25.炎神竜対カイン
暴れる炎神竜の前に現れたカイン。その拳に力を込め炎神竜に走り、殴り掛かる。
ドンドンドン!!!
カインの攻撃を素手で受け止める炎神竜。一旦退いた炎神竜がカインに向けて爆撃を放つ。
「はっ!!」
カインは目の前の空を拳で突き、そこから発生させた衝撃波を爆撃に向かって飛ばす。衝撃波は爆撃にぶつかり、大きな爆音を立てて消えた。炎神竜が言う。
「やるな、お前」
無言になるカイン。炎神竜を見て思う。
(強い。だが、負けぬ!!)
炎神竜が右手を軽くひょいと上げて言う。
「炎柱」
カインの周囲の地表から突如現れる複数の炎の柱。カインはそれをかわしながら剣を真横に振り、そしてそのまま上へと振り上げて叫ぶ。
「強風斬!!」
カインを中心にして太い竜巻が起こる。ゴウゴウと音を立てながら炎神竜が起こした炎の柱を巻き込み、そして風の勢いでその炎柱を吹き飛ばしていく。それを見た炎神竜が言う。
「おいおい、そこまでやるとは。マジでお前、強神竜の何なんだよ!?」
そう言ってから気合と共に巨大な爆撃をカインに向けて放つ。カインはそれを空中に大きく跳躍して逃れ、飛び上がった上空で炎神竜に向かって剣を振り叫んだ。
「強撃斬っ!!!!」
空中から発せられる剣撃が炎神竜に飛ぶ。炎神竜は爆炎を放った直後に突如現れた剣撃に対処できず、爆音と共に直撃を受けた。
地表に降り立つカイン。後方に飛ばされた炎神竜。両者荒い息をつきながら相手を見つめた。
戦いを見ていたクララが驚く。
「初めて見た。雷牙が対等に戦うところを……」
「うん」
隣で回復を行っていたマリエルも頷く。
シルファールは国家級の災害と言われた炎神竜と互角に戦うカインを見て甘い息を吐いて言う。
「ああ、カイン様、たったおひとりで……、できるならば私もお傍で、ああ、戦いたい……」
そう言いながらもへなへなと座り込みカインを見つめる。
「行くぞ、てめえ!!」
カインは持っていた剣を鞘に納めて拳に力を入れる。そして思いきり地面を蹴ると一直線に炎神竜へと飛ぶように殴り掛かった。
(速い!!!)
先程より数段速くなったカインに驚く炎神竜。
ドン!!
カインの拳の直撃を受ける炎神竜。しかしその拳圧に耐え切れず後方へ吹き飛ばされる。更に追い打ちをかけるカイン。目にも止まらぬ速さで拳を繰り出す。肘を立ててひたすら防御する炎神竜。
(どうした? 急に強くなった!?)
炎神竜はカインの拳を受けながらそう感じた。そしてカインの隙を見て反撃を行う。
シュン!!
「何っ!?」
炎神竜が拳を振り抜いた場所にカインの姿はなかった。
「ここだ!」
突然後ろから聞こえる声。炎神竜が振り向くより先に、その炎神竜の背中に強烈な蹴りが入った。
「ぐあああああ!!!!」
吹き飛ばされる炎神竜。クララ達が言う。
「す、凄い……」
攻撃を受けた炎神竜が立ち上がり言う。
「お前、どうした? 急に強くなったな」
カインが答える。
「ああ、俺の喧嘩は相手を徹底的に潰す。それだけだ」
「……そうか、じゃあ俺も手は抜けんな」
「なに?」
炎神竜はそう言うと全身に力を込め始めた。
「はああああああ」
炎神竜の唸る声。その体からは大きなエネルギー発せられる。
「お前、何をやって……、!?」
唸っていた炎神竜の背から真っ赤な翼が現れ、手の爪は伸び、そして顔はヒト族っぽかった顔から完全な竜の顔へと変わる。炎神竜が言う。
「見せてやるよ、竜の力を」
その瞬間消える炎神竜。
突然カインの目の前に現れ、そしてカインに殴り掛かる。瞬時に防御姿勢を取るカインだが、その一撃で後方まで吹き飛ばされた。休む間もなく炎神竜が追い打ちをかける。防戦一方となるカイン。
「これならどうだ!!!」
炎神竜が渾身の拳を打ち込む。
ガン!!
カインはそれを腕で受け止めるが、同時に悲鳴を上げる。
「ぐああああ!!!!」
炎神竜の手の爪がカインの腕に突き刺さる。
「カインーーーーっ!!!!」
クララが叫ぶ。後ろに下がったカインが言う。
「くっ、それが炎竜の力ってやつか、なるほど、強ええな……」
「まだ全力じゃねえぞ!!」
「なんだと!?」
その言葉に驚くカイン。そして言う。
「そうか。だがお前は強いが、これで決めてやる!!!!」
そう言ってカインは剣を抜き、そして炎神竜に向かって一直線に走る。
「強撃斬っ!!!!」
カインは持てる力を振り絞って剣を振り上げた。炎神竜はそれを腕で受け止めようと頭上で腕を組む。
しかし剣が腕に当たる瞬間カインの動きが遅くなり、そして剣がまるで落ちるかのようにコンと小さな音を立てて弱々しく炎神竜の腕に当たった。
カインが周りを見て叫ぶ。
「ぎゃああああ!! な、なにここ? え、どうして? 地下牢は? ええ、ななななな、なに、なにあんた!? 顔が、顔が怖いし!! えっ? 腕、うで、痛あああああ!!!」
突然騒ぎ出すカイン。
驚いた炎神竜が一旦後退して様子を見る。クララは口に手を当てて震える声で言った。
「ね、ねえ。あれってまさかカイン!?」
マリエルもその姿を見て言う。
「あちゃ~、カイン君に戻っちゃったよ!」
しかし後退してずっとカインを見ていた炎神竜が言う。
「ほお、お前がか……」
対峙するカインが言う。
「ななななな、何が?? かか、顔、怖い……、あれ、でもどこかで見たような……」
炎神竜が言う。
「やっと会えたな、強神竜の力を受け継いだ者よ!!」
カインの顔が驚きと戸惑いで固まった。
「じっちゃん? じっちゃんのことを言っているの?」
炎神竜が言う。
「何のことが知らねえが、俺はお前を探していたんだよ!!」
「ぼぼぼぼ、僕を? な、何で?」
炎神竜が言う。
「理由は簡単。強神竜の力を授かった奴が、暗黒竜に勝てるだけの力を持っているか知りてえんだよ!!!」
そう言いながら拳を振り上げてカインに殴り掛かる。
ドーーン!!!
カインはそれを腕で受け止める。その勢いで後退するカインが言う。
「ちょ、ちょっと待ってよおおおお。じゃあ、何も殴らなくても……」
炎神竜が真剣な顔をして言う。
「黙れ! もしお前にその力がなければ……」
「な、無ければ?」
カインの顔が強張る。
「お前を殺して新しい後継者誕生を待つ!!!!」
「ひえええええっ!!!!」
怯えるカインに炎神竜の拳が入る。
「ぎゃああああ!!!」
吹き飛ばされるカイン。そして起き上がって背を向けて逃げようとする。それを見た炎神竜がさらに大きな声で言う。
「貴様!! 何だその情けない態度は!!!!」
そう言って逃げようとするカインの背中に炎神竜は更に攻撃を加える。炎神竜の一方的な攻撃にひたすら身を守るだけのカイン。
「助けなきゃ!!」
それを見て走り出すクララとマリエル。しかしそれに気付いた炎神竜が叫ぶ。
「邪魔するな!!!」
ドオオオオン!!!
「きゃああ!!」
炎神竜は二人の前に爆発を起こす。その衝撃で吹き飛ばされるクララとマリエル。
「だ、団長、マリエルさん、に、逃げて……」
殴られてふらふらなカインが言う。それでもクララはひとり立ちあがるとカインと炎神竜に向かって言う。
「団長が、団長が団員を見捨てることなどできない!!!」
震えながら目に涙を溜めて両手を広げるクララ。
それを見たカインの頬にも涙が流れる。炎神竜が言う。
「邪魔をするなら殺す!!!!」
炎神竜は特大の灼熱球を形成し、それをクララに放つ。その恐怖に動けなくなるクララ。
――うそ、何これ……
それを見たクララとマリエルは一瞬死を覚悟した。灼熱球がクララ達に迫る。
ドオオオオン!!!
「……えっ!?」
激しい爆音、熱風。体を震わせるような振動。
それが消え去るとクララの前にカインが剣を構えて立っていた。
「き、斬っただと? 俺の灼熱球を!?」
炎神竜が驚いてカインを見る。目の前に立つカインを見てクララが思う。
(カ、カインなの……、本当に!?)
カインは炎神竜を睨みつけて言った。
「思い出したよ、じっちゃんに何度も言われたこと。女をな、女を泣かせる奴は……」
カインが剣を振り上げて炎神竜に斬り掛る。
「そんな奴は、すべて敵だって!!!!」
ドーーーン!!!!
カインの剣撃を受け止めた炎神竜が後方へ吹き飛ぶ。
(何だこれ!? 確実に受け止めたはず。まさか、これが?)
「はああああ!!!」
さらに剣撃を繰り出し追撃を行うカイン。炎神竜はそれを腕で受け止めて身を守るが、その腕からどんどんと血が噴き出していく。
(お、俺様の皮膚が斬られている? 馬鹿な!?)
予想以上の強い攻撃に後退した炎神竜が言う。
「これならどうだ!!!」
右手を上げ頭上に真っ白な灼熱球を形成する。大きさこそ前より小さいが、そこに込められたエネルギーはこれまでで最大のもの。そしてカインに向けてそれを放つ。
「はああっ!!!」
カインは放たれた灼熱球に向かいそれを一刀両断にしようと剣を振り抜く。
ドオオオン!!!
辺りに響く凄まじい爆音と爆発く。カインはその爆炎燃え盛る中、一直線に炎神竜に斬りかかる。
「はあああああ!!!!!」
ドオオオオオオオオン!!!!
その剣撃を辛うじてかわす炎神竜。
かわされカインの剣が当たった地面が大きく割れて裂ける。後退した炎神竜がその地面を見て言った。
「あははははっ!!! 分かった、分かったぜ。認める、お前を。強神竜の後継者として」
「えっ!?」
剣を持ったままカインが立ち尽くした。




