37.ハクの復讐
「白ネエええええ!!!」
レミット王城に戻ったカイン達。上空から王城を攻撃する白神竜を見てマリが叫ぶ。しかしそんな叫びも虚しく白神竜は狂ったかのように王城を破壊していく。
「ぼぼ、僕がやらなきゃ。で、でも、ど、どうしよう、あ、あれ、すっごく怒ってるよおおぉ……」
カインが怒り狂う竜を見て怯える。その間にも地上や王城にいる魔導士隊からは魔法攻撃が続けられる。その中には竜討伐隊に加わらなかったエリンの両親の姿も見える。クララが言う。
「私が何とかする!」
そう言って木箱の中からお菓子を取り出し口に入れる。
「もぐもぐ……、んんっ!? ア、アンチカーズぅぅ!!!!」
クララがそう叫ぶとその体から一筋の光が天に向かって放たれる。そしてそれは天に届くとまるで光の雨の様になって一帯に降り注いだ。
「綺麗……」
それを見たマリがつぶやく。そして異変はすぐに起こった。
「あ、あれ? 魔導士隊の人達が!!」
カインが叫ぶ。皆が見るとその光の雨を受けた人達の目に黒色が徐々に戻って行く。そして魔法攻撃をやめ、会話をし、涙を流しながら抱き合い始めた。
「呪いが、解けたんだ……」
クララがひとりつぶやく。
「すすすす、凄いですううぅ、団長おおお!!! これってやっぱりマリちゃんの魔力強化のお陰ですか??? もしかして魔法の選択もできるようになったんですかああ??」
目を輝かせてカインがクララに尋ねる。
「いや、偶然」
クララはさらっとそれを否定した。
王城最上階を半壊させた白神竜がその場所へ降り立つ。
あえてヒトの姿に戻り、そしてそこにいるディレンの前に対峙する。ディレンの近くには縄で縛られたレミット王国の貴族令嬢やシルファールもいる。白神竜が言う。
「貴様を、この私を弄んだ貴様を、この手で討つ日をどれだけ待ったことか!!」
ディレンが少し引きつった表情で言う。
「あーあ、僕のあげた大切な指輪、外しちゃったんだね」
白神竜の顔が怒りに染まる。
「貴様っ!! 許さん!!!」
白神竜が怒り共にディレンに突入する。ディレンが右手を差し出して叫ぶ。
「黙ってやられるか!!! その竜の力、俺によこせええ!!!」
ボン!!
白神竜の目の前で爆発が起こる。
「こんな攻撃、私に効くと思ったか!!!」
攻撃を受けても全く怯むことなくディレンに襲い掛かる白神竜。それを見たディレンは腰に差した一振りの剣を抜き、そして近くにいた貴族令嬢の腕を掴んで言う。
「じゃ、じゃあ、これはどうだああ!!」
「きゃあ!!」
ディレンは掴んだ女達の腕を引っ張り、突進してくる白神竜へと投げつけた。白神竜はそれをかわしながら進む。
「き、貴様は女を何だと思っている!!!」
鬼の形相で攻撃を繰り出す白神竜に、ディレンは持っていた剣を振り上げ斬りつけた。白神竜が腕を前に出して言う。
「そんな剣が私に効くはずが……、きゃああ!!」
白神竜の腕から真っ赤な血が吹き上がる。腕を大きく斬られて後退する白神竜。その腕からはドクドクと血が流れ落ちる。驚いた表情で白神竜が言う。
「な、なぜ? 剣は竜の皮膚には通らないはず!?」
驚き戸惑う白神竜にディレンが言う。
「これだよ」
そう言って手にした剣を見せるディレン。白神竜にはそれが何か理解できない。ディレンが言う。
「竜殺しの剣、お前ら竜族の天敵よ」
その名前を初めて聞いた白神竜が驚いて言う。
「そ、そんなものがあるのか!? くっ、だが当たらなければ意味はない!!!」
そう言って再びディレンに攻撃を開始する白神竜だが、初めて『攻撃をされる』という恐怖から動きに先程までのキレがない。魔法も剣術も人並み以上の教育を受けたディレンが笑いながら剣を振るう。
「そんなに怖がってちゃ、動きが鈍るぞ。ぎゃはははっ!!」
徐々に体に増えて行く剣の傷。白神竜は一旦後ろに下がりディレンに言う。
「だったら、だったらもういい。すべてを破壊して終わらせてやる!!!!」
白神竜は再び元の竜の姿に戻り、大声で叫ぶ。
「氷結大塊!!!」
竜の姿に戻った白神竜の咆哮が響く。すると城の上空に巨大は氷塊が現れ、それがみるみるうちにその城よりも大きくなっていく。その大きさは城を一撃で破壊するほどのもの。それを見たディレンが驚いて言う。
「や、やめろぉ。そ、そんなことをしたらすべてがぶっ壊れるぞ……」
「それでいい」
うっすらと目に涙を溜めた白神竜が静かに答える。
(う、動けない。体が、重くて……、助けて、助けて、カイン様……)
ディレンの近くで指輪のせいで体の自由が利かないシルファールが床に座り込みながら涙を流す。白神竜が言う。
「さようなら、みんな……」
その声と同時に巨大な氷塊がゆっくりと城に向けて落ち始める。ディレンが震えながら言う。
「やめろ、やめろおぉ、やめてくれぇ……」
涙を流し体を震わせ、持っていた竜殺しの剣を床にカランと落とす。頭上の巨大なそれに対して自分の持っている剣など何も役に立たなかった。ディレンはここに来てやっと、竜族の怒りに触れることの意味を理解した。
(た、助けて、助けて、カイン様ああああああ!!!!)
シルファールが心の中で再び叫ぶ。その時だった。
「やめろおおおおおおおお!!!」
ドオオオオオオオオオオオン!!!!
「えっ!?」
上空にあった巨大な氷塊。
今にも王城へ向かって落ち始めた氷塊。
それが突如起こった爆発と共に砕け散り、割れた氷片も次々と起こる爆炎によって蒸発していく。
その爆発を見た白神竜が力なく言う。
「炎兄さんの……、爆炎……?」
城の最上階まで登って来たカインが宙に舞う白神竜に向けて大声で叫んだ。
「やめろ、白!!! すぐに降りて来い!!!!」
カインの一喝を聞いて、一瞬体が委縮する白神竜。
その言葉は完全に彼女の心を貫いた。それは戦意を打ち消すには十分過ぎる言葉だった。
「炎兄さんと、強ジイに叱られちゃったよ……」
白神竜はそう力なく言うと、目を閉じて涙を流した。




