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21.共同作戦

「ヴェルナ様、イメルダ・ファインズの団長が面会にお見えですが」


ファインズの私室にいたヴェルナに団員がイメルダの訪問を伝えた。ヴェルナが言う。


「イメルダ? ふん、まあいい。通せ」


「はいっ」



部屋に通されたイメルダがヴェルナに言う。


「ヴェルナ!! 妹は、妹は無事なんだろうな!! 頼むから会わせてくれ……」


ヴェルナはまるで汚物でも見るような目つきでイメルダに言う。


「自分の召喚獣すらまともに操れぬ雑魚が。よくおめおめとこの私の前に現れたな」


「あ、あれは、イフリートが勝手に暴走して……」


「要はお前が能無しの召喚士、ってことだろ?」


「くっ……」


怒りの表情を浮かべヴェルナを睨みつけるイメルダ。ヴェルナが笑いながら言う。


「ミルカちゃんに会いたいだろ? そんなに怖い顔したら会えるものも会えなくなるぞ」


「ミルカに、ミルカに指一本触れるな!!」


「お前達次第、ってとこかな。くくくっ……」


イメルダはこの場で殴り倒してやりたい気持ちをぐっと堪えた。





ララ・ファインズのホームではギルド職員が持ってきた依頼書を読んでいたクララが唸り声を上げた。


「ローザンヌ・ファインズとの共同作戦だって」


クララが皆に言った。


「共同作戦?」


マリエルが言う。


「うん。目的は氷結の洞窟にある『氷結の剣』を持って帰って来るって書いてある」


クララが依頼書を見ながら皆に言った。カインが尋ねる。


「ひょ、氷結の剣って、何でしょうか……?」


クララが答える。


「分からないけど、炎神竜に対抗するための武器じゃないのかな。名前からして」


「な、なるほど」


納得するカインにクララが尋ねる。



「で、カイン。キミはその炎神竜に会わなくてもいいのかな? 竜の力を得た者として」


「ええっ、ぼぼぼぼ、僕が炎神竜に!? あわわわっ、で、できれば他の方で……」


カインは顔を青くして首を横に振りながら言った。マリエルが言う。


「でも、竜の力を貰ったんでしょ? お話ぐらいしてみたら?」


「いいい、いえ。正直あれが竜の力だって知ったのもつい最近ですし……、あ、そうだ。雷牙に会って貰おう!!」


「いや、会うならば、キミが会わなきゃダメだろ」


「は、はあ、やっぱり、そうですか……」


すぐに突っ込むクララにカインが溜息をついて答えた。マリエルがクララに尋ねる。



「で、どうするの? 受けるの? その依頼」


「うん、強制依頼って書いてあるので特別な理由がない限りは断れない。まあ、それほど危険な依頼じゃなさそうなので受けようと思っている。ローザンヌ・ファインズとも特に関係が悪い訳じゃないし」


皆がクララの言葉に頷いて応えた。





翌日、早速ギルドへ行きローザンヌ・ファインズと合流、そしてギルド職員から依頼内容の説明を受けた。


「という事で依頼内容を簡単に言うと、街外れの森にある氷結の洞窟を抜け、その先にある『氷結の剣』を取って来ると言うものです。両ファインズが協力して依頼を無事達成することを期待しています」


ギルド職員が小声で付け足す。


「なお、口外は禁止ですが、この剣で今度やって来る炎神竜を迎え撃つ事になっております。非常に重要な依頼ですので是非頑張って来てください!」


若い女性の職員が最後は力を込めて冒険者達に言った。



「だ、団長おおぉ。こ、これって、もしかして、いや、もしかしなくてもすんごく重要な依頼じゃないですか……」


カインがその内容を聞いただけで既に緊張からか震え始める。クララが答える。


「やはりそうだね。炎神竜対策か。まあ、向こうは格上ファインズ。私達が中心になってやることなんてないから心配は不要だよ」


「そ、そうですか……」


カインの顔にちょっとだけ安堵の色が浮かんだ。

ギルド職員による依頼の注意事項の説明が続く。するどローザンヌ・ファインズのひとりの女性団員がカインの姿に気付き、近付いて挨拶をした。



「カインさん……」


「えっ? あ、ああ……!?」


それは巨乳の自称ヒーラー、フェルキアであった。

以前カインを舞踏会に誘って途中で姿を消した女である。フェルキアはカインに近付くとその大きな胸を押し付けながら上目遣いで言った。


「ごめんなさい、カインさん。踊りの時は急にはぐれてしまって……」


顔が真っ赤になってふらふらし始めるカイン。甘く囁くフェルキアの声に眩暈すら覚える。


「あ、あ、い、いえ、そんな、だ、大丈夫です……」


カインは緊張のあまり何を言っているのかすら分からない。そんなカインの足をクララが思い切り踏みつける。



「い、痛ててててっ!!」


「依頼の説明中だぞ、カイン。ちゃんと聞きなさい」


「は、はい。すみません……」


フェルキアはクララが舞踏会でカレンと踊って邪魔をした女だと気付き、プイと顔を背けて去って行った。




一通りの説明が終わった後、ローザンヌ・ファインズ団長ローザンヌがクララの前に来て言う。


「今回は指示だから仕方ないけれど、君達のようなランクEのファインズと何故一緒にやらなければならないのか本当は理解できない。頼むから足だけは引っ張らないようにしてくれよ」


ぷっと顔を膨らますクララ。ローザンヌがカインを指差して言う。


「特にそこの詐欺男。ミルフォードを騙して入団し先日追い出されたと聞いたが、いつまで冒険者をやっているつもりだ?」


「え、ええ、ぼ、僕ですか。そ、そんな僕は騙してなんか……」


「失礼だな、キミ」


カインの言葉を遮るようにクララが大声で言った。ローザンヌが言う。


「ほお、団長さんが不甲斐ない団員の為にお怒りですか。まあ、いい。楽しみにしてるよ。共同作戦」


そう言ってローザンヌ・ファインズの団員達が去って行った。



「気にしなくていいよ、カイン」


「は、はい。ありがとうございます……」


カインは力なくクララに言った。




依頼当日。森の中の魔物を倒しながら進むふたつのファインズ。

ローザンヌは背にある長い荷物を大切にしながら魔物を倒していく。森の中は比較的低レベルの魔物で一行は楽に進めた。

やがて森の中に現れた氷に覆われた洞窟。入り口も凍り付いていたので、持っていた武器で皆ガガンガンと氷を割って中へと入る。



「さ、寒い……」


中は一面の氷に覆われていた。カインはまともな防寒具を持ってこなかったことを後悔する。


「綺麗……」


マリエルは日常余り見ることの無い氷の世界に見惚れている。

松明の明かりを頼りに進む両ファインズ。現れる氷の魔物を倒しつつ、しばらく歩くと明るい出口が見えた。



「うわああ、凄いね。カイン君」


洞窟の外は一面の雪景色であった。マリエルが喜んで雪で遊び始める。


「あれか」


ローザンヌはその雪原の真ん中に立つ神殿を見て言った。他の冒険者に大声で言う。


「あの神殿の中に目指す『氷結の剣』がある。最後まで気を抜くな!!!」



ロイヤル・ファインズの団員が走って神殿の中へと入って行く。カイン達もその後に続いてゆっくりと神殿に入る。すると先に入ったローザンヌ・ファインズの団員が叫んだ。


「あ、ありました!! あそこに剣が置かれています!!!」


団員が指差す先に石の壇上に置かれた一振りの剣がある。真っ青な美しい剣。まさに氷結に相応しい物であった。しかし剣を取りに違付いた冒険者が叫ぶ。


「ま、魔物だ!! 魔物が現れた!!!」


そう言うとローザンヌ・ファインズの団員達は剣を抜き戦闘を始める。



「あわわわわっ、ど、どうしよう……」


カインが神殿内で震えていると近くの団員が大声で言った。


「あ、あんた。俺達が魔物を引き付けるんで、その間にあの剣を取って来てくれ!!!」


「わわわ、分かりましたあああ!!!」


頼まれたカインは大きな声で返事をすると、一直線に剣に向かって走り出した。それに気付いたクララが叫ぶ。


「ちょ、ちょっと待って、カイン!!」


しかしカインは誰も居ない『氷結の剣』の元へ行くと、それを取ろうと手をかけた。



「えっ!?」


カインがその剣に手をかけた瞬間、剣がボロボロと砂の様になって崩れる。


「えっ、ええっ!?」


驚き焦るカイン。それを見たローザンヌ・ファインズの団員が叫ぶ。



「あ、あいつ、氷結の剣を壊した!!!!!!」


カインはその言葉の意味を改めて自分の頭で理解した。

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