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33.晩餐会

晩餐会の夜。

カイン達はあまり気が進まなかったが、王子自ら招待してくれたこともあり参加する為指定された時間に会場へ向かった。会場に辿り着くと既に晩餐会は始まっており、カイン達に気が付いた案内係の者が笑顔で会場に招き入れた。


「えっ!?」



会場に入り目の前の光景に皆が驚いた。


「み、みんな、正装してるじゃん……」


集まっている人達はカイン達とは対照的に、男女皆しっかりとした正装で参加していた。それを見たクララが言う。


「やられたね」


会場内へ移動する一行。

今から魔物とでも戦うような場違いな服装に、否が応でも皆の視線が集まる。クスクスと失笑が起こる会場。特に身分は知られていなくても、一国の姫でもあるシルファールは恥ずかしさのあまりずっと下を向いて歩いている。


「姫様……」


それを見たカインが姫に声を掛けようとした時、後ろから自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。



「カインさん!」


振り向くとそこには最初街で会い、そして森の中で魔獣に襲われていた女の子リアナが笑顔で立っていた。肩が大きく露出したスカートが可愛いワンピースを着ており、カインを下から見つめる。驚くカインが言う。


「あ、ああ、あの、お店で会った……」


「リアナです、よろしく! そしてありがとうございました」


「えっ?」


カインは一瞬分からない顔をする。そして直ぐに雷牙の日記に森で見知らぬ女を助けたと記載があったことを思い出す。


「あ、ああ、あの、も、森で……」


「はいっ!」


そう言って笑顔でリアナは答えるとカインの腕に手をまわした。柔らかい胸の感触が腕から伝わる。



「え、ええっ、ちょ、ちょっと、リ、リアナさんんん……?」


戸惑うカインにリアナが言う。


「私、もっとカインさんのこと知りたいんです!」


それを聞いたクララとシルファールがむっとした顔をする。シルファールが何かを言おうとした時、また別の人物が声を掛けて来た。



「これはこれは、皆さん。お越し頂いて光栄です」


皆が振り向くとそこには正装をしたディレンと大臣のバックレが立っていた。

バックレはカインにべったり寄り添う部下のリアナを睨みつける。それに気付き慌ててカインから離れるリアナ。にやにやと笑う正装したディレンにクララが言う。



「今日はドレスコード無しじゃなかったのかな? こんな格好で来ているの私達だけですよ」


クララは少し怒った顔で尋ねる。ディレンが答える。


「そんなこと言いましたか、私? 貴族が集まる晩餐会ですから、正装は当然です。それともそちらの国ではそのようなマナーはないのでしょうか?」


「くっ!」


後ろでにやにやと笑うバックレ。


「それでは今日の晩餐会を心行くまでお楽しみくだされ」


そう言って笑いながら去っていくディレン王子とバックレ。



「信じられないわね」


そんなふたりを睨みつけてクララが言う。

シルファールは屈辱で体が震え必死に涙を堪えている。カインも恥ずかしさで死にそうであったが、シルファールのその姿を見て再度声を掛けようと近付く。


その時であった。急に会場のテーブル付近で小爆発が起こる。



ドン!!


「きゃああ!!!」


会場に響く悲鳴。

突然の出来事に驚き、逃げ始める人達。


カイン達がその爆発が起こった方を見ると、参加していた貴族の夫婦がふらふら体を揺らしながら魔法を唱えている。その目は虚ろ。何やらぶつぶつとつぶやいている。それを見たクララが言う。


「あれって、森の中で見た魔導士達と同じ……」


その言葉に頷く一行。

カインはまるで死者のように動き魔法を唱える魔導士への恐怖で体が震え始める。しかしクララやシルファールが魔法を唱えられないでいるのを見てあることに気付いた。


(そ、そうか。こ、ここでは、大きな魔法は使えない……、周りに普通の人達がたくさんいる……)


スミレの暴走もできない。



――女の子を守れ


カインの脳裏にじっちゃんの言葉が蘇る。


「く、くそっ!!」


カインは震える体に力を込め暴れるふたりに高速で近付き、そして背後から手刀で首を力を込めて叩いた。


ドン


「ぐっ、はっ!!」


後ろから首に打撃を受け倒れる夫婦。


その瞬間、カインを眩暈が襲う。

爆発魔法の粉塵立ち込める会場で、雷牙カインはすぐに周りの状況を確認する。そして会場の隅で動揺しおろおろしているバックレを見つけると、すぐに高速で近付き後ろから声を掛けた。



「よお」


呼ばれて振り向くバックレ。そしてこちらを向いたバックレを雷牙カインは笑顔で下から思いきり顎を殴り上げた。


ドン!


「ぎゃあああ!!!」


埃舞う中、宙に飛んだバックレがドンと音を立てて床に落ちる。治りかけていた顎が再び裂け、激痛で転がり回るバックレ。


「あ、すまねえ。間違えたわ」


「く、くぞおおお。ぐがごおごがああ……!!」



粉塵が収まった後、カインがクララの元に戻る。クララが声を掛ける。


「カイン、だよね?」


「は、はいいいいいい!!」


カインの体が震えているのを見るクララ。そして先程まで暴れていた夫婦が、床に倒れて倒れて大人しくなっているのを見てカインの頭を撫でて言う。


「よくやったよ」


頭を撫でられて顔を赤くして喜ぶカイン。

そんなカイン達の周りに、騒動が収まって安心した参加客達が集まって来て感謝を口にし始めた。



「ありがとうございます」

「戦いなんて経験もなかったので、本当に助かりました」


それを聞いたクララが一歩前に出て言う。


「私達は冒険者。これが私達の正装なのよ!!」


そう言ってクララは笑顔で着ている服を親指で指す。

周りからは拍手と感謝の言葉が溢れる。カインも下を向いて皆の感謝に応えた。



それを陰から見ていたディレンが言う。


「何だあれは? 暴走か? くそっ!!」


そして床で顎を押さえて転がっているバックレに言う。



無能者バカめ!!!」


ディレンは怒りと共に会場を去って行った。

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