。
「では、始めましょうか。終わりの始まりを。そして、ようこそ。新たな秩序へ」




