表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
98/125

第096話 人だかり

いいね、評価ならびにブックマーク登録いただきありがとうございます。

励みになります。

あと誤字報告ありがとうございます。

 「ローラさんの言ってたことはこういうことか・・・」

 とオラゾーラ侯爵の館の玄関から門あたりを見ていると思わず独り言が口をついた。


 ローラさんから3国がテムステイ山にこだわる地理的理由と経済事情に関するありがたいお話を聞いた次の日のお昼過ぎ。

 玄関から100メートルほど離れた門のあたりには人垣ができていた。

 「タッキナルディ侯爵に士官を取り次いでいただきたい。」だの「タッキナルディ侯爵に魔獣を譲っていただきたい。」だの「タッキナルディ侯爵にテムステイ山周辺の商売の許可をいただきたい。」だの大声で叫んでいるのが聞こえてくる。

 門番だけでは足らず、オラゾーラ侯爵領の領兵が追い払ってはいるものの、自国の民を気づかってか強硬手段を取っていないためあまり効果もない。一時的には散るものの、ものの5分も立たずに人が再び集まる始末だ。

 こんな状況なので僕も門から外には出られない。

 人垣にいる人も目をこらせばタッキナルディ侯爵(僕)が見えるだろうが、名前は知っていても顔は知らないのか門のところで大声で叫ぶばかりだ。

 ミアとリッキーが午前中に買い出しのために外に出たがいろいろ根ほり葉ほり聞かれるわ、僕への口利きをしつこく求められるわで、散々だったらしく、早々に引きあげてきた。


 「タック、ここでずっと門をながめててもしょうがないよ。」

 と一緒に門あたりを見ていたトリィに声をかけられ、建物の中に戻ることにする。

 「オラゾーラ侯爵に詫びを入れないとなぁ。」

 とつぶやく。僕のせいで人員を割く羽目になっている。さすがに詫びまでローラさんまかせというわけにはいかないだろう。

 ちなみにここに戻ってすぐにオラゾーラ侯爵には面談を申し出たが、半日ほど不在にするため、あらためて、と言われている。

 「そのことだけど、ここにタックがいるってバレたのはオラゾーラ侯爵の寄子のラング伯爵のせいみたいよ。」

 「ラング伯爵?」

 誰だ、それ?

 「ほら、商業ギルドで馬車買った時にユニコーンを奪おうとした奴の親よ。」

 「ああ、あのアホの?でもなんで?」

 「昨日夜中に来てタックに詫びたいって門番と揉めたんですって。」

 それで揉めたことから新しい侯爵様がここにいるとわかったと。

 「アホの親はアホってことなのかなぁ。」

 「しょうがないんじゃない?2日合わないうちに自分より爵位が上になって戻って来るなんて思わないでしょ。」

 僕がすぐに帝都に行ってしまったため、後で謝罪の言葉でもと思っていたら、2日合わないうちに自分より格上になって戻ってきました。となればそりゃ焦るか。

 僕は別に気にしないんだが・・・

 もともとテムステイ山組が命の危険もなく無事に過ごせることが目的だし。

 謝罪なんかいらないから保証が欲しい。


 そんなことを思いながらトリィと無言のままのヒビキと部屋に戻る。


 ◇◇◇◇◇


 「おかえりなさい。」


 部屋で僕たちを迎えてくれたのはテーブルでいろいろ書類を書いていたローラさんだ。

 昨日の宣言通り、僕たちは一つの部屋に集合して生活している。

 ローラさんはミアとガブリエラともすっかり打ち解けて、普通にお茶とか注いでもらっている。

 ローラさんが連れてきたメイドさんとの役割分担も問題なかったらしく給仕役も進んで行っている。

 というかローラさんのメイドさんは二回り年上のおばさん1人しかおらず、3人(おばさん、ミア、ガブリエラ)で2人(ローラさんと僕)を見るのであれば大助かりだそうだ。

 エヴァはメイド姿をしているが、何もできないのでノーカンとされている。

 本人曰く()()()らしいが、そんな役目いらんからな。


 ローラさんが僕と同室で生活することについて、イニレ家の方々から反論はなかった。

 リッキー達に遠回しに考えているのか聞いてもらったところ下記のような理由だそうだ。


 ・僕がローラさんの叙爵式のパートナーだったからそのままで結婚されると思っている。

  →僕がローラさんの新しいパートナーだと思っていた派

 ・本人が伯爵権限でそうすると言われた以上、我々もどうにもならん。

  →ローラさんの命令は絶対派

 ・イニレ家として将来的に後継者が必要になることは間違いないし、当主の意向の邪魔をして、寄りよい相手を見つけられる伝手があることもない。

  →誰かしらパートナーは必要でしょう派

 ・叙爵直後に節操なく姿見を多数送られ、男性不信になったローラさんが、たった1人だけ近くにいることを許した男性なので、そう悪いやつでもなかろう。

  →本人が選んだなら問題ない派(メイドのおばさんはここらしい。)

 

 と4つほど派閥はあったが、明確に反対する派閥はなかったとのこと。

 外堀が着実に埋められているような気がする。

 ちなみにこの場合僕の周りにトリィとヒビキがいても彼ら的には問題にはならない。

 彼らにしてみれば、ローラさんの子供がイニレ家の後継者だからだ。


 トリィとヒビキもローラさんが同室になることはびっくりしていたが、ベッドは別だし、「あくまで外部向けです。」とローラさんが言うと何も言い返せないようだ。

 ちなみにヒビキは護衛として扉近くのソファで寝ることになった。


 「やはり外には出られなさそうですか。」

 とローラさんが言う。

 「駄目ですね。あの人込みだと買い物とかも難しそうです。」

 「この状況ではタックさんのご両親のところにも、殺到しているのではないですか?」

 「そうかもしれないですね。さすがに帝都だとあの騒ぎだと治安部隊が出てくると思いますが。」

 あくまでここはオラゾーラ侯爵がやさしい対応しているからだろう。


 ローラさんも今日は第一王子の婚姻の調整予定だったが、侯爵が前述の予定で外出していたため、調整は午後になったそうだ。ローラさんからは同席して挨拶だけでもしておいた方が良いと言われている。

 僕も同意見だ。そして門のところの騒ぎを詫びよう。


 そう思っていたところに侯爵が戻られた。と使いが来る。

 さてと・・・

 まったく僕のせいではないのだが、詫びに行こうか・・・

 気が乗らないけど・・・

感想、レビュー、いいね、評価ならびにブックマーク登録いただけるとうれしいです。

(してくださった方ありがとうございます。)

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ