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28.救援依頼

レミット王国、とある気品ある部屋。

ベッドの上に座り、両隣の美女の腰に手を回しながら笑みを浮かべる男。そしてその前で震える女。女が言った。


「そ、それはどういう意味ですか、ディレン様……」


ベッドの上で、隣の女の首筋の匂いを嗅ぎながらディレンと呼ばれた男が答える。


「どういう意味って、こういう意味だよ」


そう言って腰に手をまわしつつ美女の首筋を舐めるディレン。美女の目がとろんと喜びを表す。目の前の女が言う。


「わ、私を愛してくれたのでは……」


ディレンが言う。


「愛したよ、()()()までは」


「そ、そんな……」



悲しげな顔をする女にディレンの隣の美女が言う。


「あなたねえ、ディレン王子に一時とは言え愛されたのよ。それだけで十分でしょ?」


そう言って笑う美女達。女が答える。


「わ、私はディレン様を愛し、全てを捧げました。どうか、どうか、嘘と言ってください……」


女は頬に涙を流しながら言った。ディレンが言う。


「嘘じゃない。僕は嘘は言っていない。ただ飽きたんだ。僕はね、常に新しい女が必要なんだよ。それが僕の活力。楽しかったよ、ハク。バイバイ」


そう言ってディレンが隣に居る女と口づけをする。女が大声で言う。


「ディレン様ああああ!!!!」


「うるさい!!!」


ドン!!


「きゃあ!!!」


ディレンは立ち上がり近付こうとしたハクと呼ばれた女を足蹴りにした。床に倒れるハク。ハクの顔が悲しみから怒りの表情へと変わる。それに気付いたディレンが言った。



「おいおい、ここで暴れるのかい? 勘弁してくれよ、君の魔力は相当だからね。それじゃあ仕方ない」


そう言ってディレンは右手の指をパチンと鳴らした。


「うっ!?」


急に苦しそうな顔をしたハクが前に倒れる。ディレンが立ち上がって言う。


「その指輪、つけた者の精神を抑え込み動きを押さえる指輪だよ。君は僕に愛で縛られ、そして今は体を縛られる。嬉しいだろ、僕の愛」


「ううっ、ぐぐっ……」


ハクは倒れながらディレンを睨みつける。ディレンが兵を呼ぶ。


「おーい、誰か。こいつを地下牢に運んでくれ。魔封じの特別室に」


「はっ!」


部屋の外から呼ばれた兵士がやって来てハクを運んで行く。だらんと力の抜けた体で顔だけはディレンを睨むハク。そして誓った。



(許さぬ、許さぬぞ!! ()()を怒らせたこと!! その身を以て後悔させてやる!!!)






炎神竜えんしんりゅうが帰った後、話をしていたララ・ファインズに突如やって来たシルファール姫。彼女は驚くべき報告を持ってきた。


「隣国のレミット王国が竜の襲来を受けていてガーデン王国(うち)に救援依頼が来たの。それでその救援にカイン様に一緒に来て欲しいの!!」



カインが驚いて椅子から落ちそうになりながら言う。


「なななななな、なんでぼ、僕なんですか?????」


驚くカインにシルファールが言う。


「多くの強豪ファインズが先の炎神竜襲来で主力を怪我で欠いていて、どこも遠征どころではないんです」


クララが言う。


「う、うちだって結構な被害出てますよ!!」


シルファールが言う。


「それでも比較的被害が少ないのも事実。無理ならカイン様だけでもいいので同行をお願いしたいんです。個人的な願望も含めて……、ああん……」


シルファールは頬を赤らめて最後はハアハア息を吐きながら言い切った。


「最後の方はなんかだか説得力無かったよね……」



マリエルが苦笑しながら言う。クララが尋ねる。


「それは依頼ですか?」


「そうです。今はお願いですが、断るという事ならば強制依頼となりましょう」


シルファールがクララに言う。


(職権乱用じゃん……)



「カイン様……、お願い、シルと一緒に……」


マリエルが小声で言う。シルファールはカインに近寄り甘えた顔をして言う。カインが引きつった顔をして答える。


「ぼぼぼぼぼ、僕なんて行っても全然、全然全然役に立たないし、ああ、だ、団長にお任せしますうううっ」


カインは逃げるように団長へ話を振った。クララが観念したかのように言う。



「分かった、じゃあ受けよう。仕方ないからね」


シルファールが笑顔で言う。


「ありがとうございます。安心しましたわ。私とカイン様の遠征旅行ハネムーン


「え?」

「はっ?」


驚く皆の顔を見てシルファールが言う。


「何か言いました、私?」


クララが言う。


「いや、いいんですが。ちょっとびっくりして。それより同行は誰になるんですか?」


「私とカイン様になります」


「ファインズのメンバーも参加が条件なら受けます」


クララの言葉にシルファールが少し考えて言う。


「分かりました。それで結構です」


カインが言う。



「あ、あの、ロイヤル・ファインズの皆さんは、その、い、行かないんでしょうか……」


シルファールがカインに近付いて言う。


「ロイヤル・ファインズは国防の仕事もしています。全員がいなくなったら国の防衛に関わりますので。今回は私と私が選ぶファインズで対応しようかと考えています」


(ひひひ、姫様、顔が近い……)


カインは何度も頷いて応えた。



「分かりました。で、出発はいつ頃になるんでしょうか」


シルファールが言う。


「間もなくです。詳細は後に追ってご連絡します」


シルファールは軽く頭を下げると、カインの元に寄り耳元で囁いた。



「カイン様とのお出掛け、シルは心より楽しみにしております」


そう言ってふっと耳に息を吹きかけて出て行くシルファール。


「ぎょうぶぐわああぬにゅむむっ、ぐうはっ……」


カインは顔を真っ赤にしてその場に倒れた。


「カイン!」


クララがカインの元に走り寄る。その後ろからスミレが起きて来て言った。



「ふああぁぁ、お出掛け? そう言えば、私とカイン様のぉ、デートって、いつだっけ?」


クララはずいぶん昔に言った出まかせを思い出して笑った。

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