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39.カインの指輪

魔族に変化したディレンがクララをさらって飛び立つ。一瞬の出来事に皆が焦る中、白神竜が声を上げる。


「私が追う!!!」


そう言ってハクが竜に変身して追いかけようとする。それをカインが手で止めた。



「その怪我じゃ飛行は無理。僕が行きます」


そう言ってはるか遠くに消え去ろうとしているディレンを睨む。その姿に一瞬どきっとする白神竜。すぐにカインに言った。


「これを、食べて」


そう言って人の姿に戻り、青白い球を懐から取り出してカインに差し出す。


「私のギフト。氷の力がつくわ」


白神竜はそう言ってギフトをカインに手渡した。


「ありがとうございます。頂きます」


カインはギフトを口に入れすぐに追いかけようとする。すると今度はフリオニールがカインを呼び止める。



「待ってください、カインさん。これは兄の呪いを解く指輪です。これをつければ呪いが解けます」


そう言ってフリオニールはカインにふたつの指輪を渡す。そして言う。


「これはカインさんと、そしてクララさんの分。よろしくお願いします!!」


カインはひとつを自分の指にはめ、そして残りをポケットに入れる。そして壊れた王城の壁から遠くを見つめ『行ってくる』と言って壁から飛び降りた。


「えっ!? ここから飛び降りて行った!?」


驚くフリオニール達。壁から下を覗くとすでにカインは地面に降り、城外に向かって走り始めている。白神竜が言う。


「四体の竜のギフト持ちだよ。その力を全部出せれば最強だよ、彼」




クララを抱きかかえて空を飛ぶディレン。カインはそれを目で追いながら高速で走りる。そして草原に入ったところで周りの安全を確認し、右手をディレンに向けて叫んだ。


「落ちろおおお!!!」


ドオオオン!!


「ぎゃああ!!」


ディレンの背中で起こるカインの爆撃。

突然の激痛にディレンが悲鳴を上げて地面に落ち始める。カインは素早く宙に飛び、投げ出されたクララを救出。そして地面に降りるとそっと彼女を横に寝かせた。

ドンと音を立てて地面に落ちたディレンがカインを睨んで叫ぶ。



「き、貴様あああああ、殺してやる!!!!」


怒り狂ったディレンがカインに特大魔法を放つ。


ドンドーーーーーン!!!


激しい爆炎がカインを包む。大声で笑うディレンが立て続けに爆炎を放つ。


ドンドンドンドーーーーーーン!!!!


「ぎゃははははっ、死んだ、死んだだろおおお!!! ……えっ!?」


爆炎の粉塵が収まるとそこには全く無傷のカインがいる。ディレンが真っ青な顔をして言う。



「なななな、何でだ? 俺はアークデーモン。魔族でも最高クラスの魔力を持つはずだぞ……」


魔神竜ましんりゅう


「へ!?」


カインがディレンに言う。


「魔神竜のギフト。魔法耐性を得た。僕にその程度の魔法は効かない」


「そ、そんなことが……」


ディレンが膝をついて言う。


「く、くそおおおおおおおおお!!!!!」


怒りと恐怖に狂ったディレンが拳を上げてカインに向かう。カインが言う。



「じっちゃん、確か最低な奴だったよなあ……」


拳を上げ目の前に迫るディレン。カインも拳を構える。


「女をさらうって奴はあああ!!!!!」


ドオオオオオオオオン!!!!


「ぎゃああああ!!!」


カインの拳を顔面に受けたディレンはその勢いでぐるぐると回転しながら宙を舞い、そして血を吹き上げ大きな音を立て地面に落ちた。



「カインーーーーっ!!!」


そこへフリオニールや白神竜達がやって来る。魔族の姿で倒れる兄の姿を見てフリオニールが涙を流す。


「に、兄さん……」


殴り終えたカインがゆっくりとディレンの近くに寄る。そして腰をかがめて右手を胸の上に乗せて気合を入れた。


「はあっ!!」


ディレンの体が衝撃でドンと飛び上がり、そこから黒い瘴気が立ち上がる。フリオニールが言う。


「これは?」


「魔族の瘴気。やがて元に戻ると思います」


フリオニールが兄を見ると、徐々に体に人としての生気が戻り始めた。

カインはすぐに横になっているクララの元に走り寄る。そして苦しそうな顔をするクララに解呪の指輪をはめた。


「カイン……」


そして顔の表情が和らいできたクララがカインを見て言う。



「……私ね、女だけど頑張って団長やって来たんだ。でも、やっぱりこうやって男の子に助けられるって言うのは嬉しいもんだね、涙出ちゃうよ」


「団長……」


クララの泣く顔を見てカインが照れて顔を赤くする。クララが言う。


「しかも何だい? 指輪まで持って来て。これじゃまるでプロポーズされているみたいじゃないか」


「え、ええっ!?」


クララの言葉に逆に驚くカイン。クララが指にはめられた武骨な指輪を見て言う。


「でもこれじゃあ雰囲気出ないなあ。いずれは、ちゃんとしてのを買ってよ」


「ええっ? だ、団長、それって……」


顔を真っ赤にしてカインが慌てて言う。焦るカインにクララが笑って言う。



「あははははっ、冗談よ。びっくりした?」


「お、驚かさないで下さいよ。団長おおおぉぉ……」


カインは無邪気に笑うクララをとてもかわいいと思った。




「カインさん……」


立ち上がったカインとクララにフリオニールが声を掛ける。その肩には兄のディレンを抱えており、その姿はすっかりヒト族に戻っていた。フリオニールが言う。


「カインさん、兄には私がしっかりと罪を償わせます。色々とありがとうございました」


「あ、は、はい、お願いします……」



ボロボロになったディレンが目を覚まし、そしてカインに言う。


「私は、私は竜の力を、スキルを持つ男ではなかったのか、何故……」


白神竜が言う。


「スキル『重複』のこと? あなた違うわよ」


「えっ!?」


ディレンが驚いた顔をする。白神竜が言う。


「あなたのスキルは『重ね着』。戦闘中に服が二枚着れるってスキル。まあ、そんなの無くっても誰でも重ね着ぐらいできるけどね」


「う、嘘だ……、国のスキル鑑定士にしっかりと確認させたのに……」


「大方、怖くて嘘しか言えなかったんじゃないの?」


クララがやれやれと言った顔で言った。それを聞き泣き崩れるディレン。


「あとは私が見ておきます」


そう言って苦笑するフリオニールに後を任せる。クララが言う。


「じゃあ、帰ろっか」


「はい!」




「あ、あのおぉ……」


帰ろうとするカインの元にリアナが走り寄って来る。


「リアナさん……」


「あのぉ、色々ありがとうございました」


頭を下げるリアナ。カインが言う。


「いえ、そ、そんなお礼を言われることなんて……」


「私も戻ったらしっかりとした罰は受けるつもりです」


「リアナさん……」


リアナがカインを見つめて言う。


「でも、その前に……」



チュッ!


「えっ!?」


「ああっ!?」


リアナは背伸びしてカインの首に腕を回し、頬に口づけをした。驚く一同。リアナは顔を赤くして言う。



「お、お礼です! ありがとうございましたぁ!!!」


そう言って顔を両手で押さえながらリアナは走り去って行った。



「カカカカ、カイン様とおおお、ちゅっ、ちゅうううぅぅ……!?」


シルファールが目を回して倒れる。



「ちゅ、ちゅ、ちゅ、ちゅうううううう……」


カインも顔を真っ赤にしてその場に倒れる。


「お、おい、大丈夫か!! カイン!!!」


クララの声が響く。





竜襲来の依頼を終えガーデン王国へと帰る一行。

その船上でカイン達にシルファールが言う。


「カイン様、これから忙しくなりますわ」


驚くカインが尋ねる。


「えっ、どどど、どうしてですか?」


シルファールが言う。


「通知が来ましたの。暗黒竜討伐する為の冒険者を世界中から選ぶ会議『世界選抜会議』開催の連絡が」


よく意味が分からないカインが尋ねる。


「えっ、な、なんですかそれ?」


シルファールがカインを見つめて言う。


「ガーデン王国の代表を選ばなければならなんだけど、今シルはカイン様にその代表になって欲しいと思っているの」



「ええええええええ!!!!」


船に酔って青くなっていたカインの顔が、さらに青くなった。

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