23.交渉と戦闘
ガーデン王城にて交渉、並びに防衛の指揮を執るシルファールについにその知らせが入った。
「え、炎神竜が接近しています!!!」
シルファールは締まった顔をして言う。
「分かりました。まず私が交渉に向かいます」
そこへ別の報告が舞い込む。
「ふ、複数の中堅、上級ファインズと連絡が不通に。目撃ですが炎神竜に接触したとの情報も入っています!!!」
「何ですって!!!」
それまで落ち着いた顔をしていたシルファールに動揺が走る。
「何と愚かな」
シルファールはすぐに炎神竜との交渉の為に城外へと向かった。
「ここらだな。強神竜がいるのは」
ガーデン王城近くまでやって来た炎神竜は、その王城と城下町を眺めて言う。そして目の前にいる冒険者に向けても言った。
「で、お前らは何だ? 死にに来たのか?」
炎神竜は目の前にいる複数の冒険者を睨みつける。その中からひと際体の大きな冒険者が前に出て言う。
「俺達はよお、この国じゃちょっとは名の知れた冒険者なんだぜ。なあ、お前。本当に竜族なのか?」
冒険者達はまるでその目の前にいる存在を見下すような態度で言った。炎神竜が答える。
「貧弱なヒト族などに答える義務はないが、教えてやろう。俺様は竜族だ。さあ、どうする。俺にひれ伏すか? それとも死を選ぶか?」
冒険者は腰に差した剣を抜きながら答えた。
「そうか、そうか。やっぱり竜様ですか。じゃあ、運が良ければ魔心とか出ちゃうんだよね!?」
その言葉と同時に冒険者の後方で魔法を唱えていた魔導士隊が一斉に攻撃魔法を放つ。
ドオオオン!!!
炎神竜に襲い掛かる各種攻撃魔法。火、氷、風、闇など上級ファインズらしく各種揃った魔法攻撃。冒険者が叫ぶ。
「ぎゃはははっ、これでとどめだ!!!!」
そう言って剣を振り上げて土煙が上がる中を突入する。
ドオオオオン!!!
「ぐわああ!!!」
炎神竜に向かって斬り込んでいた冒険者の前で突如爆炎が上がった。爆風と共に吹き飛ばされる冒険者。
煙が収まった後に現れる炎神竜。魔法攻撃を受けたはずだったが、まるで何事もなかったかのように平然としている。
「い、行けええ!! 怯むな!!!」
冒険者の掛け声とともに残った者達が剣を持って斬りかかる。
「愚かな」
炎神竜はその光景を見ても全く逃げようともせずその場から動かない。
ガンガンガン!!!
剣や槍の攻撃を受ける炎神竜。しかし固い皮膚に阻まれ全く剣が通らない。不気味に笑う炎神竜が言う。
「約束だ。死ね、お前ら」
ドオオオオン!!!!
炎神竜を中心に起こる爆発。周りを囲んでいた冒険者達が一斉に吹き飛ばされる。魔法障壁を張った魔導士もいたが、それを破壊し跡形もなく消し去る程の威力。
少し離れた場所で軽傷だった冒険者が言う。
「な、なんて威力……」
「お待ちを!!!!」
その時城下町の方から大きな女性の声が響いた。皆がその声の方を振り向く。やって来た女性が言う。
「お、お待ちを、炎神竜様。我々は争う気はございません。どうかお話を」
そう言いながらシルファールは周りに倒れる冒険者を見て、怒りと共に心を痛めた。炎神竜が言う。
「話ぃ? ふざけるな。てめえらが仕掛けてきたんだろ!!!」
怒鳴る炎神竜。興奮からかその口元から火が溢れ出る。シルファールが言う。
「かの者達の所業はお詫び致します。何卒お話を……」
ドン!!!
シルファールの真横で爆発が起こる。発せられる気迫とその爆炎に額から汗が流れる。
「ここは危険です。一旦退きましょう」
シルファールの隣にやって来たレオンハルトが彼女を守りながら言う。
「いえ、可能性がある限り話し合いを……」
「しかし、危険が……」
ドオオオン!!!
「きゃあ!!」
今度はシルファールの目の前で爆発が起こる。怒りの表情でこちらを睨む炎神竜。しかし更に懇願するように言う。
「お願いです! 炎神竜様!! どうかお話を!!!」
ドオオオン!!!
「ぐっ!」
今度はレオンハルトが爆発をから身を挺して守る。怪我をしたレオンハルト声を出す。
「シ、シルファール様、一旦お引きを……」
「……わかりました」
シルファールは兵に守られながら王城へと引き返す。
ドオオオオン!!!
城門を破壊して街に入る炎神竜。そして爆撃を繰り返しながら叫ぶ。
「どこだ!! 強神竜はどこにいる!!!」
その間にも防衛に当たる兵士達が次々と爆炎の前に倒れて行く。
「なんと、何と言うこと……」
それを後方から見ていたシルファールが深い悲しみの顔をする。そして苦渋の決断を下した。
「最終作戦へ変更。これより全軍にて炎神竜を討伐する!!!」
「おう!!!」
この日の為に準備をしてきた強豪ファインズの冒険者達が声を上げる。しかしその光景を眺めながらシルファールは自分の力不足を嘆いた。
「ここから先は行かせないぜ!!!」
ローザンヌ、イメルダの両ファインズが炎神竜の前に立ちはだかる。剣を構えた冒険者達が一斉に斬りかかった。しかし立て続けに発せられた爆発によって、触れる前にすべての冒険者が吹き飛ばされてしまう。
「我がファインズの名に懸けて、貴様を討ち取る!!!」
上級ファインズの団長が叫ぶ。複数のファインズが現れる。全く動じない炎神竜が叫ぶ。
「邪魔をするな!! 邪魔をするなら容赦はせんぞ!!!!」
ドオオオオン!!!
同様に続けて起きる爆発と爆風にファインズの冒険者が悲鳴をあげる。そしてすべての者が倒された。
「これほど、これほど強いとは……」
シルファールがその光景を見て絶望する。
このまま城を攻撃されたら国家滅亡の危機にすら陥る。その前に絶対に止めなければならない。シルファールは自身の団、ロイヤル・ファインズに出撃命令を出した。
「ロイヤル・ファインズ、出撃します!!」
「はああ!!!」
魔導士による遠隔攻撃、そして剣士レオンハルトによる剣撃。ランクSだけあってこれまでの様に易々とは討ち取られない。シルファールも戦場に降りて魔法を唱える。
「氷牙閃撃!!!!」
空中にあった水分が凍り付き、巨大な槍となって炎神竜を襲う。
「ぐっ!」
これまでとは違った強力な攻撃に初めてダメージを受ける炎神竜。しかし笑いながら言う。
「がはははっ、やるじゃねえか。ヒト族よおお。だがよ」
ドオオオオン!!!
「きゃああ!!!」
少し本気を出した炎神竜の爆撃。それまで対等に戦っていたロイヤル・ファインズの団員達が一斉に吹き飛ばされた。シルファールも後方に飛ばされその場に倒れる。炎神竜はゆっくりと歩きシルファールの首を掴んで体を持ち上げた。
「うぐっ、苦しいぃ……」
「お前か、さっきの魔法。いい加減、俺様の邪魔をするな。殺すぞ」
そう言って炎神竜はもう一方の手に爆撃の気を集め始める。
――カ、カイン様……
シルファールは無意識のうちにその名前を思った。
ドオオオン!!!
「何っ?」
突如炎神竜の背中に放たれる氷結攻撃。
驚いた炎神竜はシルファールを放し、そして振り返りその人物を見た。そこには真っ青な剣を持ったひとりの剣士が立っている。
「私、このヴェルナが来たからもう安心。この家宝『吹雪の剣』で見事竜退治をして見せよう!!」
「ヴェ、ヴェルナ……」
倒れたシルファールがその男を見て言う。ヴェルナは自信に満ちた顔で手にした真っ青な剣を振りかざして言う。
「受けて見よ、この攻撃を!!!」
そう言って剣を振るとそこから発する強烈な氷結攻撃を炎神竜に放った。細かな氷や強風、そして冷気によって形成された衝撃波が炎神竜を襲う。
ボオオン!!!
「な、なに!?」
炎神竜はその攻撃を右手に集めた爆撃のみで相殺した。そして言う。
「ほお、いい剣持ってんじゃねえか。いいぜ、それで斬ってみな、俺を」
ヴェルナの顔にあからさまに焦りと怒りの色が見える。そして剣を持って走りだす。
「こ、この氷結の剣を持った私に、お、お前が勝てるはずはない!!!!」
シルファールはそのヴェルナが言い放った言葉を聞き逃さなかった。ヴェルナが炎神竜に斬りかかる。
「はああああ!!!」
ジュッ!!
「な、何だとおおお!?」
ヴェルナの氷結の剣は炎神竜の体に当たった。しかしそこからジュウと言う音を出して剣が止まる。そして炎神竜が気合を入れると持っていた剣が解けるように蒸発してしまった。
「う、嘘だ……」
焦るヴェルナ。更に炎神竜は目の前にいるヴェルナに対して爆撃を放つ。
ドオオオオン!!!
「ぎゃあああ!!!」
後方まで吹き飛ばされるヴェルナ。体中から流れる血を見ながら言う。
「そ、そんな馬鹿な……」
ヴェルナの目からは痛みと恐怖で自然と涙が流れる。シルファールが立ち上がって考える。
(確かに先程『氷結の剣』と言った。やはりそう言うことか。カイン様を……、!?)
シルファールが気付くと目の前に炎神竜が立っていた。そして再びシルファールの首を掴むと持ち上げて言う。
「お前がリーダーだな。我ら竜族に歯向かうとは愚かな奴らよ。その罪、死を持って贖罪とせよ」
ドン!!!
「な、何だ、今度は!!!」
再び炎神竜の背中に起こる爆発。炎神竜はシルファールを投げ捨てると、その攻撃主を見て言う。
「何だ、お前達は?」
「ララ・ファインズ。これ以上、暴れさせない!!!」
クララはお菓子の木箱を持って炎神竜に叫んだ。
一方地下牢。
ミルカは先程から突然無口になったカインに気付き声を掛ける。
「お、おい、あんた。どうしたんだ!?」
声を掛けられたミルカを睨むカイン。ミルカはその視線に一瞬恐怖を感じる。カインが言う。
「ここはどこだ?」
ミルカが驚いて言う。
「どこって、地下牢じゃん。あんた捕まったんだろ?」
カインは牢の中を見回してから再びミルカに言う。
「そうか、で、お前は誰だ?」
少し呆れた顔になってミルカが言う。
「あんた、からかってるのかい? 私はミルカ。イメルダ・ファインズの。私も捕まったって言ったでしょ」
ミルカがそう言うとカインが答える。
「なるほど、そう言うことか」
「あんた、どうしたんだい? まるで別人のようだが」
カインが答える。
「そんなことはどうでもいい。それより強い力を持った奴が近付いている」
「えっ? 強い力?」
「ああ、そうだ。どうする、俺は行くがお前も来るか?」
突然の話に少し頭が混乱するミルカ。
「何言っているのか分からないが、出られるなら一緒に行く」
カインが言う。
「分かった。じゃあ、出るか。ここ」
そう言ってミルカの前で手にはめられていた鉄の鎖を素手で引きちぎった。




