46.光神竜
「ま、まだ国軍は来ないのか!!」
「ま、まだのようです!!」
グゴオオオオオオオ!!!!
とある国のとある街。
突如現れた竜の襲撃によってその街は全壊しかけていた。真っ黒な体、剣も矢も通さない強靭な皮膚。そして口から吐かれる闇のブレスは地方の街を破壊するには十分な威力であった。
「あ、あれは!! 三勇者様!!!」
そこに剣を持ったひとりの勇者が現れる。
「私が相手だ、暗黒竜!!! これ以上好き勝手はさせぬ!!!」
三勇者のひとりである男が剣を持って暗黒竜に向かう。
「ゴオオオオオ!!!」
「うわああああ!!!!」
しかし斬りつけた剣は折れ、吐き出された闇のブレスの前に勇者の体は一瞬で灰になって崩れ去った。それを見た街の人達が叫ぶ。
「ゆ、勇者様が一瞬で……、も、もうダメだあああ!!!」
その絶望的状況を見て我先と逃げ出す街の人々。暗黒竜は咆哮するとそんな街の人達へ背後から真っ黒なブレスを吐き出した。
それを少し離れた高台から眺めるひとりの男。
街が闇のブレスのよって灰になって行く様を笑みを浮かべながら見つめる。そしてひとりつぶやく。
「ああ、いいねえ、私の可愛い黒竜よ。間もなく本物が見つかるだろう。そうしたら私と一緒にすべての竜を殺しに行こうね」
男は街をすべて破壊し尽くした竜に対して手で戻れと言った仕草をする。それに反応して暴れていた竜が大人しくなりこちらへ向かって飛び始める。男が言う。
「さあ、明日からは世界選抜会議だ。そろそろ戻りますか、ランダルト王国へ」
男は自身の目の前まで戻って来て頭を下げて座る真っ黒な竜の背に乗ると、そのまま大空へ消えて行った。
「カイン君、ご飯だよ」
ガーデン王国の船に乗り世界選抜会議が行われるランダルト王国へ向かう船上。そこにひとり立つカインにマリエルが呼び掛けた。
「ん? メシか」
「あ、雷牙君だった? そうだよ、ご飯。おいで」
マリエルに呼ばれたカインは一緒に船の食堂へと移動する。食堂では既に皆が待っていて、その大半が入った瞬間雷牙だと気付いた。
「スミレちゃん、ご飯食べるよ。起きて」
食堂の椅子に座りながら眠るスミレをマリエルが起こす。
「いただきます」
食事は船上とは言え中々バランスよく調理されたものであった。カイン達代表への支援は王国が可能な限り行ってくれた。
がやがやと騒ぎながら食べ始める一行。そんな中、シルファールは黙々と食事するカインをずっと見つめる。それに気付いたカインがシルファールに言う。
「シルの嬢ちゃん、そんなに見られてちゃ、メシが喉通らねえ」
そう言われてもずっとカインを見つめるシルファール。カインが言う。
「おい、聞いてんのか?」
はっとするシルファール。
「えっ、求婚? そ、そんなぁ、……受けますわ!」
「おい、誰もそんなことひと言も言ってねえぞ!」
怒るカインにシルファールが照れながら答える。
「ひと言? 愛の言葉はひと言で十分。シルは幸せでございます」
頭を抱えるカインを見てマリエルが言う。
「本当にカインの前だと人が変わるわよね」
クララ達が苦笑する。そして照れているシルファールにクララが真面目な顔をして尋ねた。
「姫様、ひとつお聞きしたいことがあります」
「はい、何かしら」
「何故各国の猛者達を集めた上に、どうして更にそこから選抜を行うのでしょうか?」
シルファールが水をひと口飲んでから答える。
「ええ、それはですね。少数精鋭で挑まなければならないからです」
「少数精鋭? 何故ですか? 大勢で一気に叩いた方が良いような気がしますが」
マリエルが言う。
「そうですね、普通の敵ならそれがいいでしょう。ただ相手は厄災のひとつ。並みの冒険者では歯が立ちません」
「つまりどういうことだ?」
カインが言う。
「はい、当初はそう言った意見もあり希望した冒険者達で討伐に出掛けたこともあったそうです。ただ、全滅しました」
「えっ!?」
「全滅かよ」
一同に驚きの表情が浮かぶ。シルファールが続ける。
「ええ、生半可な冒険者では暗黒竜には勝てず、勝つどころか死傷者を増やす一方。ヒーラーもいましたが回復が追い付かず地獄絵図だったそうです」
「暴走した暗ニイは手が付けられなかったからね」
話を聞いていたマリがひとりつぶやく。隣にいたハクも頷く。
「暗ニイ?」
シルファールが首を傾げる。マリエルがシルファールに言う。
「それで自分の身は自分で守れる強者のみで行くんですね」
「ええ、それなら戦闘も退却も全てに指示がしっかりと届きます」
クララが言う。
「そうか、覚悟はしていたけどそんなに強いんだね。暗黒竜って。雷牙、勝てそう?」
カインが答える。
「さあ、分からねえ。ただ竜の力を持つのは俺じゃなくてカイン。あいつの力を信じてやってくれ」
シルファールは途中から話の意味が分からない部分もあったが、目の前に喋るカインがいるだけでそんなことはどうでも良く幸せであった。
ドォーーーーーーン!!
「きゃあ!!」
その時突然船に大きな衝撃が起こる。甲板にいた船員が慌てて報告にやって来る。
「竜が、真っ白な竜が現れました!!!」
それを聞き急ぎ甲板に出る一行。空にはその言葉通り真っ白な竜がこちらを見て羽ばたいていた。クララが言う。
「な、何あれ? 竜、だよね」
「ああ」
カインが答える。その真っ白な竜がカインを見て言う。
「お前か? 強の力を貰ったって奴は?」
「!!」
それを聞きカインの顔が引き締まった表情となる。そして答える。
「ああ、そう言うことだ」
竜が言う。
「私は光神竜。強は私の古き友人。よくやり合った。お前の力、試させて貰うぞ!!」
マリと白がその姿を見て叫ぶ。
「光さん、光おじさん!!」
「知り合いか?」
カインのことがに二人が頷く。ハクが大きな声で言う。
「光さん!! カインは本物よ!!!」
光神竜が答える。
「それを試すんだよ!!!」
「下がってろ!!」
カインが皆に言う。
「グゴオオオオン!!!!」
光神竜が口から光の波動を放つ。真っすぐカインに向けて飛ばされる白き光線。カインはそれを剣で跳ね返す。そして大きく跳躍して光神竜に斬りかかる。
ガン!!
それを硬い翼で受け止め跳ね返す光神竜。カインは船上に降りて直ぐに爆炎と氷塊で攻撃を続ける。しかしその攻撃も光神竜は同じように硬い翼で防いでいく。
(ほお、炎にも認められたか……)
ことごとく攻撃を防がれたカインが思う。
(強ええな、こいつ……)
「今度はこちらから行くぞ!!」
光神竜はそう叫ぶと一直線にカインに向かって飛んで来る。
「させるか!!!」
ドオオン!!!
カインはそれを爆炎で反撃する。しかし光神竜はその炎の中を突っ切って更に向かって来て、カインにぶつかりそのまま後方へと吹き飛ばした。
「カ、カイン!!」
クララが叫ぶ。吹き飛ばされたカインが上半身を起こして言う。
「え、えええ!? な、なんで、船の上で……、げっ、なななな、なんで竜がいるの!! えっ、攻撃? まさか戦ってるの!!! ひょぎゃあああ!!!」
「あ、カインに戻っちゃった……」
クララとマリエルが頭を抱える。しかしそんなカインを見た光神竜が言った。
「ようやく出て来たな、強よ」
そう言って更なる竜のオーラを出した光神竜にカインは震えた。




