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第095話 ローラさんの地理と経済の授業

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あと誤字報告ありがとうございます。

 ローラさんは立ち上がると控室に向かいトリィとヒビキにも部屋に入るように言う。

 外で控えていた護衛の何人かも部屋に入るが、扉からは離れず、打ち合わせには参加しないようだ。

 あくまでローラさんの護衛としての立場を崩さないのだろう。


 トリィとヒビキがテーブルの近くに来ると、ローラさんはおもむろにその上に地図を広げた。

 以前トッドを交えて行程を考えたものとほとんど同じものだ。


 ◇◇◇◇◇


<地図>

 ☆ ABCDEEFGHIJ

 1 岳海海海海海海海海島島

 2 岳雪雪雪帝帝帝海海島島

 3 岳雪雪雪帝◇帝帝海海海

 4 岳雪鉱雪雪帝帝海海海海

 5 森雪鉱鉱山山海海海海海

 6 森王王王山◆山司司司海

 7 森王◇王山山山司◇司海

 8 森王王王岳山岳司司司海

 9 岳草草草岳岳岳岳岳岳岳


<文字の意味>

 王:レイスリン王国領、帝:ミゼラ帝国領、司:オーグパイム司教領(◇はそれぞれの首都)

 山:テムステイ山およびその周辺(◆が山頂)

 岳:山岳地帯、雪:雪原地帯、鉱:高山地帯、森:森林地帯、草:草原地帯

 海:海、島:島 (そのまま)


 ◇◇◇◇◇


「今私たちはこの辺にいます。」

 とローラさんは手にした指示棒で帝都の少し南あたりを指す。

 教鞭を取っているみたいで大変良く似合っている。

「おさらいになりますが・・・」

 と前置きして、指示棒を南のテムステイ山一帯に移動する。

「今回タックさんが制圧したテムステイ山。3国の首都からほぼ等距離にあります。これまでそれぞれの首都間の移動は陸路がメインでしたが、時々魔獣が出現し、安定した航路ではありませんでした。」

 と指示棒で各経路上でバッテンを描く。

「実際魔獣が出た際は、王国、帝国間は雪原、帝国、司教領間は海上、司教領、王国感は山岳と代替路ははあったのですが、コストが陸路と桁違いなためそれこそ流通量は最低限のものでした。」

 と今度は指示棒の先を3国を囲むように回す。

「ローラ様、帝国、司教領の海上は距離が短めなため、陸路と変わらぬように見えますが。」

 とヒビキが質問する。

「地図で見るとそう見えますが、ここは切り立った崖が多く、波も高く、さらに海流も速いため難破率が高いのです。なので、もう少し沖を行き来しています。」

 もともと親同士が寄親寄子関係だったところの子供で交流も多かったのか、ヒビキはローラさんにためらわず質問しているようだ。


「で、ここからがお2人を呼んで聞いておいて欲しい話になるのですが・・・」

 とローラさんは一旦ここでトリィとヒビキを見る。2人は顔を見合わせるとローラさんを見てうなづく。

「テムステイ山がタックさんの支配下になったことにより3国のパワーバランスに変化が生じています。もともとタックさんはテムステイ山に脅威はなくなったことを伝えることで、テムステイ山に入ってくる冒険者や軍隊を止めようとしていたみたいですが・・・」

 と言ってちらりと僕を見る。

()()テムステイ山をわずかな手勢で、相手を殺さずにそのまま支配下に収めたタックさんとどれだけコネクションを作れるかの競争状態になっています。もともと王国のリードはあったのですが、帝国はご両親を、司教領はお兄さんを通じて、王国に追いつこうとしているところですね。」

「魔獣に関するリスクはなくなったと判断しているのでしょうか。」

 とヒビキが質問する。

「なくなってはいないでしょうがこれまでよりさらに減ったと認識しているのでしょうね。タックさんがユニコーンを引き連れていること。テムステイ山に入っていた冒険者を魔獣が警告したうえで、山の外に追い出す、というこれまでなかった事象が起こっていること。あとは私たち以外にも青龍を目撃した人がいて、帝国方面に向かっていたのに途中で煙のように消えたと証言していて、それと入れ替わるようにタックさんが帝国訪れたこと。他にもいくつかありますがタックさんがテムステイ山を制御できているということの裏付けになる証言と証拠がそろって来ているのがその理由です。」


「その話を聞いて私たちは何を?」

 とトリィがローラさんに聞く。

「上が動けば貴族や商人も動きます。コネクション欲しさに近づく者も増えるでしょう。高圧的にあたってもタックさんは意に介さないでしょうが、タックさんにも弱点があります。」

 弱点?

「「弱点?」」

 とトリィとヒビキの声がかぶる。

「色仕掛けです。」

「「ああ。」」

 ローラさんの回答に2人の納得感あふれる声があがる。何故だ。

「ローラ様、タックの弱点はわかりましたが、そのうえで私は何を?トリィが絶えず近くにいればよいのではないのですか?」

 とヒビキが聞く。

「侯爵であり、かつテムステイ山の統括者ともなれば結婚相手が1人では・・・という者が必ず出ます。そしてあわよくばとスタンドプレイに走るご令嬢も出てくるでしょう。」

「いや、トリィがいるのに僕はそんなに節操なくないですよ。」

 とさすがに釘を刺しに行く。

「タック、あなたアド姉にハグされてる時どんな顔してるか知らないのかしら。」

 とトリィにその釘をポッキリ折られてしまう。

「あと、先日の叙爵式で4人(ラナ王女、ローラさん、アド姉、トリィ)と腕組んで入場してますから、1人を大事にしてますと言っても説得力ないですわね。」

 とローラさんに釘は粉々にされてしまった。

「さらに叙爵式の時の1人は司教領のアドリアーナさんですから、帝国はここでも遅れを取り戻したいと思って動くはずです。」

「いやいや、叙爵式の時はあの時限りでしょう?」

 と反論するが、

「だれもそんなこと言ってませんわよ。それに叙爵式にいた帝国の大使からはその情報が事実として伝わっているはずですわ。」

 とローラさんがニコリと笑いながら恐ろしいことを言う。

 トリィはやっぱりこうなったかぁ。と言う顔だ。

 ヒビキが所在無げな顔でキョロキョロと見ている。

「ヒビキにもタックさんのパートナーとして、絶えず近くにいるようにしてほしいのです。寝る時も。」

 というローラさんの言葉に目を丸くするヒビキ。そして

「私もそうしますから。」

 と続けるローラさんの言葉にトリィと僕も驚くのだった。


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