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27.受け継がれる力

ララ・ファインズのホームに戻った炎神竜えんしんりゅうとカイン達。

ソファーに座る炎神竜にマリエルが飲み物を尋ねる。


「コーヒーかお紅茶、どちらがよろしいでしょうか」


「ミルクを。ストレートで」


「えっ?」


真面目な顔をして炎神竜が言う。ちょうどお菓子を運んで来たクララがそれを見てマリエルに小声で言う。


(今、ちょっとだけ赤い顔したよ。もともと赤い顔なんだけど)


くすくす笑う二人。それを見た炎神竜が言う。


「何か言ったか?」


クララが答える。


「いえ、何も。お菓子をどうぞ」


そう言って真っ黒に焦げたクッキーを机に置く。炎神竜が言う。


「何だこれ? 天かすでも焦がしたのか?」


「なぬっ!?」


一瞬で表情が変わり顔に火がつくクララ。慌ててカインがフォローする。


「わああああっ、こ、こら。これはそういうお菓子! た、食べなさい」



焦げたクッキーをかじりながら炎神竜が言う。


「色々聞きたいことはあるが、まずお前どのくらい強神竜ジジイから聞いている、竜のこと?」


「いや、ほとんど何も。竜のギフトって言葉すら最近知ったんだ」


カインが申し訳なさそうな顔で言う。


「マジか? こりゃ最初から話さなきゃならねえな」


炎神竜が困った顔をして言う。



「話す前にひとつ教えてくれ。戦っている時に人格が変わっただろ? あれは何だ?」


炎神竜が再び焦げたクッキーを口にして言った。


「ああ、あれは……」


カインは雷牙のこと、転生のことを説明した。炎神竜が言う。


「ほお、そんなことが……、分かった。では次の質問。スキルは持ってるよな?」


「え、ええ。確か『重複』だったような……」


炎神竜が膝を叩いて言う。


「そうだ。それだ。ようやく見つかったんだ。本当に時間が掛かったぜ」


「このスキルって、何なの?」


カインが不思議な顔をして尋ねる。炎神竜が答える。



「それは超レアスキルだ」


「そ、そうなんですか?」


「ああ、ああ、通常お前らヒト族なんかが貰う恩恵、魔心やギフトって言うのはひとつだけしか持てねえよな?」


一緒に座っていたクララが言う。


「そうね。消すには面倒な儀式をやらなきゃならないし、二度目以降は能力の発生率が下がるので通常はひとつをずっと持ち続けます」


カインはどれもが知らないことばかりだった。炎神竜が言う。


「らしいな。で、お前のスキル。これはその能力を()()して持つことができる」


「!!」


炎神竜の言葉に驚く一行。


「正確に言うと同系統のギフトに対してだ。お前は竜の力を持ったので竜系統になる」


「え、ええっと、ごめんなさい。意味がよく分からないかも……」


炎神竜が溜息をついて言う。


「つまりだ。お前は今強神竜ジジイの能力、ずば抜けた力とそこから生まれる尋常じゃないスピードを持っている」


「は、はい……」


カインはそんなこと言われて初めて知ったが、そのまま大人しく聞くことにした。


「そこに俺がお前にギフトを渡せば、炎の能力を身につけることができるんだ」


「う、うそ……、凄いよ、それ!!」


クララが驚いた表情で言う。マリエルも尋ねる。


「竜のギフトだけでも凄いのに追加もできちゃうの!?」


炎神竜が言う。


「ああ、だから超レアスキルなんだ。他にいる竜達に認められてその力を分けて貰え。俺からはこれだ」


そう言って炎神竜はカインにぼんやり赤く光る丸い球を渡す。


「炎神竜のギフトだ。食え」


ギフトを見つめながらカインが聞く。


「え、ええ!? いいの?」


「言っただろ、認めるって」


そう言ってカインの手にギフトを乗せる。それを食べるカイン。



「もぐもぐ……、味がないなあ……」


炎神竜が言う。


「そうなのか? 食べたことはないので味は知らん。だがこれで簡単な爆炎などは使えるようになったはず。練習しとけ」


驚くカインが言う。


「え、ほ、本当に? 爆炎」


ドーーーーーン!!!!


「きゃああ!!」


「え、えええええ!?」


カインが何気なく爆発するイメージを持って言葉を発すると、ホームの端で爆発が起きた。


「おおおおおお、おい!! カイン、何やるのよ。いきなり!!!」


クララが怒って叫ぶ。カインが驚きながら言う。


「うわわああああっ、い、いきなり、びっくりした!! ほ、本当に出た!! って、ああ、ご、ごめんなさい!!!」


カインが机に頭をつけてクララに謝る。それを見た炎神竜が思う。


(マジか? 練習もしていない状態で既にこの威力。こりゃセンスあるかも)


炎神竜は焦げたクッキーを食べながらカインを見つめた。




「ここからは俺達竜族のことを話す」


「はい」


真面目な顔をして言う炎神竜にカインが返事をする。



「竜族は色々いるが、強神竜を中心とした俺達のグループは五体、強神竜、白神竜、魔神竜、暗黒竜に俺だ」


「あ、暗黒竜……」


カインは他にもいると言う竜族の名前を聞いて驚いた。特に暗黒竜と言う名前を聞いて拳に力を入れる。炎神竜が言う。


「俺達は基本お互い仲良く暮らしていた。子供の時は一緒にじゃれ合って遊んだりもした。竜族の中でも最強の強神竜を中心に皆が仲良くしていた。しかし」


カインが炎神竜の顔を見る。


「しかし、暗黒竜が自身の出す闇に飲み込まれた」


「闇に、飲まれた?」


その言葉に驚く一同。炎神竜が言う。


「ああ、そして闇に飲まれた暗黒竜は暴走を始める。そして皆バラバラになった」


「暴走って……」


カインが悲しそうな顔をする。


「他の竜で止めればいいんじゃないの? 強神竜って最強なんでしょ?」


クララが言う。


「ああ、確かに最強だ。だが暗黒竜には竜族の攻撃が効かないんだ」


「えっ!?」


カインが驚く。


「だからどれだけ強神竜が強くても竜族で奴を押さえることはできない。まあもともと暗黒竜も結構強いんだがな」


「そうなんだ」


炎神竜がカインを見て言う。


「だから強神竜はその力をヒト族なんかに渡して、暴走した暗黒竜バカを代わりに倒させる」


「え、ええっと、それが僕なの?」


「そうだ。ジジイに選ばれた」


「ううう、うそおお……、じっちゃんそんなことは何にも……」


カインが泣きそうな顔をして言う。炎神竜が言う。


「それは知らん。ただ竜の力を受け継ぐには条件は色々あるんだが、確実に言えることは『重複』のスキルを持つこと。それを持ち力を受け継いだお前は、否が応でも竜の戦いに巻き込まれていく」


「りゅ、りゅ、竜の戦いいいい!? ひええぇ」


カインは炎神竜のような竜が今後も現れてくることを想像し体が震え始める。


「そういうことなんだ」


クララが腕を組んでつぶやく。マリエルが言う。


「じゃあ、竜族のみんなで力を合わせてカイン君に力を貸して暗黒竜を倒すんだ」


カインが炎神竜に尋ねる。



「討っちゃって、本当に討っちゃっていいの? 昔はみんなで仲良くしていたんだよね。また昔みたいに仲良く……」


炎神竜の顔が一瞬暗くなる。そしてカインに言う。


「ああ、大丈夫だ。正気に戻す方法はない。それに竜族は死んでもすぐに魂が転生して別の竜へと生まれ変わる。もちろん正気の竜だ」


「そ、そうなんだ……」


カインは悲しい顔をして言った。




「あと、何か聞きたいことはあるか?」


カインが言う。

「あのお、じっちゃん、強神竜は殺されてしまったんだけど、それってやっぱり暗黒竜がやったのかな?」


炎神竜が答える。


「ああ、多分そうなんだろうな」


「やっぱり、そうなんだ……」


カインが悲しそうな顔をする。炎神竜が言う。



「最後に伝えておく。雷牙って奴のことだが」


「あ、うん」


炎神竜がカインに言う。


「雷牙ってやつは強い。相当な戦闘センスの持ち主だ。だが、奴が今以上強くなることは多分ない」


「えっ、それってどう言うこと?」


「つまりだ、奴がこの世界で強いのは強神竜ジジイの影響があるからだ。ただ奴じゃ強神竜ジジイの力を十分に使いこなせない。何故なら強神竜ジジイの力を受け継いだのはカイン、お前だからだ」


驚くカイン。炎神竜が続ける。


「雷牙がいくら強くてもこの世界じゃ借りた体に借りた能力。限界がある。強神竜ジジイの力をしっかりと発揮できるのはお前だけだ、カイン」


「ぼ、僕だけ……?」


「ああ、それが竜の力を受け継いだ者の証。今はまだ正直雷牙よりも弱いかもしれんが、暗黒竜に対抗できるのはお前なんだ」


「え、え、いや、そんなこと、僕には……」



「でもそれって竜同士のいざこざに他人が巻き込まれているだけじゃない?」


紅茶を飲みながらマリエルがぼそっと言う。


「……」


黙り込む炎神竜。焦げたクッキーをひとつ口に入れてから言う。


「ま、まあ、そうとも言えるな。だが暗黒竜の暴走はヒト族や他の種族も被害を与え。だから、悪いが、頼む」


最後は何だか懇願するようになって言う炎神竜。カインが暗い顔をして言う。


「あ、あの、ぼぼ、僕にはそんな事、多分、で、できないと…、話が大きすぎて、無理そう……」


「お前がやらないと皆が死ぬぞ」


炎神竜が厳しい顔をして言う。それを聞いて震えていたカインの顔が青くなる。


「ぼ、僕じゃあ……」



「私達も一緒に戦うよ、カイン」


それを感じたクララが言う。


「で、でも、暗黒竜って三大厄災で……」


クララがバンとカインの背中を叩いて言う。


「団員が困っているのを、団長が放ってことはできないでしょ?」


「私も手伝うよ、カイン君」


マリエルもそう言い、隣で寝ているスミレの手も一緒に上げさせる。


「みんな……」


カインは目が熱くなるものを必死に堪えた。




「と言うことで話は終わったんで、俺は帰る」


そう言う炎神竜にカインが言う。


「ええ、か、帰っちゃうんですか? 一緒に……」


「馬鹿言うな。俺ができるのはここまでだ。行ったところで何もできん」


「そ、そうなんですか……」


悲しむカイン。


「そういうことで他の竜族も探し出して力をしっかり貸してもらえ。俺は眠い。じゃあな」


そう言ってホームを出ようとする炎神竜にカインが言う。


「あ、あのお、ありがとうございました」


炎神竜は立ち止まって振り返って言う。


「頑張れよ」


そう言ってテーブルの上の焦げたクッキーをひとつ口に入れる。


「このクッキー美味かったぜ、ありがと。嬢ちゃん」


「え!?」


炎神竜は笑顔を皆に向けてホームを出て行った。




外をひとり歩く炎神竜が、昔交わした強神竜との会話を思い出す。


エンよ」


「何だよ、ジジイ!!」


若き炎神竜は強神竜に呼ばれて返事をする。強神竜が言う。


「いずれワシの後を継ぐ者が現れたら、その時はよろしく頼む」


「な、何言ってやがる!! てめえはまだやれるだろ!!」


「そう思うか?」


炎神竜が真剣な顔をして言う。


「あ、あったりめえじゃねえか。最強竜がなに弱音吐いてるんだよ!!!」


「そうじゃな。お前を見ていると元気が出て来るわ」


「な、なに時化しけたこと言ってるんだ。せ、せいぜい長生きしやがれ!!」



真っ青な空の下、炎神竜が天を仰いでひとりつぶやく。


「なあ、ギフト渡すってこんなに力が抜けちまうんかよ。もう眠くて仕方ねえぞ」


その頬には涙が流れる。


「これで、これで良かったんだよな?」


よろよろと歩く炎神竜。



「なあ、ジジイ。もう一度昔みたいに褒めてくれねえか。オレ、結構好きだったんだぜ……、あれ……」


炎神竜が涙を拭いて言った。





「す、凄い話になって来たね」


炎神竜が去った後、残ったクララ達が興奮して話す。


「そうだね、ちょっと実感わかないけど頑張らなくちゃ」


マリエルも言う。


「ああああ、ああのおお、ぼぼぼぼ、僕は、そんなの、無理いいい、だと、いえ、絶対にいい、無理で、死んじゃうよ……」


泣きそうな顔したカインにクララが言う。


「大丈夫。竜族のお墨付きだよ、カインは」


「そ、そんなの、いや、無理です……」


マリエルが笑顔で言う。


「やれることからやろ、カイン君」


「ほら、カインも笑って」


そう言ってクララがカインの頬を引っ張って言う。



「いつも心に笑顔を、笑わない奴に未来はないんだよ!!」


「あ、ははははっ、は、はあ……」


苦笑いとため息が混じるカイン。そこへ急にホームの扉が開かれる。



「大変!!!」


入って来たのは意外にもシルファール姫であった。


「シシシ、シルファール姫えええ!?」


驚くカイン。そのカインにシルファールが言う。



「隣国のレミット王国が竜に襲われて我が国(うち)に救援要請が来たの!!」


『竜』と言う言葉にさらに驚くカイン達。シルファールが言う。



「そ、それで、カ、カイン様……、私と一緒に救援に向かって頂けませんか?」


カインは驚きすぎて倒れそうになった。

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