第093話 司教領への行程確認
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翌朝、タッキナルディ商会のメイドが起こしに来た。
だが、僕たちがそれぞれのベッドで寝ているのを見て、僕に不満そうな顔を見せる。
何を期待して起こしに来たんだ?
寝室にいたメンバーで食堂に向かう。
馬車組は別に、食事を運んでもらっている。
いつも誰かと別行動になってしまっているな。
ユニコーンを連れてきてしまったのだからしょうがないのだが。
なるべく別行動にならないように馬車も大型のものをそろえた方が良いかもしれない。
今日の朝食はパンと具の多いスープだった。
スープには肉類、根菜が豊富に入っている。長時間煮込んでいたおかげで根菜も固くなく口に入れた瞬間ほろりと溶けた。パンも生地に細かく刻んだ野菜が練りこまれていて、バランスを考えたものになっているようだ。
まあみんなの好きな物だけ聞いてたら肉ばっかりになってしまうだろうから、こういうのにしてもらった方がありがたい。
エヴァもガブリエラも文句言わずに食べている。それどころかまた知らない味付けだったので作り方を知りたいとガブリエラは給仕の人に質問していた。良い傾向だ。是非我が家での再現を目指してもらいたい。
「これからの行程を調整したいんだが。」
と食後の父さんが改めて僕に今後の予定を確認される。
「タック達は今日はオラゾーラ侯爵領まで移動するんだったな。」
「うん、そこで僕の寄親と合流するんだ。その人は第一王子のオラゾーラ侯爵家入りの調整をしていてそれが終わるまではそこに留まることになる。」
「タック達と一緒に行く形を取りたいんだが。」
「調整が終わるころに声かけるから準備だけして待っててよ。」
「どれくらいで調整つくんだ?」
「一応段取りは着いてるそうだからかかっても4,5日だと思う。」
「なら大丈夫だ。帝都でないとできないことを2,3日ですませたら父さんたちもオラゾーラ領に向かうからそこで合流しよう。」
「了解。」
それからオーグパイム司教領の主都までは以下の様な予定となった。
・オラゾーラ侯爵領で数泊(第一王子の婚姻の調整がつくまで。)
→グリフィス辺境伯領で1泊
→タッキナルディ侯爵領(旧:テムステイ山周域)で野宿3泊
→オーグパイム司教領内で2泊
→オーグパイム司教領首都に到着
オーグパイム領内は日程感を確認しようとしてもアド姉が”いいからまかせて”の一点張りですませてしまうためよくわからなかったが、何度か行ったことのある父さんの経験は助かった。
町というか村はいくつかあるが、大人数で泊まれるほどの宿泊施設はないため、野宿は不可避らしい。
だから街道と宿屋、飲食店は絶対もうかるんだよぉ。というのが父さんの言だ。
あと僕がオラゾーラ侯爵領の商業ギルドで馬車を買ったと言ったら怒られた。
オラゾーラ侯爵領にタッキナルディ商会の支店があるんだから、そこで買えとのことらしい。
そこにも支店があるなんて知らんがな。である。
さっきのことを思い出し、大きな馬車が一台欲しいからそこで買うよ。と言うと大きいものは帝都の方が流通あるから、こっちで買って、オラゾーラ領に持って行ってやる。
家紋は一緒だから中身入れ替えればいいだろ。と言われ了承した。
そこにタッキナルディ商会の人が来る。
その人が、父さんに一言、二言耳打ちすると、父さんは驚いた顔をしたが、「書斎に案内しておいてくれ。」とその人に告げると僕に向き直りこう告げた。
「タックに皇帝陛下の使いの方が来ているそうだ。」
◇◇◇◇◇
「お待たせしました。タック・タッキナルディ参りました。」
商会の顔なじみの人に案内されて一室に通されると、そこには昨日あったばかりの政務卿の姿があった。ずいぶんフットワークが軽い。何かあったのだろうか。
僕だけということだったが、向こうも一人しかいない。
「すまない。本来であれば昨日合わせて確認しておけば良かったことなのだが、余人を交えたくなかったのだ。あらためてと思っていたが、今日にも移動するとのことだったので急遽会話の場を設けさせてもらった。」
先に謝られると断りづらいのである。
「お気になさらないでください。ところで確認とはなんでしょうか?」
「タッキナルディ候には、王国から護衛がついていると聞いている。」
「そうですね。ただ、急な話で信頼を築くような時間もなかったので学生時代の友人をつけてもらっております。」
「帝国からも卿の知り合いから護衛をつけたいと考えているのだが、希望などあるだろうか。」
なるほど、帝国爵位を与えた人間の周りが王国の人間と現地(テムステイ山)採用だけで固められているのはまずいと考えたわけか。ブルックリンとステラは帝国人だが、奴隷だしね。
馬車とか用意してくれるのであれば連れていくか。
「まずは基本護衛なので腕は立つ人が望ましいですね。遠、近等の射程距離は問わないですが。」
「前衛でも、後衛でも良いということかな。」
「そうですね。あと私が王国の学校に行った理由をご存じだと思いますが、魔法が使えないからです。」
「そうらしいな。聞いているが・・・それが何か?」
「王国でもそうだったので、別に帝国の批判と捉えてほしくないのですが、帝国での私の知り合いには私が魔法使えないことを揶揄する者もおりまして・・・」
「・・・」
思わず黙ってしまう政務卿。だが絞り出すように言葉を出した。
「・・・揶揄した者は外すようにしよう。」
「いえ、本人にそのつもりはなかったかもしれないし、その後反省した者もいるかもしれません。任命の際には私の護衛として、私と信頼関係を築く気があるか?を確認いただければ。」
「・・・わかった。本人の意思も確認してから任命しよう。」
「お願いします。」
「今日だけでは準備が間に合わない者もいる。オラゾーラ侯爵領にしばらくおられるのかな。」
「はい、1週間弱ですが。」
「わかった。親書を持たせて後から送るので、面談して問題なければ警護の隅にでも加えてほしい。」
「承知しました。」
「そうか。あとタッキナルディ候、貴公は側室や身の回りの世話をするものは・」
「いりません。」
とかぶせるように即答すると、政務卿は一瞬たじろいだが、にこりと笑って、了解した。と答えた。
これ以上候補はいらない。半端に断らずきっぱり断るのが一番だ。
その後、いくつか認識合わせを行い、政務卿は帰っていった。
トリィ、僕は帝国分はちゃんと断ったぞ!
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